思い切り泣くなら、このドラマ&映画の名シーンを見逃すな!|ドラマ&映画好きの賢者が「涙のスイッチ」を熱血プレゼンします

小説家、アナウンサー、産婦人科医に経済学者など、さまざまなフィールドで活躍する著名人たちが、数あるドラマや映画のなかから一作品を厳選し、自分にとっての「涙のスイッチ」を熱く語ります! 

夫婦の絆、余命わずかな男の人生、不条理な社会に抗う人たち、最愛の人との別れ…。ひと言では言い表せない、複雑な大人ならではといった泣きのツボが満載です。

木下龍也さん
歌人
(きのした たつや)’13年に第一歌集『つむじ風、ここにあります』を発表。歌集『きみを嫌いなヤツはクズだよ』『あなたのための短歌集』『オールアラウンドユー』、短歌入門書『天才による凡人のための短歌教室』も話題に。「映画が好きで、特に邦画で泣かされがちです」

歌人・木下龍也さんの涙のスイッチ|『ぐるりのこと。』

映画『ぐるりのこと。』
 

人は、身の回りのことに救われていく。見るたびに世界を見る解像度が上がる名作

「橋口亮輔監督の説明しすぎない、語らせすぎない “余白” に没入。木村多江さん演じる生真面目な妻・翔子と、リリー・フランキーさん演じる優しいけれど頼りない夫・カナオの物語。妊娠中の翔子にカナオが『自分、うれしいんか』と語りかけ、翔子が黙ってうなずいて、カナオのシャツの背中をギュッと握った、その手。引っ越しの準備をしているときに翔子が見つけた、カナオが描いた赤ちゃんの絵。そんなちょいちょい泣けるシーンがジャブのようにあった後、台風の夜ずぶ濡れで大泣きする翔子の、鼻水まみれの鼻先をカナオが舐めるところで号泣でした。自分の身の回りを見つめ直すことで、人が救われていく。今の僕の涙のスイッチはそこにある気がします」

【STORY】

映画『ぐるりのこと。』
(C)『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

’08年作品。ある夫婦の10年間を、1990年代初頭から21世紀に至る社会の変化も盛り込みつつ丁寧に描く。リリー・フランキーが初めて本格的に映画主演に挑んだ作品でもある。/「U-NEXT」ほかで配信中

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ILLUSTRATION :
北住ユキ
EDIT&WRITING :
正木 爽・宮田典子・剣持亜弥(HATSU)、喜多容子(Precious)