創業時から一貫してスポーツカーだけをつくってきたフェラーリ。とはいえ、その振れ幅はモデルによって様々で、実用性と美しさを兼ね備えたラグジュアリーGT系は、女性を含む富裕層に大人気だ。昨年秋に初披露され、日本への導入も始まった最新モデル「ポルトフィーノ」も、並外れたパフォーマンスと極上の快適性を備え、そのうえ誰もが見とれる美しさをまとう。

実は昔から大人気だった2+2フェラーリ

今年2月に披露された際の様子。会場には多くのメディア関係者が集まった。
今年2月に披露された際の様子。会場には多くのメディア関係者が集まった。

 以前は「カリフォルニア」(後期は「カリフォルニアT」)と呼ばれていた、格納式ハードトップを備えるV8GTモデルが、「ポルトフィーノ」だ。旧世代のスタイリングは程よいクラシカル感があり、それはそれでとても魅力的だったが、ニューモデルは技術的な進化(軽量シャシーなど)にともなうパフォーマンスの強化に同期して、ほかのスポーツモデルと遜色のない精悍さを携えている。実際にステアリングを握っていない以上、そのすごさを説明することはできないが、少なくとも快適性に関しては、旧世代以上に軽やかで剛性感のある乗り味で、ロングドライブが楽しめるだろう。

 フェラーリの2+2GTで思い出されるのは、「400」である。「365GT4・2+2」の名でデビューし、最後期には「412」として、17年ものロングセラーとなったこのモデルは、2ドアセダンと呼ぶべきクリーンなスタイリングが特徴。「ポルトフィーノ」とは随分雰囲気が異なるものの、長きにわたってつくられたということは、昔から市場におけるラグジュアリーGTが高かったことの証であり、万能タイプのSUVが普及している現代において、このようなモデルがますます増えてくるのではないかと思われる(実際にフェラーリはSUVの開発に着手している)

改良を受けながら長きにわたって生産された、「400」。フェラーリ初のAT(3速)も設定され、販売台数の半数以上を占めた。
改良を受けながら長きにわたって生産された、「400」。フェラーリ初のAT(3速)も設定され、販売台数の半数以上を占めた。

バーグマン仕様やクルマ版「アズーロ・エ・マローネ」仕様が楽しい!

「ポルトフィーノ」の内装。旧世代よりもコクピット周りがすっきりした印象だ。硬派な黒系もいいが、屋根を開けることを考慮して、明るめの色に挑戦したい。
「ポルトフィーノ」の内装。旧世代よりもコクピット周りがすっきりした印象だ。硬派な黒系もいいが、屋根を開けることを考慮して、明るめの色に挑戦したい。

 以前、「カリフォルニアT」を試乗した際に印象的だったのが、街乗りでの使いやすさだった。後ろに人を乗せることはなくても、荷物置き場として、また空間の広さから来る開放感は、屋根を閉めた状態でも強く感じられたし、ロードクリアランスに余裕があるため、駐車場に入るときの路面の傾斜や段差に気を使わなくて済むのも助かった。こうした実用性の高さは、「ポルトフィーノ」にも継承されているだろう。

  だが、ラグジュアリーGTは機能面だけで語れるものではない。内外装の色や快適装備のオプションの有無も大きな要素になってくる。オープンドライブも楽しめるモデルなのだから、どんなに時間とアップチャージがかかろうとも、テーラーメイド(フェラーリのビスポークメニュー)で洒脱な内装を手に入れたい。個人的には、グリジオイングリッド(イングリッド・バーグマンのために夫のロベルト・ロッセリーニがオーダーしたグレーの外装色)が最高に洒落ていると思うし、あるいは外装をネイビー、内装を濃いめのタンにして、クルマ版「アズーロ・エ・マローネ」仕様にするのもいい。そして、もはやメンズプレシャス読者には言うまでもない話だが、ステアリングを握る際は、クルマに「乗せられている感」が出ないように、シンプルかつ優雅で上質な着こなしを心がけたい。

  いつの時代も男の夢を掻き立てる、それがフェラーリなのだ。

〈フェラーリ・ポルトフィーノ〉
全長×全幅×全高:4,586×1,938×1,318㎜
車両重量:1,664kg
排気量:3,855cc
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
最高出力:600CV/7,500rpm
最大トルク:760Nm/3,000〜5,250rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:7AT(F1デュアルクラッチ)
価格:2,530万円〜(税込み)
■問い合わせ先 フェラーリ
https://www.ferrari.com/ja-JP

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。