「さもありなん」は古語由来のフレーズで、「それはもっともなことだ」という意味で使われます。あまり馴染みがない言葉のため、この言葉を聞いたときに「方言?」と思った人も多いのではないでしょうか。今回は「さもありなん」の意味や使われ方、この言葉が人に与える印象についても解説します。
【目次】
【「さもありなん」を正しく理解するための「基礎知識」】
■意味
「さもありなん」は「そうであろう。もっともなことだ。当然のことだ」といった意味の言葉です。意訳すれば、現状の展開に対して「でしょうね!」「ですよね!」と、納得した気持ちを表明するフレーズです。
■漢字で書くと?
「さもありなん」は口語ではなく、古語に由来した言葉です。漢字で表記すると「然もありなん」。「然(さ」)は、すでにある事物や状態などを受けて、「そのように。そう〜」と指示する語です。
■語源は?品詞分解するとどうなる?
では、複数の品詞からなる連語、「さもありなん」を品詞分解してみましょう。まず、「さも」については2説あります。ひとつは指示語の副詞「さ」と助詞「も」
■方言なの?
前述の通り、「さもありなん」は古語由来の言葉です。方言ではありませんよ。
【「使い方」がわかる「例文」4選】
■1:「Aさん、この春の人事で昇進が決まったみたい。同期トップ昇進だって」
「彼女の日ごろの努力からすれば、さもありなん、だよね」
■2:「部長はA社との契約が破棄になったという報告を聞くと、さもありなんという非難がましい顔で私を見た」
■3:「ごめん。構成案なんだけど、先方がやっぱり前のバージョンに戻してほしいって言ってるんだ。急いで修正してくれる?」
「…さもありなんって感じですよね」
「さもありなん」は納得の気持ちを強調して表すフレーズです。1のようにポジティブな状況で使うときは問題ありませんが、2や3のようにネガティブな状況に対して使うと、「失敗して当然」「結局、そうなる(失敗する)とわかってました」という嫌味や諦めのニュアンスが含まれます。ですから、口頭で使う際には特に注意が必要です。
■4:「A君、昨日の夜、渋谷で職質(職務質問)されたって」
「さもありなん(笑)」
若い世代の間では、「だよね」「納得!」「あね」というニュアンスで「さもあいなん」がカジュアルに使われているとか。
【「類語」「言い換え」表現】
「さもありなん」は日常会話の中で頻繁に使われるフレーズではありません。私たちにとっては、むしろ言い換え表現のほうがしっくりくるかもしれません。
■もっともだ
■納得がいく
「もっと(尤)も」は「道理に叶っている」という意味の言葉です。
■当然だ
■当たり前だ
「当然」は論理的・倫理的に疑問の余地なく「そうあるべきこと」を表し、「当たり前」は変わったところがなく「平凡でごく普通の、ありふれた」という感じが伴う言葉です。
■順当だ
「道理に従って当然であること」を「順当」といいます。
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「さもありなん」は現状の展開に対し「そうですよね!」と納得した気持ちを表明する際に使うフレーズです。古語由来独特の響きをもつ言葉のため、「当然です」と返答するよりも、知的で柔らかな印象になりますが、口頭で目上の方に対して使うと、不遜な印象となりかねないので注意が必要です。ビジネスシーンで使う機会はそれ程多くありませんが、覚えておきたい大人の語彙のひとつといえそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『全文全訳古語辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :