今。美食家の注目を集めているのは、必ずしもアクセスが便利ではない「奥の地」。滋味溢れる素材に惹かれた料理人たちが紡ぎ出す料理は、心にもカラダにも深く染み入って、感動と幸福を呼びます。

「もうあのお店行った?」と交わされる美食家たちの囁きは、つい数年前まで東京や京都など都会の店が話題の中心でした。ところが今、その多くは北陸や軽井沢、そして南は九州まで、「奥の地」へと拡がっています。贅沢な食体験とはキャビアやフォアグラなどの高級食材だけではなく、その地でしか味わえない新鮮な旬の食材と、その地に根ざす料理人との出合いに尽きると、多くの人が気付き始めているのでしょう。

今回は、旅と美食の達人・料理研究家の真藤舞衣子さんが教える、とっておきの美食宿「出羽屋」、「徳山鮓」、「茶寮 杣径(そまみち)」をご紹介します。

真藤舞衣子さん
料理研究家
会社勤めを経て、大徳寺(京都)の塔たっ頭ちゅうにて1年間生活。みそ、しょうゆ、塩麹等の発酵食品にも精通し、発酵食品の手づくり、生活への取り入れ方をつくりやすいレシピを通じて紹介。

「ローカルガストロノミーが学びと刺激を与えてくれます」

料理を仕事にしている私にとって、地方のガストロノミーは知の宝庫。知らない料理に出合えるのはもちろん、その地に伝わる伝統食や調味料を学ぶのも魅力です。ひとつ行きたいデスティネーションを見つけたら、その周囲で酒蔵や食材の生産者をリサーチ。とことん飲んで、食べる、ストイックな美食旅を楽しんでいます。

■1:「徳山鮓」

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スぺシャリテである発酵料理の鮒ずしをはじめ、夏は鮎やうなぎ、秋はキノコや鹿、冬は熊鍋が名物。季節ごとに訪れ、旬の味を堪能したい。

なかでも年に10回は出かけてヘビロテ中なのは「徳山鮓」。主の徳山浩明さんによる鮒ずしなど発酵料理をお目当てに、同じく滋賀県の酒蔵「七本槍」蔵元の冨田泰伸さんや、多くのフーディの友人たちと食卓を囲んできました。

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大きな開口で心地よいテラス。
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真藤さんが「尊敬するふたり」だと語る「徳山鮓」主の徳山浩明さん(左)と「七本槍」蔵元の冨田泰伸さん(右)。

問い合わせ先

■2:「茶寮 杣径(そまみち)」

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塗師の赤木さんと料理人の北崎裕さんがタッグを組んだオーベルジュ。6月半ばのオープンに向け、真藤さんが出かけたときはまだプレオープン中だったとか。「千代浜でサンセットを楽しみながら飲むシャンパーニュが最高でした」

最近出かけたなかでは、大好きな漆器作家の赤木明登さんの美意識が貫かれた空間である「茶寮 杣径(そまみち)」。夕陽を眺めながらのアペロ、最高だったなぁ。赤木さんの器を使ったお食事もよかったです。

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オーベルジュは中村好文さんの設計。
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赤木さんの蔵書を眺めて、そのクリエイティビティの源に迫れそう

問い合わせ先

■3:「出羽屋」

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出羽三山を訪れる行者たちのための宿として始まった「出羽屋」はいつしか山菜料理専門の宿として知られるように。

さらにわずか8席のシェフズテーブルで山菜を味わい尽くす「出羽屋」もおすすめ。最近では東京ではあまり外食せず、地方にばかり食べに出かけるようになりました。

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シェフズテーブルは1日1組限定(最大8名)で、4代目当主が腕を振るうスペシャルなフルコース。
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過日、真藤さんが味わった山菜は月山で採取された天然物。「ほろ苦さやシャキッとした食感に体が目覚めたような心地に。爽快でした!」

問い合わせ先

  • 出羽屋
  • 料金/シェフズテーブル1泊2食付きひとり¥38,500
  • TEL:0237-74-2323
  • 住所/山形県西村山郡西川町大字間沢58

※掲載した価格は全て税込です。

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PHOTO :
長谷川 潤
EDIT&WRITING :
秋山 都、安村 徹(Precious)