今。美食家の注目を集めているのは、必ずしもアクセスが便利ではない「奥の地」。滋味溢れる素材に惹かれた料理人たちが紡ぎ出す料理は、心にもカラダにも深く染み入って、感動と幸福を呼びます。

「もうあのお店行った?」と交わされる美食家たちの囁きは、つい数年前まで東京や京都など都会の店が話題の中心でした。ところが今、その多くは北陸や軽井沢、そして南は九州まで、「奥の地」へと拡がっています。贅沢な食体験とはキャビアやフォアグラなどの高級食材だけではなく、その地でしか味わえない新鮮な旬の食材と、その地に根ざす料理人との出合いに尽きると、多くの人が気付き始めているのでしょう。

『Precious』8月号の特集「スモール&ラグジュアリーな14の美食宿」では、味わい、そしてそのまま泊まれる美食宿から14軒を厳選。

今回は、群馬県の美食宿「VENTINOVE(ヴェンティノーヴェ)」をご紹介します。

酒蔵の一角に佇む薪火のイタリアン「VENTINOVE(ヴェンティノーヴェ)」

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客室の大きな窓からは樹々が緑の葉を揺らす様が。ちなみにテレビはありません。

イタリア語で“29”を意味する「ヴェンティノーヴェ」

ということは……そう、こちらのスペシャリテはお肉。東京・西荻窪の人気店「トラットリア29」の竹内悠介シェフが、自身が育った群馬県・川場村へ妻の舞さんと共にUターン。地元の酒蔵である「土田酒造」の敷地内に客室付きレストランをオープンさせました。

「以前はワイン一辺倒でしたが、ここへ来たからには日本酒ペアリングにも積極的に取り組んでいます。『土田酒造』の酒造りは全量純米生き仕もと込みという伝統的な製法。キャラの立った力強い味わいはイタリアンにもよく合います」

そしてその料理も、ほぼすべての食材を“クルマで30分ほどの距離”から調達。肉はすべて薪で焼き上げるというように、西荻窪時代から大きく進化しています。「食材を身近に感じることで料理が改めて楽しくなりました」たっぷり食べて、飲んで、あとは2階のベッドへ倒れ込むだけ。フーディにとって、これ以上ない贅沢な時間の過ごし方でしょう。

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朝食をセットする舞さん。タイの屋台料理に着想を得たもち米の粥が定番。
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巷では入手困難な土田酒造の日本酒がズラリ。
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薪火で調理する竹内シェフを囲んでアペリティフを楽しむゲストも多い。
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スペシャリテのビステッカは赤城牛。土田酒造の活性にごり酒を合わせて。
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ヨモギ入りニョッコフリットに自家製コッパとグリーンピースを乗せた前菜。エディブルフラワーも庭から調達。
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ソラマメとリコッタチーズを詰めたラビオリ。セージバターの代わりに”コシアブラ”バターを使うとはユニーク!

問い合わせ先

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  • VENTINOVE(ヴェンティノーヴェ)
  • 料金/1泊2名利用時、2食付きでひとり¥35,000~
    ※月曜・火曜休 
    ※レストランのみの利用も可能
  • 住所/群馬県利根郡川場村谷地2593-1(土田酒造敷地内)

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PHOTO :
長谷川 潤
EDIT&WRITING :
秋山 都、安村 徹(Precious)