今回は、「貫禄がある」とか「ない」とか「貫禄が出てきた」というように使われる「貫禄」について。「貫禄がある」と言われたら嬉しいですか? 「貫禄がある」はほめ言葉なのでしょうか。今回は、単語としてだけではなく、フレーズとしての「貫禄」の意味や使い方、言い換え表現などを解説します。

【目次】

「貫禄」と「威厳」は同じ意味でも使えます。
「貫禄」と「威厳」は同じ意味でも使えます。

【「貫禄」とは?「読み方」や「意味」など基礎知識】

■読み方

「貫禄」は「かんろく」と読みます。

■意味

身に備わっている威厳や重みのこと。また、体つきや動作、物言いなどから感じられる重々しさもい表します。

■使い方

「貫禄」は名詞です。「貫禄がある」「貫禄が出る」「貫禄がつく」「貫禄を見せる」「貫禄が違う」のように使います。

■由来

「貫」は、室町時代前後から通貨の単位や質量の単位を表す語。江戸時代には銀貨1000匁(もんめ)を1貫目と呼びましたが、尺貫法廃止に伴って1959年以降「貫」は法定単位ではなくなりました。なじみがあるところでは、にぎり寿司の単位として残っていますね。1貫はひとつのことで、一般的には2貫(ふたつ)ずつ提供されます。一方、「禄」のほうは、官に使える人のお給料のこと。古代の律令制では布や綿、糸などの手工芸品が、近世では将軍や大名からの蔵米などがお給料の「禄」でした。

このふたつの語によってできた「貫禄」は、「禄」が多い人を指して「貫禄がある人」などと使われるように。このことから、身に備わった威厳や人間的な重み、風格がある人を「貫禄がある」や「貫禄がついた」と表すようになったようです。

■ほめ言葉?悪口?

「貫禄がある人」とは、経験を積んで実力や自信を備えた人のこと。ほめ言葉ではあるのですが、目上の人に対して使うのはNG! 基本的には下の者に対して使うフレーズなのです。また、他人からどう見られているかを気にする人や、体型で悩んでいる人に「貫禄がある」や「貫禄が出てきた」などとは言わないほうが無難です。たとえほめ言葉として使ったとしても、「偉そうにしてると思われている?」「太ってるってこと?」「嫌味?」などと受け取られてしまう危険があるのです。逆に言えば、皮肉を込めて「貫禄が出てきたな」と使うこともできるわけです。


【「貫禄がある」とはどんな人?その特徴】

「貫禄がある」がほめ言葉であるという認識のもとで、そんな人の特徴を挙げてみましょう。

■堂々としている

経験も実績もあれば、自分に自信がもてます。自身がある人というのは堂々としているもの。それが言動にも表れるのです。

■頼りになる

自信がないと消極的になりがちですが、自信がある人は積極的です。貫禄がある人というのは積極的な人だともいえ、頼りになります。

■品格がある

自分に自信があって、人から頼りにされる人には間違いなく品格があります。貫禄はあるけれど品がないという人もいますが、そういう輩(やから)には人はついていきません。貫禄がある人――堂々としていて頼りがいがあり、品がいい。こんな人が上司やパートナーならいうことないですね。目指すはそんなビジネスパーソンでしょうか。


ビジネスシーンでの「貫禄」の使い方を見てみましょう。

■1:「1年前に比べると、発言にもぐっと貫禄が出てきたな」

■2:「彼はプロジェクトメンバーの最年少だが、貫禄では負けていない」

■3:「貫禄を見せつけられて完敗だ」

■4:「社長としての貫禄は、一朝一夕に身につくものではない」

■5:「業界ナンバーワンの貫禄を見せつけよう!」

皮肉や嫌味を込めた例文も、使ってはいけない“NG例文”として頭の片隅に入れておきましょう。

■6:NG「しばらく会わないうちに、貫禄がついたんじゃない?」

■7:NG「部長もますます貫禄が出てきましたね」


【「類語」は?「言い換え」も!】

■類語

「貫禄」の類語には、「威厳」「尊厳」「威信」「矜持」「品位」「存在感」「オーラ」などがあります。

■言い換え

「貫禄がある」を言い換えてみましょう。

・板につく:リーダーとしての風格も板に付いてきた

・実力がある:一見すると実力が備わっているようには見えないが…

・カリスマ性:頼れる人にはカリスマ性が備わっているものだ

・迫力がある:迫力があるだけでなく、実績も十分だ


【「貫禄」を「英語」では?】

英単語なら[dignity]が当てはまるでしょう。「貫禄がある人」は[a dignified person]「~の貫禄を見せる」で[uphold the dignity of ~]となります。

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若くても貫禄がある人、ベテランでも貫禄がない人…いろいろです。初々しさは忘れたくはありませんが、ある程度のキャリアを積んだなら、少々の貫禄は見せたいものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :