「確信」という言葉はご存じですよね? 「固く信じて疑わないこと」を意味し、特別難しい言葉ではないようにい思われます…が、では「確信犯」はどういう意味でしょう? 実はこの単語、7割近くの人が本来の意味とは違う使い方をしているという調査結果が出ています。今回のテーマは「確信」。本来の意味や使い方、「確信犯」という言葉の解釈の変遷について解説します。

【目次】

誤用と知りつつの確信犯。
誤用と知りつつの確信犯。

【「確信」を正しく理解するための「基礎知識」】

■意味

「確信」は「カクシン」と読み、「固く信じて疑わないこと」や「固い信念」を表します。

■確信犯とは?

「部長、時間を聞き違えて会議に遅れたと言ってるけど、あれは確信犯だよね」。あなたは「確信犯」という言葉を、悪いことだと知りつつ、あえて行う悪事(あくじ)、またはその悪事を行う人」といった意味で使うことはありませんか? 実はこの場合の「確信犯」は、本来の使い方ではありません。

「確信犯」のもともとの意味は、「政治的・思想的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」のことでした。つまり、「本人は正しい・いいことだとと思って、社会的犯罪を犯す」ということです。ところが最近では、本来の意味からは離れて、前述したような、犯罪というほど重大な行為でない場合にも用いられるようになりました。さらに、文化庁が発表した「国語に関する世論調査(2015年)」では、70%近くの人が「確信犯」を「悪いことだと知りつつ、あえて行う悪事、またはその悪事を行う人」という意味で使用していると答えたのです。そのため、現在では国語辞典でも、本来の意味のほかに、新しい用法として「悪いこととわかっていてもあえて行う悪事」と記載するようになりました。

そもそも、「確信」は「固く信じて疑わないこと」「固い信念」という意味の言葉です。このポイントを押さえておけば、「確信犯」は「固い信念がある犯罪(者)」と推測できるはずです。先に例文としてあげた「時間を聞き間違えたととぼける行為」に、「固い信念」があるとは思えませんよね!


【ビジネスでそのまま使える「例文」4選】

■1:「私はこの企画が、部長の期待に添えるものと確信しております」

■2:「自分の会社の今後の成長に確信がもてなくなって、転職を決意した」

■3:「この分野での起業が成功すると確信できるのは、膨大なデータの蓄積があってこそだ」

■4:「チーム内の不協和音が目立つようになり、プロジェクト成功の確信が揺らぎはじめた」


【同じ意味で使える「言い換え」表現】

■信念

「信念」とは「正しいと信じる自分の考え」のこと。「信仰心」を指すこともあります。意味が似ているため「類語」といえますが、「固く信じること」を意味する「確信」を使った例文を、「信念」に置き換えることはできません。

■固く信じる

■信じて疑わない

ちなみに、「確信」の対義語は「疑わしく思う気持ち」を意味する「疑念」です。


【「確信」を「英語」で言うと?】

「確信」に相当する英単語は[(a) conviction]や[confidence]が挙げられます。「確信する」は[ be convinced (of ( that)]と表現できますよ。

・My conviction that he is an admirable man was confirmed.
(私は彼が立派な人間だという確信を強めた)

・I am convinced of his innocence.(彼は潔白だと確信している)

・I recommend her with confidence.(彼女なら確信をもって推薦できます)

***

あなたは「確信犯」本来の意味をご存じでしたか? 現在では7割の人が本来とは違う意味で使用しているため、すでに「誤用」とまでは言えません。ましてや「あなたの使い方は間違っているよ」などと指摘するのは行きすぎた行為というものでしょう。言葉には、時代によって意味が変化していくものがあります。それは、言葉はツールであり、使い手に使いやすいものであることこそ、本来のありかたといえるからです。「確信犯」もそのひとつ。言葉の意味が変化する過渡期であるといえそうです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『悩ましい国語辞典』(角川ソフィア文庫) /『もはや旧い日本語を最新にアップデート その言葉、もう使われていませんよ』(夢文庫) :