社会のさまざまな場で遭遇する中年の男性、「おじさん」たち。
彼らの理不尽なふるまいや言動、そして視野の狭さには、辟易することもしばしばですよね。
そんな彼らの生態を理解するためにうってつけの小説2冊を、代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ・間室道子さんに教えてもらいました。
ようやく歩み寄りが進んでるみたいだけど、当選後の小池都知事に対する都議会自民党のおじさんたちの醜態は、まだ生々しく記憶に残っている。
確かに同じ自民党で、彼女の出馬の仕方はイレギュラーだった。
でも、『初登庁で通例の出迎えを、60人いる自民党都議のほとんどがしなかった』、『リオ五輪閉会式から帰国したとき、空港で“都議会のドン”の側近が小池氏を無視』など、まるで駄々っ子。
今どき、あのようなシーンはばっちり撮られて報道される。
60人の顔色はうかがえるのに、小池氏に投票した300万人に迫る都民がどう思うかは意識にのぼらない。そこに疑問を抱きつつ、恩田陸さんの『チョコレートコスモス』を読んだらドンピシャな文章があった。
主人公は演劇の天才少女。彼女はひとりで中年男性と若い女の子を演じるのだが、二者の世界の見え方の違いが演じ分けの肝となる。
『若い女性は、これから自分が漕ぎ出ていく世界に対しては緊張しているが、世間に対しては無防備だ。夢があるとか、無邪気だと言ってもいい。
中年男性はこれが逆になる。世間に対しては緊張感を抱いているのに、世界に対しては無防備なのだ。視野が狭くなり、構わなくなる、と言い換えてもいい』
いやあ、おじさん&イマドキの女の子の習性の謎が一気に解けそうじゃありませんか!
『女性なのに中年のオトコ心がなぜこんなにわかる!?』と、連載時から読者を震撼させた桐野夏生さんの『猿の見る夢』もオススメ。男の了見の狭さが堪能できます。
もちろん、嘆いたり笑ったりするだけでなく、”娘”でも”おじさん”でもない大人の女性なら、世間と世界をスマートに渡ってみせよう。
『現実のモヤモヤを解くには読書がいちばん!』と改めて納得の二冊でした。
(間室さん談)
- TEXT :
- 間室道子さん 代官山 蔦屋書店コンシェルジュ
- クレジット :
- 撮影/田村昌裕(FREAKS) 文/間室道子