スペクタクルな舞台装置と、感情を揺さぶるような演出で、人々を魅了してやまないオペラやバレエの世界。

「劇場で実際に観るのは初めて!」「観てみたいのだけれど、敷居が高くて…」という方のために、実際に観るまでにすることやマナーを、東京・初台にある「新国立劇場」のバレリーナ、米沢 唯さんに解説していただきます。

2回目は、「劇場内に入る前にしておきたい○○」についてご紹介します!

>>1回目はこちら

3.服装の選び方とクロークの使い方

オペラやバレエの鑑賞をするうえで、気になることのひとつは『服装』ではないでしょうか?

オペラの場合、公演時間や休憩時間が比較的長いため、“周囲から見られる”ことも意識した服装でいたいもの。特に、周りに不快感を与えるような服装や、強すぎる香水には注意が必要です。また、ガサガサと音をたてるナイロンのコートや袋などは、自分自身も気になって窮屈な思いをしてしまうため、持ち込みを避けた方が無難です。

ロングドレスなどを着ている人は多くありませんが、結婚式の二次会で着るような、華やかなワンピースなどでも浮くことはありません。また、『プルミエ』と呼ばれる初日公演は、通常よりも格式が高い公演となるため、自分を高めるつもりで、ワンランク上の服をまとって劇場を訪れてみてもよいでしょう。

とはいえ、品よく着ることを意識すれば、デニムやざっくりしたニットなどのカジュアルな服装でも、まったく問題はありません!

バレエの場合は、オペラよりも比較的カジュアルな服装でOK。社交界の舞踏会に参加するようなドレス姿の人はめったにいませんが、劇場という非日常の空間を楽しむためにも、いつもよりちょっぴりオシャレする程度がよさそうです。

オペラバレエ鑑賞前に、クロークにコートを預けるプリシンパルの米沢唯さん

大きな荷物がある場合や、冬場でコートを着用しているときなどは、『クローク』と呼ばれる荷物預かりサービスを利用しましょう。引き取りの際に必要な番号札を渡されるので、なくしてしまわないようにしっかりと保管しておいて。

開演時間が迫るとクロークには長蛇の列ができるため、少なくとも15分前には劇場に着いていたいところ。お手洗いに行く、席を探す、プログラムに目を通すなど、ほかにも何かと時間がかかるので、余裕をもった到着を心がけましょう。

30分ほど前に着いて同行者と合流し、軽くお茶でも飲みながら開演を待てば、さらに贅沢な心の準備ができるはずです。

開演ギリギリに着いてしまうと、劇場の入口から席まで走り過ぎ、コートも預けられず、開演直後には汗を拭くのに大わらわ…なんてことにも。不慣れな方は、臆せず係員に質問するのがスマートです。なお、開演後はほかのお客さまの迷惑になるため、自分の席までたどり着けない場合もあります。

4.オペラグラスを借りる

『オペラグラス』とは、舞台上の出演者を眺めるための双眼鏡のようなもの。

新国立劇場では、劇場入り口付近にオペラグラスの貸し出しをしているコーナーがあり、使用料は500円となっています。

オペラグラスを手に持つ米沢さん

オペラの場合、3・4階席からは、出演者の顔や表情はさすがにはっきりとは見えないため、オペラグラスはおおいに役立ちます。これまでのオペラ歌手というと、小太りの体型をイメージする方も多いと思いますが、現代のスター歌手の方々はイケメン・美女ぞろい、かつ演技も一流! オペラグラスでじっくりと観るだけの価値があります。衣裳も上質な素材を使用した素晴らしいものなので、オペラグラスで細部まで観察する、というファンもいるそう。とはいえ、オペラグラスを使用しているときは、舞台左右にある字幕が見えなくなってしまうため、あらすじを事前にある程度、頭に入れておく必要があります。

バレエの場合は「ダンサーの表現や動きをよりじっくり観たい!」という人が、オペラグラスを使われることが多いそう。ただし、オペラグラスで見ると舞台全体が見えなくなってしまうため、要所要所でかけるのが望ましいでしょう。

チケットのもぎりの様子

クロークに荷物を預け、オペラグラスを借りたら、ついに劇場内へ! 次回は「劇場内での楽しみ方」についてお送りします。

この記事の執筆者
TEXT :
米沢 唯さん バレリーナ
2017.7.9 更新
愛知県出身。塚本洋子バレエスタジオで学ぶ。国内国外の数多くのコンクールに入賞し、2006年に渡米しサンノゼバレエ団に入団。10年にソリストとして新国立劇場バレエ団に入団した。ビントレー『パゴダの王子』で初主役を務め、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』『ジゼル』『火の鳥』ほか数々の作品で主役を踊っている。13年プリンシパルに昇格。全国舞踊コンクールジュニアの部第1位、ヴァルナ国際バレエコンクールジュニアの部第1位、05年世界バレエ&モダンダンスコンクール第3位、06年USAジャクソン国際バレエコンクールシニアの部第3位など国内外のコンクールでの受賞歴も多い。14年中川鋭之助賞受賞。新国立劇場バレエ団・プリンシパル。
クレジット :
撮影/五十嵐美弥(小学館写真室) 取材・構成/難波寛彦