関東では夏日もある今年の秋ですが、11月に入り、街のデコレーションはハロウィンからツリーやイルミネーションに。一気にクリスマスムードになり、年末へと気持ちが向いてきたという方も多いのではないでしょうか。ということで、今回、お届けするのは「クリスマス」というワードです。聞くだけで華やいだ気分になりますが、本来はイエス・キリストの降誕記念日という、キリスト教徒にとっては厳かで大切な祝日なのです。その意味や関連ワードについて解説します。

【目次】

「「クリスマス」と聞いて華やいだ気分になるのはなぜ?
「クリスマス」と聞いて華やいだ気分になるのはなぜ?

「クリスマス」はキリストの誕生日ではありません!】  

■「クリスマス」ってなんの日?

イエス・キリストの誕生を記念する祝日のこと。降誕祭(こうたんさい)とも言います。新約聖書ではキリストの生まれた日を特定していないので「クリスマス」はキリストの誕生日ではなく、「キリストが生まれてきたことをお祝いする日」なのです。

12月25日がクリスマス・デー、12月24日の夜をクリスマス・イブといいますね。

■なぜ「クリスマス」という?

英語では[Christmas]と表記しますが、これは[Christ(キリスト)]と[mass(ミサ)]による言葉で「キリスト礼拝」を意味します。

[Xmas]という表記も使われますが、これはギリシャ語のキリスト(クリストス)の表記[Χριστος]の頭文字を用いたものだと知っていましたか? 新約聖書の原典は紀元後1~2世紀にギリシャ語で書かれているので、英語の[Christmas]よりギリシャ語を用いた[Xmas]表記のほうが歴史が古いのです。ちなみに、フランス語では[Noël(ノエル)]、イタリア語では[Natale(ナターレ)]。ドイツ語では[Weihnachten(ワイナハテン)]と表します。

■本当は何をする日?

キリスト教徒は教会に赴いて礼拝(カトリックではミサ)に参加します。神父・牧師の説教を聴いたり、聖書を朗読したり、賛美歌を歌ったりして帰宅し、この日を迎えられたことに感謝しながら家族で夕食のテーブルを囲むのです。クリスマスには多くの教会が門戸を開き、キリスト教徒でない人々も受け入れています。また、聖書のなかで“人々を照らす光”に例えられるキリストにちなみ、それぞれが手に持ったキャンドルの炎を隣の人に移し灯していくキャンドルサービスという行事もクリスマスならではですね。

■「サンタクロース」の由来は?

サンタクロースは、クリスマス・イブに子どもたちに贈り物を届ける伝説上の老人です。白髪でたっぷりと白ひげを生やし、白い縁取りがある赤い帽子とコートとパンツを履いた姿でおなじみですが、サンタクロースとクリスマスは直接関係がないことをご存知ですか? 

サンタクロースのモデルは、4世紀ごろに実在した東ローマ帝国・小アジアの司教、聖ニコラウスといわれています。彼は、無実の人を死刑から救ったり罪人を改心させたりと、慈悲深い聖人として語り継がれる人物。命日である12月6日は祝日であり、その前夜に聖ニコラウスが子どもたちにお菓子を配りにやってくるとされています。やがて、子どもにお菓子を配るだけでなく、大人も贈り物を交換し合うようになったそう。聖ニコラウスの逸話がアメリカに移住したオランダ人宣教師によって、伝えられ、現在の、クリスマス・イブに子どもへプレゼントを与えたり、大人がギフトを交換し合ったりという習慣に結び付いたそうです。

クリスマスは贈り物だけでなく、さまざまな風習がありますね。次にそれらの由来などを紹介しましょう。


「ツリー」「赤い実」「リース」などの意味】

■「クリスマス・ツリー」の意味

真冬は雪と闇に閉ざされるヨーロッパの地域では、キリスト教が入る以前から冬に緑と陽光の春を願う強い期待感があり、そのシンボルとして常緑樹を飾って春の到来を待ったのだとか。樹形の三角形が信仰や希望、慈悲を象徴するため、これがクリスマスの風習として世界中に広がりました。常緑樹の葉がもつ殺菌・抗菌作用も、魔除けの効果があるとされています。

クリスマスがイベント化している日本では、ツリーはクリスマスの日まで飾るものとして定着しましたが、元来はクリスマス・デー(12月25日)からローマカトリック教会の祝祭である公現祭(こうげんさい/1月6日)まで飾るもの。公現祭の日にツリーに吊るされたお菓子やオーナメントなどを取るという慣習からも、クリスマス・ツリーは新年を迎えるものだったと考えられます。

モミやエゾマツといった常緑樹の若木を用い、モールや豆電球、さまざまなオーナメントなどで飾りますが、日本では生木ではなくディスプレイ用のフェイクツリーを用いるのが一般的です。

■「クリスマス・リース」って?

花や葉、木の枝などを編んでつくる輪飾りのことをリースといいます。始まりも終わりもない輪(円形)は、“永遠の生命”や“神から人への無限の愛”の象徴なのだとか。“幸せが永遠に続きますように”と、幸運のお守りとしてリースが用いられています。最もなじみがあるのがクリスマス・リースかもしれませんね。

■ツリーやリースに使われる「赤い実」の正体

クリスマス・ツリーやリースを飾るのは、小さな赤い実をつけた「セイヨウヒイラギ」です。「ホーリー」や「クリスマスホーリー」とも呼ばれます。艶々の深緑色の葉の縁にある鋭い棘が悪霊を払うとされ、赤い実をつけた枝をリースに用いたり、ツリーの飾りとして利用されます。クリスマス・リースを玄関ドアに飾るのも、災いから家を守るという意味があるのです。

■クリスマスのご馳走といえばチキン?  

日本のクリスマス・ディナーの定番といえば「鶏肉の丸焼き」や「鶏もも肉のグリル」ですが、実はこの風習、もともとはクリスマスのものではありません。元来は、古代ヨーロッパの人々が冬至に太陽の力が再び強くなり始めることを祝い、もうすぐやってくる春に向けて英気を養うためにご馳走を食べたものだそう。食物の調達が難しい冬季の食事はとても質素なものでしたが、そのつらい生活に間もなく終止符が打たれることを願い祝う食事だったのです。

では、なぜ鶏や七面鳥なのでしょう。17世紀以降にアメリカ大陸に入植したヨーロッパの人々は、慣れない土地で十分な食糧が得られず多くの犠牲者を出しましたが、アメリカ先住民の助けによって生き延びることができたのだとか。収穫に恵まれた際に神さまへの感謝を込めて、また、先住民への感謝の気持ちを“食事への招待”という形で表し、そのときに出されたご馳走が七面鳥だったといわれています。これが感謝祭の始まりなのだとか。また、ヨーロッパで食用としてきた家畜がアメリカではうまく飼育できず、野生の七面鳥を獲って食料を得たことがきっかけだという説も。こうして感謝祭をはじめとするお祝いごとに七面鳥を食べる習慣が定着し、クリスマス・ディナーにも欠かせない料理になったようです。日本では七面鳥より手軽な鶏のグリルが、クリスマスのご馳走として定着しました。

■クリスマスフラワー

クリスマスが近づくと、花屋の店先はポインセチアの鉢で真っ赤に染まります。クリスマスの代名詞的植物のポインセチアはメキシコが原産の低木種。17世紀にメキシコでキリスト教の布教をしていた修道士がポインセチアを見てキリストの生誕地であるベツレヘムの星を連想し、「ノーチェ・ブエナ(聖夜)」と呼ぶようになったという説もあります。こうしてポインセチアがクリスマスに用いられるようになったのです。真っ赤に色づいているのは花ではなく、花の周りにつく苞(ほう)と呼ばれるもの。苞の中心にある小さな黄色いものが花なのです。葉の緑と苞の赤はまさにクリスマスカラー。特に「寛大」や「愛」を象徴する赤は宗教的にも意味深い色。赤いポインセチアの花言葉は「祝福」や「聖夜」「幸運を祈る」なので、クリスマスに贈る植物としてぴったりですね。


【「クリスマス・カード」はいつ送る?

クリスマス・カードを贈る習慣はありますか? いつもはいらないと感じるDM(ダイレクトメール)も、クリスマス仕様だとちょっと嬉しくありませんか? クリスマス・カードはキリストの誕生を祝うと同時に、その喜びを分かち合う手紙です。一般的にはクリスマスにちなんだ美しい絵を用い、中面にお祝いの言葉を記します。クリスマス・ツリーと同じように新年を寿(ことほ)ぐものなので、[Merry Christmas and a Happy New Year]などと併記することも。

■今年のクリスマス・カードは12月3日着を目安に!

クリスマス・カードを贈る習慣がある人でも、12月になったらとか、クリスマスちょっと前など、時期に関して明確な意識をもっている人は少ないかもしれませんね。クリスマス・カードはクリスマスを待つ「待降節(たいこうせつ)」に送るもの。そしていただいたら暖炉の上に並べて飾るというのがクリスマス景物(けいぶつ)のひとつでもあります。11月30日に最も近い日曜日から12月24日までの期間が待降節で、2023年は12月3日から24日となります。クリスマス・カードは、待降節が始まる日にちを意識して投函するといいですね。

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日本では宗教的な意味ではなく年末の風物として定着した「クリスマス」。宗教的な意味合いがない人も、家族や友人と迎えられたことに感謝する日としたいものですね。

この記事の執筆者
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