男がやるべきスポーツ、というものがあるとしたら、ヨットレースはその最たるものかもしれない。少なくとも苛酷なオフショア(外洋)のレースは観るべき価値がある。欧米人が不思議がるのは、海に囲まれた日本なのになぜヨットレースの人気が(大きく)高まらないのかということ。先日「世界一苛酷」と言われるボルボ・オーシャンレースを観て、同感だなあと思った。
五輪メダリストも出場する、世界三大ヨットレースのひとつ
ボルボ・オーシャンレースはトータル4万5000ノーティカルマイル(約8万3340キロ)をこなし、なかには南極海も含まれる。1973年に第1回がスタート。2001-02年シーズンから主催者がボルボになった。
いま行われているレースは2017年10月にスペイン・アリカンテをスタート。これまでにリスボン、ケープタウン、メルボルン、香港と広州とこなし、2018年2月末の時点でオークランドへ向かうレグ6が戦われている。
アメリカズカップとオリンピックとともに世界三大ヨットレースと言われ、各艇のクルーにはオリンピックのメダリストが何人も含まれる。
すべてのチームが「ボルボオーシャン65」という同じ仕様の艇を使う。米のファーヨットデザイン(Farr Yacht Design)が設計。カーボンファイバーを多用したハル(艇体)の全長が66.83フィート(20.37メートル)だ
「世界トップクラスのセーラーが最新のハイテクレーシングヨットを操り、最長のコースで史上最速のスピードを競います」
ボルボの担当者はそう説明する。ただアメリカズカップ艇のようなフォイリング(浮上走行)は組み込まれていない。
「ボルボオーシャン65」の動力は風のみ。セイルの張り方と出すタイミング、そして風向きと海流の読み方でレース運びが決まる。船底から海に突き出したキールは可動式なので、重心移動を中心にした操船も重要だ。
ボルボがヨットレースに力を入れる理由
ぼくが観たのは香港の湾内レース。ブイを周回するレースで、見どころは、コースのとりかたやセイルの張り方。マークブイを回ったあとスピンというセイルを出すタイミング。すべてがタイム差につながる。
香港では風が弱くて各チーム苦労していたようだけれど、それでもこんなに差が出るの? というくらい違う。コースも短い距離なのに艇によってさまざまというのがおもしろい。
チャーターした船でレースを観ていた観客は意外なほど興奮していて、ここでもヨットレースの人気ぶりを体感できた。
ボルボはあまりかかわっていないのだが、そもそもスウェーデンは小学生からヨットを楽しむ「文化」がある。同時に、このレースを利用して、プラスチックの海洋投棄などをやめるよう啓蒙活動を行っていたのが印象的だった。
ボルボの担当者によると、このままのペースで世界中がさまざまなものを海洋投棄していると2050年には数において廃物が魚を上回ってしまうんだとか。
レースは、オークランドのあとイタジャイ(ブラジル)へ。さらにニューポート、カーディフ(英)、ヨーテボリ(ボルボ本社のあるスウェーデン)、そしてデンハーグ(オランダ)へ。
現在ひんぱんにトップが入れ替わっているような状態らしく、追いかけるのも楽しいと思う。
■ボルボ・オーシャンレース
https://www.volvooceanrace.com/
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト