「とっぽい」という言葉を知っていますか? 上司に「今年の新人はずいぶんとっぽい奴が多いな」と言われたら、どういうことかわかるでしょうか。令和5年も終わろうとしている今では“死語化”していると思われる「とっぽい」ですが、今回はこの語についてさくっと解説します。
【目次】
【「とっぽい」は「方言」?「意味」や「語源」など基礎知識】
■意味
「とっぽい」は方言ではなく、俗語や隠語から発生したと思われる言葉。下記のような形容詞としての意味があります。
1) 生意気であったり、粋(いき)がっている様子
2)抜け目のないことや、ずるいこと。盗人や的屋(てきや)や仲間の隠語としても使われます。
3)素早い、大きい、生意気だなどの意味でいう、不良仲間の隠語。
4)間が抜けている、鈍いなどの意味でいう俗語。
5)いかにもその道に精通しているようなさまであること、玄人(くろうと)を気取っていること。
6)粗野であること。
「かっこつけている」という程度の意味で使っている人もいるようですが、それ以上に、言われて喜ばしくない言葉といえます。
■語源
「大人っぽい」や「忘れっぽい」の「ぽい」は、名詞や動詞の連用形などについて、「そのような状態を帯びている」という意味を表す接尾語です。
では「とっ」は何? と疑問に思いますよね。一説には「玄人(くろうと)っぽい」を略した言葉だといわれています。経験が浅い人、熟練していない人を指す「素人」に対し、その道を究めた達人が「玄人」ですが、「素人なのにまるで玄人のように振る舞う」人を「玄人っぽい」と言います。それが「とっぽい」に変化したというのです。
【はじめてでも「使い方がわかる例文」5選】
■1:「新人のくせにとっぽい(生意気な)奴だ」
■2:「当番の日に休むなんてとっぽい(ずるい)」
■3:「都会で就職したら、ずいぶんとっぽく(虚勢を張るように)なった」
■4:「紹介された彼氏がずいぶんとっぽい(不良っぽい)感じの人だったと、ご両親が心配している」
■5:「趣味として楽しんでいるだけと言うわりには、かなりとっぽい(玄人はだしだ)」
「玄人はだし」はほめ言葉なので、5も、一瞬ほめているようなニュアンスを感じるかもしれませんが、この場合、「調子に乗っている」「プロのような態度(だからウザい)という意味合いのほうが強くなります。
【「とっぽい」を言い換えると?】
「とっぽい」はすでに死語化しているので相手伝わらない場合があります。“大人の語彙力”的には、同じような意味の別の言葉に言い換えるのが正解でしょう。
・狡猾(こうかつ):ずるく立ち回ること。悪賢いこと。「狡猾に立ち回る」=「とっぽく立ち回る」
・悪賢(わるがしこ)い:悪事にかけて才知に富んでいる。悪の方面で知恵がよく回るさま。「悪賢い子ども」=「とっぽい子ども」
・ずる賢い:悪知恵がはたらくこと。「ずる賢いやり方」=「とっぽいやり方」
・抜け目のない:注意深く、やることに抜けたところがないこと。また、自分の利益になりそうだと見れば、その機会を逃さないこと。「万事に抜け目ない」=「万事にとっぽい」
【「英語」だと「hoody」なのはなぜ?】
「とっぽい」を英語で表すと[hoody]が適しているでしょう。[hoody(フーディ)]はフード付きのトレーナーやジャケット、パーカーのことですが、スラム街などでたむろしている不良がよく着ていることから「不良っぽい」というスラングに。日本語の「とっぽい」も俗語の一種でなので英語としてあてているのですね。
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この“大人の語彙力強化塾”の連載で、若者言葉に「?」と思う人もいれば、昭和レトロな死語に「???」と思う人もいるはずです。毎年、新語・流行語大賞が話題となるように言葉は生き物! 誕生する言葉あり、進化もすれば退化もするのです。言葉の背景や成り立ちを知っておくと、ビジネス会話に役立つかもしれませんね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『日本国語大辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :