ビジネスにおいて、あるいは恋愛においても、目標達成のためには戦略的な根回しが有効です。「外堀を埋める」とは「ある目的を達成するために、周辺の問題から片付けていく」ことを表すことわざ。例えば、好きな人との距離を縮めるために、その人の友人に協力してもらう……こんな行為も「外堀を埋める」行為と言えるでしょう。今回は「外堀を埋める」の意味や由来、使い方がわかる例文や英語表現までを解説します。

【目次】

外堀を埋める外堀を埋めるとは戦略的な根回しです。
戦略的な根回しです。

【「外堀を埋める」を正しく理解するための「基礎知識」】

■意味

「外堀を埋める」は「ある目的を達成するために、周辺の問題から片付けていく」ことを表すことわざです。例えば、取引先から契約を取ることを「目的」とします。そのとき、問題として考えられるのは価格でしょうか? 交渉に直接参加しないけれど決定権をもつ取引先担当者の上司かもしれません。「外堀を埋める」行為は、本来の目的(この場合は契約を取ること)を達成するために、周辺の問題(この場合、価格設定や担当者の上司)を洗い出して解決しておくことです。目標に向かって闇雲に突き進むのではなく、まずは下準備として、周辺の障害を取り除いておく。こうすることで、目標達成の確率は大幅に高まります。一見、遠回りに見えても、実は非常に戦略的な考え方と言えますね!

■由来は?

まずは「外堀(そとぼり)」の意味から解説しましょう。「外堀」とは城の外を囲んでいる堀のこと。「外堀」があれば「内堀(うちぼり)」もあるわけで、城の堀が二重になっている場合は、外側を「外堀」、内側を「内堀」と呼んでいました。敵の侵入を防ぐため、城の周囲をぐるっと囲った「堀」には、水が貯められていたことが多かったようです。

「外堀を埋める」とは、武士が活躍した時代の戦術のひとつです。堀に囲まれた城は、敵からしたら、非常に攻めにくい構造です。でも、戦いの前にその外堀を埋めて平らにしてしまえば、水の中を泳いだり船を出す必要もなく、一気に兵を送ることができますね。実際、この「外堀を埋める」作戦で成功を手にしたのが徳川家康です。大坂冬の陣で難攻不落の大坂城に苦戦した家康は、城の外堀を埋める条件で豊臣氏と和議を結びます。しかし、家康や「外堀」はおろか「内堀」も埋めてしまいます。それにより大阪城の防御力は一気に下がり、翌年戦闘が再開される(大坂夏の陣)と、大坂城は陥落。家康が勝利しました。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「どうしてもこの契約をまとめたい部長は、まず取引先のキープレイヤーの説得に注力する、という外堀を埋める作戦に出た」

■2:「頑なに容疑を認めようとしない被疑者に対し、警察は新たな証拠の入手や目撃情報の収集などにより、外堀を埋めていく必要がありそうだ」

■3:「昭和の時代は、結婚を成就させるためにはまず相手の母親に気に入られるところからという、外堀を埋めるようなスタイルも珍しくなかった」

■4:「まずは彼の親友と仲良くなって距離を縮めようか…。直接アプローチはリスクが大きいから、少しずつ外堀を埋めていくしかないな」


【恋愛でもビジネスでも「外堀を埋める」メリットは?】

誰でも「成功を手にしたい」と願うものです。一見、遠回りにも見える「外堀を埋める」戦略には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

■障害を取り除くことで、目標達成の確率が上がる

■問題を洗い出す作業により、自分の状況を俯瞰で捉えることができる

■ダイレクトに挑戦するリスクを減らせる

■周囲の人を取り込むことで協力者が増える


【「類語」「言い換え」表現】

「外堀を埋める」と似たような意味をもつ言葉をいくつかご紹介しましょう。

■「将を射んと欲すればまず馬を射よ」

「武将を射殺そうと思うなら、乗っている馬を射るのが先だ」という意味が転じて「何かを手に入れようとするときは、周囲から狙っていくのが上策である」という意味の故事成語。「外堀を埋める」と同じような意味ですが、少々物騒ですし、人を馬にたとえてしまうことにもなるため、使用するシーンは慎重な判断を。

■布石を打つ

「布石」はもともと囲碁で「序盤戦での要所要所への石の配置」を示す言葉でした。ここから「将来のために配置しておく備え」という意味で使われています。「布石を投じる」とも言いますよ。

■根回し

「根回し」とは、樹木などを移植する際、移植の1、2年前には広がった根を根もとを中心に残して切り、細根の発生を促す作業のことです。ここから転じて「交渉や会議などで、コトをうまく運ぶために、あらかじめ手を打っておくこと」という意味で使われるようになりました。

■地下工作

ある目的を達成するために、あらかじめ秘密裏に働きかけなどの活動を行うことを「地下工作」と言います。非合法の政治活動や社会運動を秘密裏に行うことも指しています。日常会話ではあまり使用されない言葉ですね。


【「英語」で言うと?】

「外堀を埋める」をズバリ表現する英語はありませんが、「障害を取り除く=遠まわしの手段を取ること」と解釈すれば、[get rid of obstacles]が使えます。

・The first thing we should do is to get rid of all the obstacles.(まずは外堀を埋める必要がある)

・We want to get rid of obstacles before the project.
 (プロジェクトの前に、外堀を埋めておきたい)

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日本でいちばん有名な「堀」は皇居のお濠ではないでしょうか。多くの浮世絵にも描かれたお濠は、かつて江戸城の「内堀」でした。「外堀」は総延長14kmに及ぶ長大な堀でしたが、明治以降の開発で多くが埋め立てられ、現在では通称「外堀通り」と呼ばれる都道に姿を変えています。東京駅の東側、日本銀行本店や最近話題となった東京ミッドタウン八重洲も「外堀通り」に面していますよ。実は外堀が完成したのは寛永13年(1636年)で、2036年には外堀完成400年を迎えるのだそうです。「外堀を埋める」とは「目標達成のための根回し」を意味する言葉ですが、日本一の外堀は、その規模も歴史も桁違いですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『故事成語を知る辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店 :