難しい漢字ではありませんが、意味を正しく理解していないと読んだり書いたりしにくい「不世出」。今回は、由来を聞けば納得するはずのこの言葉について簡単に解説します。しっかり覚えて正しく使用してくださいね。

【目次】

「不世出の天才!」と称されたことは…ないでしょう!
「不世出の天才!」と称されたことは…ないでしょう!

【「不世出」とは?「読み方」と「意味」「由来」 】

■読み方

「不世出」と書いて「ふせいしゅつ」です。

■意味

世に稀(まれ)なこと。稀にしか世に現われないほど優れていること。世間にめったに出ないほど優れていること。

■由来

「世」に「出る」を「不」で否定し、世の中に出ないほど珍しいさまを表しています。中国前漢時代の歴史家、司馬遷(しばせん)による『史記』には、「功は天下にふたつとなく、略は世に出でざる者」と書かれています。この「世に出(い)でざる」が「不世出」の由来となったという説も。司馬遷自身も「不世出の歴史家」と呼ばれます。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「大谷翔平選手が打ち立てている記録は、不世出の才能と並々ならぬ努力の賜物によるものだ」

■2:「将棋の藤井聡太八冠くらいの人物でなければ不世出の棋士とは言わない」

■3:「モーツァルトの悲劇は、幼少期から不世出ともいえる才能が開花していたことだ」

■4:「不世出の出来栄えと称賛された作品が、ようやく来日公開される」

「不世出」という言葉を使うに値する才能や人物は、数年にひとりとか、何万人にひとりといったレベルではないほど優れているということがわかるでしょう。

■5:「ゴッホは生前には不世出の画家だったといわれている」

5のように「不世出」は、「世間から認められなかった才能」「報われない才能」といった意味で使うのは誤用です。正しく言うなら、「ゴッホは生前世間に評価されず、死後に不世出の作家だと認められた」となるでしょう。


【「不世出」の「類語」「言い換え」表現】

「不世出」をもっとわかりやすく言うために、「類語」や「言い換え」も確認しておきましょう。

■類語

・前代未聞(ぜんだいみもん):今までに一度も聞いたことがないこと。非常に珍しいことや、程度の甚だしいことをいう。「前代未聞の大事件」

・絶世(ぜっせい):世に並ぶものがないほど優れていること。「絶世の美女」

・希代/稀代(きたい・きだい):世にも稀なこと。めったに見られないこと。また、そのさま。「希代の名馬」

・曠古(こうこ):今までに例のないこと。

・未曾有(みぞう):今までに一度もなかったこと。また、非常に珍しいこと。「未曾有の勝利」

■言い換え表現は?

「不世出」は二度と出ないような能力を表すので、なかなか使う機会はありませんね。「不世出」には劣るけれど素晴らしく優れた才能を称賛する際には、下記の言葉を使ってみてはいかがでしょう。

・超越(ちょうえつ):普通に考えられる程度をはるかに超えていること。ずば抜けていること。ある限界や枠をはるかに超えていること。「人間の能力を超越した域」

・超凡(ちょうぼん):普通より飛び抜けて優れていること。「超凡な才能」

・非凡(ひぼん):平凡でないこと。通常でないこと。特に優れていること。また、そのさま。「非凡なアイディア」


【「英語」で「不世出」はどう説明する?】

「不世出」の意味を英単語で表すと、普通(尋常)でない、並々ならぬ、並外れた、異常な、素晴らしい、驚くべきなどを意味する[extraordinary]が使えるでしょう。また、[unparalleled][peerless]も 、比類のない、無比の、無双の、図抜けたといった意味をもつため「不世出」の説明に適しています。

・an extraordinary genius(不世出の天才)

・an unparalleled musician(不世出の音楽家)

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現代に生きる私たちは、大谷選手や藤井八冠の「不世出の才能」がもたらす感動や興奮をリアルタイムに享受しています。100年後、彼らがどのように語られているか気になりますね!

この記事の執筆者
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