フィレンツェで極上ステイを堪能するなら「フォーシーズンズホテル フィレンツェ」に勝る場所はない。2008 年、ミラノに次ぐイタリア2番目の「フォーシーズンズホテル」としてオープン。その最大の特徴は世界遺産都市の中心部にあるというのにまるで森の中にいるかのような感覚にとらわれる、広大な庭園にある。修道院の一部だった庭園は実に4万平米もあり、樹齢数百年になる巨大な樫の木など145本の木が並ぶ様はまさにトスカーナの森のよう。さらに整然としたイタリア式庭園や藤棚、礼拝堂やプール、さらにスパ施設もあり、確かにこの庭園を散策しているだけでも十分に癒される。

庭園から見たメイン棟スカラ・ゲラルデスカ宮。季節のいい時期には庭園にテーブルが並び、緑を見ながらの食事も楽しめる。
庭園から見たメイン棟スカラ・ゲラルデスカ宮。季節のいい時期には庭園にテーブルが並び、緑を見ながらの食事も楽しめる。

ホテルのメイン棟は、1472年に完成したルネッサンス建築の巨大な邸宅で、メディチ家の重臣バルトロメオ・スカラが建設させたもの。その後幾多の貴族や資産家の手に渡ったが所有者の一人にゲラルデスカという貴族がいたことからスカラ・ゲラルデスカ宮と呼ばれている。全部72室のうち44室がスイートルームでそれぞれインテリアが異なるヨーロピアンスタイル。庭園に面したスイートルームを予約できれば、毎朝鳥の声で目覚め、窓を開ければ大聖堂ドゥオーモの円屋根が見えることだろう。

スイートルームはそれぞれに内装が異なり、リピーターでも飽きさせない。フィレンツェならではのシルクやカーペットなど、イタリアン・ファブリックも見どころの一つ。
スイートルームはそれぞれに内装が異なり、リピーターでも飽きさせない。フィレンツェならではのシルクやカーペットなど、イタリアン・ファブリックも見どころの一つ。

フィレンツェの「フォーシーズンズホテル フィレンツェ」が名高いもうひとつの理由は、ミシュラン1つ星を持つメイン・ダイニング「イル パラージョ」にある。シチリア出身のシェフ、ヴィート・モッリーカが提案するのはトスカーナ&シチリア・タッチのモダン・イタリアン。特に魚介類の火入れを最低限にし、イタリアらしい野菜やハーブとともに出す一連の料理はシンプルだが上品で飽きさせない。ヴィート・モッリーカは引退した「フォーシーズンズホテル ミラノ」の伝説的名シェフ、セルジオ・メイに代わって現在は両ホテルのエグゼクティブシェフをつとめている。ある日ディナーに訪れた際は「今日はこんなメニューはいかがでしょう」とシェフが出してくれたのは和牛のタリアータ。ベースはイタリアにおきながらも世界各地の食材を縦横無尽に使いこなし、きっちりとイタリア料理にまとめあげる手腕はさすがだ。

牛肉のサーロインをタリアータ風にグリルし、ソテーしたポルチーニ茸とともに濃厚なソースで食べる。おいしい肉をちょっとだけ、という人におすすめのセコンド。
牛肉のサーロインをタリアータ風にグリルし、ソテーしたポルチーニ茸とともに濃厚なソースで食べる。おいしい肉をちょっとだけ、という人におすすめのセコンド。

ホテルライフならば、ディナーのあとにはバータイムを楽しみたいものだが「フィーシーズンズホテル フィレンツェ」の「アトリウムバー」はフィレンツェ一居心地の良いバーだ。スカラ・ゲラルデスカ宮の中庭を改装し、天井部分にはピラミッド型のガラス天井があり、昼夜を問わず半戸外にいる雰囲気が味わえる。また、イタリアのホテル・バーには珍しくカクテルも本格的。以前フィレンツェでカクテル・ウイークというイベントが開催された際は、世界のベストバー50にも選出された銀座の「バー ファイブ」の上野秀嗣氏が特別ゲストとしてカクテルをふるまったこともある。「アトリウムバー」で飲むならスタンダードなカクテルもいいが、ここはやはりフィレンツェ生まれのカクテル、ネグロニでしめたい。ジン、カンパリ、スウィート・ベルモットで作るカクテルは甘みも苦味もあるイタリアならではの味。「フィーシーズンズホテル フィレンツェ」での1日をしめくくるのに、これより適した酒はない。

2017年にフィレンツェで行われたカクテルウイークの際、招待バーテンダーとして腕をふるった上野秀嗣氏。その技術とキレのあるカクテルにはイタリア人も酔いしれた。
2017年にフィレンツェで行われたカクテルウイークの際、招待バーテンダーとして腕をふるった上野秀嗣氏。その技術とキレのあるカクテルにはイタリア人も酔いしれた。

Fourseasons Hotel Firenze
Borgo Pinti, 99, 50121 Firenze
Tel+39-055-26261
Fax+39-055-2626500
www.fourseasons.com/it/florence/

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。