「剣呑」は危険な状態を指す言葉のひとつ。耳慣れない言葉かもしれませんが、正しく「剣呑」が使えるよう学習していきましょう。

【目次】

「剣呑な雰囲気」は避けたいものです!
「剣呑な雰囲気」は避けたいものです!

【「剣呑」とは?「読み方」「意味」「由来」】

■読み方

「剣呑」は「けんのん」と読みます。

■意味

「剣呑」は、危険な感じがするさま、不安を覚えるさまを表す言葉です。

■使い方と注意点

「険呑な雰囲気」や「剣呑がる」「剣呑さ」というように使いますが、明らかに危険が近づいているときや、今まさに危険にさらされている状態のときに使うのは不適切なのでご注意を。あくまでも「予感がする」「そんな雰囲気」という場合に使う言葉です。

■由来

「剣呑」は「険難(けんなん)」が音変化した語とか。「危険」の「険」と「災難」の「難」の「険難」のほうがわかりやすい気がしますが、「剣呑」と当て字にして使用しています。また、「剣(つるぎ)」の字を使う「剣難」の変化ともいわれ、こちらは刃物で殺傷される災難のこと。由来や語源が複数の場合がある、というのも日本語の特徴のひとつですが、いずれにせよ「嫌な予感」や「不吉」を表す言葉として「剣呑」を使用するようになりました。


【「正しい使い方」がわかる「例文」6選】

実際に「剣呑」はどのように使われるのか、例文を見てみましょう。

■1:「報道に携わる人間は、有事の際にも剣呑な表情や発声をすべきではない」

■2:「夫婦喧嘩中の親の剣呑な雰囲気を、子どもは敏感に感じ取るものだ」

■3:「うまい話には落とし穴があるって言うから、その話に深入りするのは剣呑じゃないかな」

■4:「剣呑な目つきでこちらをうかがっている」

■5:「トラブルメーカーだと評判のA氏が加わったとたん、ミーティングは剣呑な空気に包まれた」

■6:「若い女性の夜道のひとり歩きは剣呑だと言ったものだが、最近では年齢性別にかかわらず、どこで事件に巻き込まれるかわからない」


具体的に言うと?】

■「剣呑な雰囲気」とは?

その場に居合わせた人々の多くが危険を察知しているとか、トラブルの予感がするとか、不穏な空気や険悪なムードが漂うこと。用心すべき事態だということですね。

■「剣呑な眼差し」とは?

他者を不安にさせたり、危険な雰囲気を漂わせた目つきのこと。小説などで「事件現場から剣呑な眼差しの人物が立ち去った」などと使うことがあるかもしれません。


【会話で「剣呑」は使いにくい?「類語」「対義語」表現】

■類語・言い換え

・危険 ・危機 ・物騒 ・不穏 ・危うい ・きな臭い ・怖気づく ・やばい

■対義語

・平穏 ・安全 ・安心 ・安寧 ・安泰 ・安穏 ・静謐 


【関連用語は?「剣呑」を使ったこんな言葉も】

■剣呑、剣呑

良くないことが起こりそうな予感がしたときに、その雰囲気を払拭しよう、回避しようという思いから「剣呑、剣呑」と口にすることがあります。「くわばら、くわばら」同様、重ねて使うことで意味が強調されます。

■剣呑性(けんのんしょう)

不安を感じやすく、常に危険に対峙している気持ちになる性質のこと。「臆病」とほぼ同義です。


【「剣呑」に相当する英語は?】

[insecure][risky][dangerous][not trust one]などで表わせます。

・Don't take risks of that sort.(剣呑なことをすべきではない)

・You must not trust him with a large of money.(あの男に大金を預けるのは剣呑だ)

・He felt insecure about his future at the company.(彼は会社での将来について剣呑さを感じた)

***

実は「剣呑」を「けんのみ」と読む場合もあります。これは「剣突(けんつく)」という言葉同様、荒々しく叱りつけることや、語気強く人に当たること、怒鳴ることなどを意味する言葉。読み方でまったく違う意味の言葉になることがあるのも、日本語のおもしろさ、難しさですね。

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :