「下賜」は「かし」と読み、「身分の高い人が、身分の低い人に物を与えること」を意味する言葉で、日本では天皇陛下や皇族が国民に金品を授けることを「下賜」と言います。あまり馴染みのない言葉ですが、最近では話題のアニメからこの言葉を知った人も多いようです。今回は「下賜」について、その意味や使い方、「恩賜」との違いについて解説します。

【目次】

下賜の読み方は?「かちょう」ではありませんよ!
「かちょう」ではありませんよ!

【「下賜」を深く理解するための「基礎知識」】

■「読み方」

「下賜」は「かし」と読みます。「賜」という字は「腸」と似ていますが「かちょう」ではありませんよ!

■「意味」を簡単に言うと?

「身分の高い人が、身分の低い人に物を与えること」を「下賜」と言います。現在の日本では、天皇陛下や皇族の方々が国民に勲章や記念品、褒美の品や称号を授けることを「下賜」と表現します。つまり、取引先や上司など、一般的な目上の方から何かをいただいた際に「下賜」を使うのは誤りです。注意してくださいね。

■「下賜」を深掘りすると…

「下賜」の「賜」には「施す」「身分の上の者から下の者に財貨を与える、恵む」という意味があります。訓読みは「たまわ-る」「たわ-う」。ものを受け取る側から与える側への敬意を表した敬語表現で、「与える」の尊敬語、「受け取る」の謙譲語となります。


【「恩賜」との違い】

「恩賜」は「天子から賜ること。賜ったもの」や「ありがたいいただきもの」という意味の言葉です。「身分の高い人が物をくださること」という意味が「下賜」と共通していますが、使い分けとしては、「恩賜」は「天皇や主君から褒美などを賜る、いただく」あるいは「贈られた品」を指すのに対し、「下賜」は「高貴な人、特に天皇が下位の者にものを与える」「贈る」ことを言います。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「江戸時代、将軍からの下賜品と言えば、刀剣が最高の品だった」

■2:「生前、祖父は皇后陛下から下賜された記念品をよく自慢していたものだ」

■3:「日本中央競馬会(JRA)主催の『天皇賞(G1)』では、優勝した競走馬の馬主に天皇陛下から楯が下賜されるのが習わしだ」

■4:「後宮に入った姫は、あえて帝(みかど)の寵愛を受けないよう振る舞い、自ら武官に下賜される道を選んだという」


【「御下賜」「御下賜金」とは?「読み方」と「意味」】

■「御下賜」とは?  

「御下賜」は「ごかし」と読み、「下賜」接頭語の「御」が付いた言葉です。「下賜」の丁重度を上げた表現となります。

■「御下賜金」「御下賜品」とは?  

「御下賜金」「御下賜品」は、それぞれ「ごかしきん」「ごかしひん」と読み、天皇・皇族などの身分の高い人が身分の低い人に与える金銭」や「品物」を指します。皇室でおめでたいことがあったときや、皇室に対して何らかの功績があった時などに賜わるものとされています。

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2023年よりアニメ化されたライトノベル『薬屋のひとりごと』(小学館刊)を見て、「『下賜』という言葉を知った」という人も多いようですね。この作品は中華風の帝国を舞台としており、君主は帝。第三話では、皇帝が「武官」の功労に対する褒美(下賜品)として、後宮の側室(姫)を贈ったという場面が出てきます。現代人の私たちからすると受け入れがたいエピソードですが、「下賜」という言葉の意味を頭に入れておくことで、よりストーリーを理解しやすくなるのではないでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『敬語マニュアル』(南雲堂) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :