「太鼓持ち」と聞いて「何かの芸?」と思った人がいるかもしれませんね。ある意味「昭和的ワード」なので、日常会話やビジネストークで使う機会も多くないため、「なんとなくスルーしている」という場合もあるでしょう。とはいえ、知っておいて損はありません。今回はそんな「太鼓持ち」について、さくっと解説します。

【目次】

「太鼓持ち」とは?実は職業だった!?
「太鼓持ち」は実は職業だった!?

【「太鼓持ち」の「意味」や「由来」など基礎知識】

■読み方

「太鼓持ち」は「たいこも-ち」と読みます。

■意味

自分にとって有益であったり味方にしたいなど、徳や利益をもたらす人に取り入る行為、また、そういった行動をする人のことを「太鼓持ち」と言います。目的の相手にへつらって気に入られようとしたり、追従してその人の歓心を買う人のことを指すのです。

■語源・由来

辞書を引いてみると上記のほか、「遊客に従って、その機嫌を取り、酒興を助ける男。また、それを職業とする男」という記載も。なんと「太鼓持ち」は職業でもあったのです。

“職業としての太鼓持ち”のはじまりは、江戸時代の元禄期(1688~1704年)、5代将軍徳川綱吉の時代の「幇間(ほうかん)」という職業です。遊郭や酒宴の席で大金を使う「大尽遊び」が流行するなか、遊郭の案内から諸事の差配、連絡に至るまで、さまざまな雑務をこなしていたのが「幇間」。この幇間の働き次第で、客の満足度が変わります。顔や気が利く幇間は客に喜ばれ、その幇間を雇った接待者の株も上がりました。大尽遊びが下火になった宝暦年間(1751~1764年)には幇間の出番も少なくなったため、雑務ではなく宴席を盛り上げる“芸人”としての役割が定着。明治・大正期には花柳界の隆盛にともない、太鼓持ちである幇間も増えましたが、現在“職業としての太鼓持ち”は絶滅しています。

では、なぜ「人の機嫌を取ったり媚びたりして好かれよう、取り入ろうとする人」を「太鼓持ち」と呼ぶようになったのでしょう。それは、雑務も芸もせず、客にお世辞を言ったり媚びたりするだけで収入を得る“卑屈な幇間”が存在したから。追従者を「太鼓持ちのようだ」と蔑むのは、これに起因するようです。


【意味がよくわかる「例文」3選】

■1:「部長の取り巻きのなかでも、Aさんの太鼓持ちは群を抜いている」

■2:「太鼓持ちを卑屈に感じない図太い神経があれば、営業のストレスもあまり感じないのだろう」

■3:「職務能力や実績だけでなく、太鼓持ちとしての才能が彼を出世させたと噂されている」

江戸時代の「幇間」は賢くて機転が利く世渡り上手でしたが、現代の「太鼓持ち」は歓迎されない人を指すようですね。


【「太鼓持ち」の「類語」「言い換え」表現】

「太鼓持ち」のように、自分の利益になる人に取り入ることを表す単語や熟語があります。言い換え表現としてしっかり覚えておきましょう。

・ご機嫌取り

・イエスマン

・おべっか使い

・迎合:自分の考えを曲げてでも、他人の気に入るように調子を合わせること。「権力に迎合する」

・鞄持ち:「主人の鞄を持って供をする人」という意味から本来は秘書や助手などを指しますが、それが転じて「上役にへつらい、いつもついて回る者」を軽蔑して言う語に。

・ごますり:へつらって自分の利益をはかること。人に取り入ること。また、そういう人のことを言います。

・腰巾着:常にある人物の身辺を離れず、付き従っている人のこと。現代では多く、目上の人に付き従い、機嫌をとる者をあざける気持ちで「部長の腰巾着」などと言います。

・茶坊主:権力者におもねり、その威勢を借りて威張る者をののしって言う語。

いずれにしても、こんな人にはなりたくないものですね。


【まさか英単語あり?「英語」で言うと?】

残念な意味での「太鼓持ち」を英語で考えると、人に調子を合わせてへつらう人、お世辞を言って取り入る人を意味する[flatter][sycophant] が当てはまるようです。

・A person who flatters his boss is called a “taikomochi”.(上司にへつらう人を「太鼓持ち」と呼ぶ)

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今回の「太鼓持ち」のように、普段なかなか使う機会のない言葉でも、小説やドラマ、映画の世界では見聞きすることがあるかもしれません。“語彙力”は立派なビジネススキルです。日々コツコツと学んでいきましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『使い方のわかる 類語例解辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/ :