かつての恋人から届いた一通の手紙と婚約者の失踪。現在と過去、日本と海外が交錯しながら、愛する人を探し求める恋愛映画『四月になれば彼女は』。米津玄師さんの『Lemon』をはじめ、伝説的MVを演出してきた山田智和さんが監督を務めることでも注目されています。全3回のインタビューシリーズ第2弾では、初共演となった佐藤健さんとのエピソードや撮影現場での取り組み方から、長澤まさみさんの愛されるコミュニケーションの秘訣に迫ります!
1本目を読む/【俳優・長澤まさみさんインタビューVol.01】映画『四月になれば彼女は』に思う、“愛を終わらせない方法”
「すみません」ではなく、「ありがとう」で応えたい
――主人公・藤代俊を演じる佐藤健さんと、作品をご一緒されていかがでしたか?
今まではCM撮影や映画祭でお会いする程度でしたが、初めてしっかりお芝居してみて、作品への情熱があってとても素敵な俳優さんだなと。日頃からかっこいいことを言うので、こちらが恥ずかしくなっちゃいますけれど(笑)。穏やかで頼りがいのある、サービス精神旺盛な方ですね。年下の俳優さんでありながら、「まさみちゃん!」と気さくに声をかけてくれるひとり。年齢で気を使い合うと、ときにもどかしさを生むこともありますが、フランクで接してくれてありがたいです。
――本作で長編映画初監督を務められた山田智和さんは、長澤さんと同い年。現場で印象に残ったことはありますか?
アーティスティックで繊細な作品をつくる方ですが、実は意外と体育会系。現場で悩みながら撮られている最中でも、どしんと構えて動じず、やる気がみなぎっていて明るいんです。私は少し遅れて撮影に参加したのですが、初日に現場へ行ったら、監督を中心にみんなで「撮影も中盤まできました、後半も気合い入れて頑張っていきましょう!」と円陣を組んでいて。それくらい熱量がある現場でした。
山田監督と初めてご一緒する人が多く未知数だったと思うのですが、現場のスタッフも皆さん応援するような空気感で。言葉にするとおこがましいのですが、私自身も、力になれたらという気持ちがはたらきましたし、同い年ということもあり、わからないことは遠慮せずにきちんと聞ける関係性でいられました。監督に自分から意見を言うのは勇気がいるものですが、対等に接して受け止めてくださる温厚な方です。
――本作で共演した森 七菜さんをはじめ、近年は若い世代との共演機会も増えていらっしゃいますね。
本当に素敵な感性を持っている人たちと一緒に仕事ができるので、ありがたいです。それは俳優だけでなくスタッフの方々も含め、この場所に来るまで皆さんそれぞれの努力があって、同じ作品に携われるわけですから。同じ気持ちで作品づくりに向き合ってくれているんだなと感じるとすごく嬉しいですね。もし「私なんてまだ全然で…」と遠慮する人がいたら、「いやいや、あなたも作品を背負ってると思うよ~」って(笑)。クレジットされるみんなの作品だと思っていますし、やっぱりお客さんは見てくださっていますから。
――映画『四月になれば彼女は』の中では、登場人物たちが心の奥底に隠していた気持ちを、フィルム写真や手紙などアナログなツールを通じて浮き彫りにしていく描写も素敵でした。長澤さんは、思いを伝える上で大事にしていることはありますか?
私自身は、直接言うタイプですね。大事な人には「あなたのこういうところがいいよね!」と伝えたいですし、仕事では「すみません」ではなく「ありがとう」で応えたいなと思っています。というのも、私たち俳優は色んな方に準備していただいて説明や指示を受ける職業で、以前はその都度「すみません!」と答えていたんです。でも、日に何度もそんなやりとりをくり返すうちに、なんだか心が痩せていく気がして。肩がぶつかった時などはもちろん謝るのですが、「ありがとう」で乗り切ることのできる障害やアクシデントなのであれば、感謝に変換するように意識しています。
ちょっとした言葉の選び方で気持ちも変わりますし、周りにもいい影響があるのではないかと。自分の体に対しても、「今日も一日頑張ってくれてありがとう」「最高だよ!」と褒めるようにしているんですよ(笑)。
――日本の映画界をリードする俳優のおひとり。これからの映画に対して、抱いている思いはありますか?
とんでもないです! でも嬉しいです、ありがとうございます。大それたことはできないのですが、映画に携わっている人間であることは間違いがないので、自分が関わる作品に対しては誠実に向き合いたいなと思っています。あとは楽しい、面白い、心に残る映画がつくれるようになりたいですね。
長澤まさみさんインタビューVol.03は3月29日に公開予定。こちらもぜひチェックしてみてください!
■映画『四月になれば彼女は』 全国東宝系にて公開中!
【ストーリー】
精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人で世界中を旅する伊予田春(森七菜)から手紙が届く。〝天空の鏡〟と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、10年前の初恋の記憶が書かれていた。時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた。しかしある日突然、弥生は失踪してしまう。彼女が残したのは、「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」という謎かけ。春はなぜ手紙を送り、弥生はどこに消えたのか。ふたつの謎は徐々に絡み合い、やがてつながっていく。
「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ、やがては消えていってしまうのだろう」。愛する人の真実の姿とは――。ウユニ、プラハ、アイスランド、東京と世界の絶景と共に浮かび上がってくるのは、美しいだけではない人間の深淵。生きること、誰かを愛すること、その痛みさえ照らす純愛映画。
原作:川村元気「四月なれば彼女は」(文春文庫)
監督:山田智和
脚本:木戸雄一郎 山田智和 川村元気
撮影:今村圭佑
音楽:小林武史
出演:佐藤健 長澤まさみ 森七菜
仲野太賀 中島歩 河合優実 ともさかりえ
竹野内豊
主題歌:藤井 風「満ちてゆく」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝
(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会
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