【ART】日本美術のあの名作も村上流に!? 現代美術家・村上隆の大規模個展はチョーヒッケン!

村上隆の東京以外では初となる大規模個展。日本美術にインスピレーションを受けた多数の新作でも話題を呼んでいます。現代美術の最前線と古都の伝統が交錯する、圧倒的な美の世界を体験!

この大規模な個展について、エディター・ライターとして活動されている中村志保さんにご案内いただきました。

中村志保さん
エディター・ライター
慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻卒。ロンドン大学ゴールドスミス校でファインアートを専攻後、メディア学修士修了。『美術手帖』『ARTnews JAPAN』編集部を経て、エディター・ライターとして活動中。

【今月のオススメ】村上隆 《風神図》《雷神図》

展覧会_1,東京_1
村上隆 《風神図》 2023-2024 アクリル絵具、金箔、プラチナ箔、カンヴァス、木製パネル 150×264.3cm
(C)2023-2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
村上隆 《雷神図》 2023-2024 アクリル絵具、金箔、プラチナ箔、カンヴァス、木製パネル 150×264.3cm
(C)2023-2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki  Co., Ltd. All Rights Reserved.

チョーカワイイ。マジヤバイ。それは「超可愛い」でも「真面やばい」でもなく、紛れもなく平坦なカタカナだったように思います。そう、私が高校生だった1990年代後半のこと。若者の間ではそんな言葉が大流行していました。ちょうど前後するように、今や世界的にチョーユウメイになった村上隆の “お花” が世間に登場したと記憶しています。彼は「スーパーフラット」という概念を引っ提げて。直訳すれば超平面という意になりますが、平面をさらに超えた解釈がなされていたわけで、本来の意味を失った西洋由来の日本的なもの、さらには浮世絵に端を発する漫画やアニメ、オタク文化といった日本独特のカルチャーの現在地とその未来が予言されていたのです。

当時の大人にとってはチョーカワイイもマジヤバイも、感情が排され、示す対象がまるで薄っぺらになり代わったと感じられたことでしょう。が、使っている当人たちにとっては、ほかの何物にも代えられない共鳴のようなものが確かにあったと思うのです。そうやって、感性や流行というものは変化していくのが世の常ですが、村上隆の作品を見るとき、まさにその現象自体が表れているのではないかと思わずにはいられません。

実のところ、「村上作品ってどうしてそんなに評価されてるの…?」と、周囲から聞かれることが多々あります。その度にそれは、当時の大人と同じではないか、と。ほら、マジヤバイ!この風神・雷神のように、今の私たちはやや緩みきった顔をしているでしょう?(文・中村志保)


【Information】京都市京セラ美術館開館90周年記念展「村上隆 もののけ 京都」

村上隆(1962年生まれ)の国内で8年ぶりとなる大規模個展。新たに描き下ろした大作《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》や四神相応をテーマとした作品群から、代表的なシリーズなど、多くが新作となる約170点が複数のセクションで構成される。京都市京セラ美術館の開館90周年記念展として開催。

場所:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
期日:2024年9月1日(日)まで開催中

問い合わせ先

京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

TEL:075-771-4334

EDIT :
剣持亜弥
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