身長156cmのインテリアエディターが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回はデンマークで100年以上続くファミリーオーナー企業「カール・ハンセン&サン」から、軽やかで曲線が空間に優美に映えるハイバックラウンジチェア『CH78』にフォーカス。『ママ・ベアチェア』という愛称を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

カール・ハンセン&サンの名品ラウンジチェア『CH78』(通称『ママ・ベアチェア』)
空間のどの位置に配しても美しく見える、彫刻的なフォルムが魅力の『ママ・ベアチェア』。

重厚感のある存在になりがちなハイバックラウンジチェアのなかで、『ママ・ベアチェア』は、優しげな雰囲気で凛とした美しさを醸し出す特別な一脚です。一度腰かければ、その抱擁感の虜に! ゆったりとした気持ちになる名作の魅力を詳しくご紹介します。

自分だけの一脚にふさわしい、“本物”たる3つの条件とは

家に帰ったときに“自分だけの椅子”が待っていたら、ちょっと素敵な人生になるような気がしませんか? 自分のための居場所ですから、その一脚は本物の家具であってほしいですよね。では“本物”とはどういったものなのでしょう?

さまざまな意見があるとは思うのですが、私は「愛着がわくような経年変化をする素材・仕上げで、美しいデザインで細部まで作り込まれていて、丈夫でかけ心地がいいもの」と考えています。今回ご紹介するタイプの『ママ・ベアチェア』は、これらを網羅したまさに“本物”です。

カール・ハンセン&サンの名品ラウンジチェア『CH78』(通称『ママ・ベアチェア』)
【ブランド】カール・ハンセン&サン 【商品名】CH78(ママ・ベアチェア) 【写真仕様の価格】本体:¥1,161,600・ネックピロー:¥38,500 【サイズ】幅840×奥行800×高さ1060、座面高400、肘高625(mm) 【材質】脚部:ウォルナット材・オイル仕上げ、本体&ネックピロー:牛革

経年変化で味わいが増す!大切に育てていきたくなる素材と仕上げ

購入したその日から、共に年を重ねていく椅子。私たちが加齢によってシワやシミができるのと同様に、椅子も経年変化から逃れることはできません。できれば自分も椅子も、ハリツヤよくエイジングしていきたいですよね。

『ママ・ベアチェア』は、皮革の張り地やオイル仕上げの無垢材でできたアームや脚部などが、年数を重ねるにつれて座っている人が多く触れた部分が美しく飴色になじみ、オイルで時折お手入れするたびに深みのあるツヤを増していきます。

天然素材で作られ、化学的な皮膜で覆うことなくオイルやソープで仕上げられている家具は、正しくお手入れをすれば次の世代に引き継ぐことができる資産でもあります。北欧では大切に使ってきた家具を三代引き継ぐことも珍しくありません。北欧家具を自分で育て、飴色の美しい未来のヴィンテージ家具に育てる喜びを味わってみませんか?

時を超えて愛され続ける名品ならではの、美しきデザイン

『ママ・ベアチェア』は、皆さんもご存知の『CH24(通称:Yチェア)』を手掛けたデザイナー、ハンス J.ウェグナーによって1949年にデザインされ、1950年から現在にいたるまで途絶えることなく製造されている名品です。

椅子の巨匠として知られるウェグナーが自分のためにデザインしたといわれ、人間工学に基づいた機能を重視しながらも、美しいフォルムを創り上げています。

カール・ハンセン&サンの名品ラウンジチェア『CH78』(通称『ママ・ベアチェア』)のディテール
彫刻的な背のカーブや腰にかけての曲線、アームの木製パネルなどに見られる、『ママ・ベアチェア』の洗練されたディテール。

背とアームが交わる複雑なカーブを損なうことなく、流れるように張り地を施すには「高い職人技術」が、アームの木製パネルに見られるディテールには「精密な作業と仕上げの美しさ」が要求されます。

生地にシワやヨレがなく、このような彫刻的なフォルムの仕上がりになるのは、機械加工だけに頼らず、熟練された職人の技が施されているから。それまでにない新しいデザインを生み出すことへの挑戦と、それと切り離すことができないクラフトマンシップも見逃せません。

安心して使い続けられる丈夫さと、優しく体を受け止めるかけ心地のよさ

『ママ・ベアチェア』は、ハイバックなので腰・背中・首まで優しくしっかりと支えてくれます。もちろん作りの丈夫さは言うまでもなく、背もたれに体重を預けても不安感はありません。さらに、ほんのり内側にカーブした背面の形状の効果でおこもり感があって落ち着きます。

カール・ハンセン&サンの名品ラウンジチェア『CH78』(通称『ママ・ベアチェア』)に腰かけるインテリアエディターの土橋陽子さん
抱擁感のあるハイバックのラウンジチェアでくつろぐ贅沢を日常の風景に。

そして、オプションにはなるのものの、心からおすすめしたいのがこちらのネックピロー。支えてもらって初めて気がつくのですが、首ってとても疲れているんですよね。高い枕だと肩が凝るように、ラウンジチェアのネックピローも大体のものが大きすぎて前傾姿勢にさせられるサイズ感が多いなかで、こちらの半月型のクッションは唯一無二の心地よさでした!

カール・ハンセン&サンの名品ラウンジチェア『CH78』(通称『ママ・ベアチェア』)に腰かけるインテリアエディターの土橋陽子さん
別売りの半月形のネックピローは、座る人の好みに合わせて高さを調節でき、簡単に取り外すことができる仕様。

余談ですが、おもりが入っていて載せるだけで使えるので、ショールームでほかの椅子にも合わせてみたのですが(笑)、これまたよかったのです。

「カール・ハンセン&サン」は、デンマークに最新設備を導入した生産設備と卓越した技術をもつ熟練の職人を抱え、若手の職人を育てています。伝統的な職人技術と最新技術を組み合わせることによって、オーセンティックな名品を作っているラグジュアリーブランドのなかでは値頃感があるのも特徴です。

世代を超えて受け継ぐためにも、どのようなメーカーから買うのかということも重要ではないでしょうか?


今回は彫刻のような優美なカーブを描く軽やかで、首まで心地よいラウンジチェア『ママ・ベアチェア』をご紹介しました。皆さんもぜひショールームで実際に腰かけてみて、ネックピローを好みの高さに調節してからのんびりとくつろいでみてください。

※掲載した商品の価格は、税込みです。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM