4ドアクーペの先がけとして知られるメルセデス・ベンツ CLSがフルモデルチェンジを受けて三代目に。日本での発売時期は未定だが、さきごろバルセロナでジャーナリスト向けの試乗会に参加したライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が、その出来栄えをリポートする。

最新のパワーユニットを搭載!

2003年登場の初代のスタイリングコンセプトを現代的に再解釈したエレガントな外観。ほとんどキャラクターラインが入らない滑らかな面構成が特徴的。写真のモデルはメルセデスAMGのCLS53 4マチック+。
2003年登場の初代のスタイリングコンセプトを現代的に再解釈したエレガントな外観。ほとんどキャラクターラインが入らない滑らかな面構成が特徴的。写真のモデルはメルセデスAMGのCLS53 4マチック+。
ぜいたくな素材を使いつつ居心地のよさと機能性を併せ持ったCLS53 4MATIC+の前席。
ぜいたくな素材を使いつつ居心地のよさと機能性を併せ持ったCLS53 4MATIC+の前席。
アンビエントライトの効果はこのように大きい。
アンビエントライトの効果はこのように大きい。

 新しいCLSは、前席重視のパーソナル感を大事にするというコンセプトを継承。今回は(従来型にあった)シューティングブレークはなくなり1モデルのみとなった。

 シャークノーズと呼ばれる逆スラント型のフロントマスクとともに、キャラクターラインを極力廃したボディのデザインがまず新しい。

 エンジンも注目に値する。新設計の直列6気筒というばかりか、ISG(一体型スタータージェネレーター)というシステムを採用したのだ。

 電気モーターを使ってエンジンをアシストするマイルドハイブリッドなのだが、スタート時やごく低回転時に瞬間的なトルクは得にくい内燃機関の弱点を補うシステムだ。

 ISGでは出力軸に直結したモーターがトルクを補うことで、よりスムーズな加速が得られる。高出力モーターのため48ボルトという高電圧バッテリーも追加。これも特筆点である。

 現在「EQ」という概念の下、統合的に環境対応車の開発を進めるメルセデス・ベンツ。今回の48ボルトのシステムを「EQブースト」と名づけている。

 さらに電動スーパーチャージャーと、ツインスクロール式ターボチャージャーも備え、パワーの追究にも余念がない。

 発進時は電気モーターが作動し、そのあとスーパーチャーチャー。回転をあげて排圧が高まるとターボチャージャーがトルクを上乗せしていくというぐあいだ。

 この6気筒のEQブーストが用意されるのは、CLS450 4マチックとメルセデスAMGのCLS53 4マチック+(プラス)である。

 じっさいにこの2モデルに試乗すると、とぎれないパワー感には舌を巻くほどだ。山岳路でも、ハイウェイでも、じつに気持ちのいい加速感を堪能できた。

エレガントでありながらスポーティな振る舞いも!

CLS450 4MATICの3リッター6気筒の最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは500Nm。写真のモデルはメルセデスAMG CLS53 4MATIC+。3リッター6気筒を積み、320kW(435ps)の最高出力と520Nmの最大トルクを誇る。
CLS450 4MATICの3リッター6気筒の最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは500Nm。写真のモデルはメルセデスAMG CLS53 4MATIC+。3リッター6気筒を積み、320kW(435ps)の最高出力と520Nmの最大トルクを誇る。

 走ったのは、バルセロナ近郊のモンセラという威容で知られる山を中心としたコースだ。ワインディングロードはこのエレガントなクルマに似合わない気もしたが、ところが性能ぶりを知るのに絶好の場所だった。

 効きのいいブレーキをコントロールしながら、小さなコーナーに減速して進入。うまくロール制御するサスペンションシステムの恩恵を受けながら、頂点をすぎたところから加速を始めると、背中を押されるようなトルクが出る。

 いいエンジンなのだ。しかもステアリングとサスペンションシステムとのマッチングもかなりよい。スポーティな乗り味が楽しめる。

 CLS450 4マチックも安定した挙動で安心感は高いが、とりわけCLS53 4マチック+の後輪駆動主体で、必要なときに前輪にトルクを配分する4WDシステムの自然なフィールにも感心させられた。

 巡航では乗り心地はしなやかで快適。インテリアは静粛性が高く、上質な雰囲気だ。64色のアンビエントライトシステムがオプションで設定されていたりと、演出効果にも凝っている。

 後席は180センチ級のおとなが二人乗っていられる空間があり、実用性も充分。こういうおとなっぽい乗り物は日本には少ない。戦前から富裕層マーケットを相手にしてきたメルセデス・ベンツの面目躍如たる仕上がりなのだ。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。