「本物のポルシェ」は911だけ、という考えはもう古い。今やSUVモデルの売り上げが全体の半分以上を占めていて、しかもそれぞれががっしりした作りと走りで、それはもう素晴らしい完成度を誇っている。そんななか、販売台数では突出していないものの、優雅なスタイリングで他のドイツ製サルーンとは一線を画す気品を醸し出しているのが、パナメーラだ。2代目へとモデルチェンジし、モデル数は16と多彩。そのうちの2台を駆り、個性の違いを体感してきたのでリポートしよう。

「激辛」でもまた食べたくなるターボ

ポルシェ・パナメーラ

赤いブレーキパッドが目を引くパナメーラ ターボ。後輪操舵、エアサスペンション、電気式ロール制御などの新機軸を取り入れている。
高速域に達すると、格納式のリアスポイラーが自動的にせり出てくる。動作を眺めているだけでも楽しい(ボタン操作で停止状態でも展開できる)。

 最初にステアリングを握ったのは、突出したスポーツ性能を誇るパナメーラ ターボだ。4リッターのV8エンジンを積み、550馬力の大パワーで大きく重いボディを力強く加速させる。V8ということで、エンジンのアイドル音はアメリカ車を思わせるものだったが、正確無比のハンドリング性能はさすがの出来栄えで、後輪駆動にもかかわらず、4輪操舵システムのアシストでクルマが外側に押し出されるようなこともない。
 また、経済性も考慮され、SUVのカイエンターボのようにガソリンがみるみる減ることはなく、ボンネットの下に収まるのは本当にV8エンジンなのかと疑念を抱くほど。アウトバーンの第3車線を悠々と走ることに心血を注いだ、この「激辛」サルーンは、渋滞の多い日本の道で本領を発揮しにくい。だからこそ、いつかどこかで怒涛のパワーを思う存分試してみたいという気にさせるのだが…。

「まったり」味で誰にでも優しいハイブリッド

こちらがパナメーラ4-Eハイブリッド。グリーン系をアクセントにした、独自のカラーリングだ。
刷新された大画面モニターに各種情報を表示。

 次に乗ったのは、電動化に力を入れるポルシェらしい一面をのぞかせる、外部充電も可能なパナメーラ4-Eハイブリッドだ。先代の同様のモデルで東京〜京都間を往復したことがあったが、100km/hでもモーター走行でき、電気が減ってもチャージモードにすることで積極的に充電する「電動ぶり」に、驚いた記憶がある。新型は4輪駆動となり、安定感のある走り、そしてプレミアム・サルーンならではの静粛性がモーター走行による静けさをいっそう際立たせ、「まったり系」の安楽なクルージングを堪能できる。

 インフォテイメントシステムが新しくなり、モダンなデザインを取り入れたコクピット周りの雰囲気ともよく調和する。駆動用バッテリーを積んでいることもあり、若干の重さを感じることはあるものの、先進的でジェントリィな走行フィールを楽しめるのは、このモデルならではだ。

 今回は2モデルのみの試乗だったが、今後はターボとハイブリッドの頂点に立つターボS E-ハイブリッドが控えていて、ワゴンタイプの洒落たスポーツツーリスモも興味深い。何よりも、今春までポルシェ日本法人のPRを担当していた方の(スポーツカーをこよなく愛するピュアな人柄が印象的でした)、「パナメーラはベースモデルが軽くて楽しいんですよ!」と語っていたときのうれしそうな表情が、今も脳裏に焼き付いている。

 ビジネスユースが多い4ドアサルーンであっても、スポーツカーであり続けようとするポルシェの揺るぎない哲学、そしてクルマ好きから雰囲気を重視する(これも大事な要素だ)淑女まで、幅広いユーザーを虜にする懐の深さに刺激され、「もっと乗りたい!」という欲求は尽きることがない。ポルシェに試乗する機会があったら、なるべくたくさんのモデルを試していただきたい。自分にぴったりの1台は、必ず見つかるだろう。

〈ポルシェ・パナメーラ ターボ〉
全長×全幅×全高:5,049×1,937×1,427㎜
車両重量:1,995kg
排気量:3,996cc
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
最高出力:550PS
最大トルク:770Nm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT(PDK)
価格:2,337万円(税込み) 

〈ポルシェ・パナメーラ4-Eハイブリッド〉
全長×全幅×全高:5,049×1,937×1,423㎜
車両重量:2,170kg
排気量:2,894cc
エンジン:V型6気筒DOHC
総合出力:462PS
最大トルク:700Nm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT(PDK)
価格:1,436万円(税込み)
■問い合わせ先 ポルシェ・カスタマーケアセンター
TEL:0120-846-911
https://www.porsche.com/japan

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。