1990年代、クラシコイタリアが注目され始めた頃から今日にわたり、職人技が生きた服づくりを牽引し、日本に巧みな手仕事を見せつけてきたのが、ナポリの秀英なサルトたちである。この20年を超える歳月で、ベテランから次世代の若き職人に受け継がれてきたほか、独自のコンセプトを展開する、新しい感性のつくり手たちも登場している。これまで、ナポリを代表するビッグブランドの服を余すところなく紹介してきた伊勢丹新宿店メンズ館は、今、そんな次世代のつくり手たちに熱い視線を注ぐ。実力ある新しい世代の職人たちと一緒になり、ものづくりを展開し始めた伊勢丹新宿店メンズ館。メンズプレシャスは、この春に相次いで来日した若き4人のつくり手たちにインタビュー。3回にわたって、その魅力に迫る! 第1回目は日本でも急上昇中の「ルカ グラシア」だ。

物心がつく頃にナポリ製法の極意を習う

今回のインタビューは2018年3月、伊勢丹新宿店メンズ館で開催されたオーダー会の最中に行われた。ルカ氏は来店する顧客に対して、閉店ぎりぎりまで熱心に対応していたのが印象的だった。

 昨年9月、メンズプレシャスの取材で初めて会い、11月に再び東京で、今年1月には、ナポリのカザンドリーノに構える「ルカ グラシア」の工房で会った。およそ半年の間で服づくりのコンセプトを強化し、巧みな服づくりをさらに追及する。まさに熱きナポレターノであり、次世代を担うサルトのひとりがルカ・グラシア氏だ。

 あらためて、彼の服づくりのプロフィールを振り返りながら、最新の「ルカ グラシア」をお伝えしよう。

 1985年ナポリ生まれのルカ・グラシア氏。祖父が仕立て服の仕事をはじめ、父親が仕立て工房をつくり上げた。子供の頃から工房で遊び、職人になるための手ほどきを受けた3代目である。

 物心がつく頃には、ジャケットづくりで最も大切な部分であり、サルトリアによってそれぞれの秘密を備える、袖付けと襟付けを徹底的に習った。続いて裁断技術。型紙の製作だけに留まらず、ナポリ仕立て独特の直接生地に線を引いて鋏で裁断する、直裁ちも教わった。

 スタイルやデザインに関しては、5年間、ローマの名門服飾学校「アカデミア・デイ・サルトリ」で学んだ。裁断や縫製といった工房での実践だけではなく、パターンづくりやデザインの歴史など、服飾の学問も習得したのである。

 そして、ルカ氏は33歳の若さにして、ナポリの伝統的な技を生かしたスタイルに、モダンな雰囲気を表現した仕立てに行き着いた。

 「数あるナポリのスーツのなかでも、より若々しさが感じられるスタイルだと思います。他とは違う何か……、そのことをいつも考えています」

着込むほどに第二の肌のように馴染んでいく

生地はオーセンティックなものから日本の気候に合った涼しげなものまで幅広く揃う。
こちらがエクスクルーシブ素材を用いたスーツ(既製品)。デニム風素材で、知的かつ男らしい雰囲気を表現している。

 エレガントなラインの心地いい着用感。高めに設定しているが、決して強調し過ぎることのないツヤっぽいゴージライン。ナポリ特有の仕立て技のひとつとなる、ジャケット前身頃のダーツをすそまで入れる方法をあえて取り入れないなど、クラシックな技と現代的なルカ氏の感覚が1着のスーツにバランスよく溶け合うのである。

「この春夏は、特別なムードを表現できる服を提案しています。たとえば、デニム&モヘア、デニム&リネン、デニムのソラーロなど、日本で織った生地を使ったスーツやジャケットです。すべて東京で展開するためのエクスクルーシブ素材にしました」

 ルカ氏の服づくりには、純然たるサルトリアの技があり、その上でモードの世界も探求した現代的なスタイルが込められている。昔のスタイルに留まる古い服ではなく、「革命を起こすような、より雰囲気のある服」とルカ氏は言う。

 昨年から、伊勢丹新宿店メンズ館で始まった「ルカ グラシア」のトランクショー。まだ未体験の方に向けて、ルカ氏は服の魅力をこう話す。

「普通のサルトリアとはちょっと違う仕立てを施しているため、初めて袖を通してみると、何か特別な雰囲気を感じるかもしれません。しかし、少しずつ着込んでいくと、第二の肌のように、体になじむのが『ルカ グラシア』のスーツです」

若くしてブランドを率いるだけあり、落ち着いた印象のルカ・グラシア氏。日本人の細かな要望にも対応する真摯な仕事ぶりで、オーダー会の人気は回を追うごとに高まっている。

■問い合わせ先
伊勢丹新宿店
TEL:03-3352-1111(大代表)
http://isetan.mistore.jp/store/shinjuku/

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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