一口に“温泉宿”といっても、そのスタイルは千差万別。温泉ジャーナリストの植竹深雪さんによれば、全国津々浦々の湯宿を巡るなかで、ときにはあっと驚くような斬新なサービスに出合うこともあるのだそう。
温泉の湯のよさは前提として、プラスアルファのおもてなしがあると、旅の思い出がよりいっそう印象深いものに…。せっかく旅に出かけるなら、とびきりの非日常体験で心身をリフレッシュしたいところです。そこで、植竹さんに“ほかにはない体験ができるユニークな温泉宿”をピックアップしていただきました。今回ご紹介するのは、福島県・飯坂温泉にある「青葉旅館」です。
公式サイト
夜も朝も小鉢がズラリ!心尽くしの郷土料理を一口ずつ味わう贅沢
東京駅から新幹線と在来線を乗り継いで2時間余り。奥州三名湯のひとつ飯坂温泉にある「青葉旅館」は、総部屋数10室ばかりのレトロな数寄屋造の宿。こちらでは、夕食も朝食も30種類以上の小鉢が並ぶ「百彩百味・彩り膳」が圧巻だと植竹さんは話します。
「宿名物の小鉢料理『百彩百味・彩り膳』は、見た目にもインパクトがあり食べて大満足。女将さんによれば、ご自身が旅した際に『ちょっとずつあれこれ食べたい』と感じたのをきっかけに、青葉旅館でのおもてなしサービスとして始めたのだそうです。
30種類以上というと一瞬、食べきれるのかと思うかもしれませんが、料理は基本的に女性の小指の第一関節ほどの一口サイズなので心配ご無用。地元の旬の素材を少しずつ味わい尽くすというのは、日常では叶えられない旅ならではの贅沢だと思います」(植竹さん)
「小鉢料理の数々はすべて手作り。しかも、山菜やキノコ類などは天然物をご主人自らが山に採りに行くというこだわりぶりです。春は山菜、秋はキノコ…というように季節ごとに変わる地元の素材をいただけるのが醍醐味で、夕食時には仲居さんが小鉢を配膳しながら、ひとつひとつ食材や料理の説明をしてくれます。
例えば、秋には山で採れたての松茸の茶碗蒸しや松茸ご飯の芳醇な香りが格別。ニンギョウタケやアミタケなど初めて出合う珍しいキノコを使った郷土料理にも感動しました。また、魚介類は朝とれた新鮮なものを宮城県塩釜港から直行便で仕入れているそうで、タコの柔らか煮や、鮑の肝リゾット、イカの酒盗あえなど心尽くしの小鉢料理についついお酒も進みます」(植竹さん)
「朝食も1日に必要な栄養品目30品を取り入れた大量の小鉢が壮観。大根おろしにシラス、旬菜のおひたし、酢の物、佃煮、豆腐など、夜とはテイストの異なるご飯のおともにぴったりなおかずが目白押しです。契約農家が有機栽培したコシヒカリもおいしく、少しずついろいろ食べたい気持ちが満たされて心が豊かになるような朝ごはんでした」(植竹さん)
露天風呂で枡酒も…3つの貸切温泉で心身の疲れを解きほぐす
「温泉は、内湯2つに露天風呂1つの合計3つですべて源泉かけ流し。空いていればいつでも入ることができ、中から鍵をかけることで貸切利用が可能なのもうれしいポイントです。なかでも印象的なのは露天風呂。脱衣所に宿オリジナルの地酒が置いてあり、自然のなかで枡酒を嗜みながら湯浴みするという至福のひとときを過ごすことができます」(植竹さん)
「2つある内湯は歴史の風格を感じさせる岩風呂。湯口に析出物が付いていることからも、湯のよさがうかがえます。泉質はアルカリ性単純温泉。さらりとした心地のよい湯でのんびり寛ぐことができ、湯上りには美肌にも近づけたような気がしました」(植竹さん)
「客室は昭和初期の建築美が光る和の空間。天井や欄間など細部にまで職人さんの遊び心を感じさせる繊細な技巧が施されており惚れ惚れします。全10室の客室はそれぞれ異なる造りで、10室中3室は温泉付きの特別室。コンパクトなお部屋でひとり旅を満喫するもよし。あるいはゆったりとした特別室で好きなときに好きなだけプライベート空間での湯浴みを楽しむのもよし。
誠実で穏やかなスタッフの方々のおもてなしにも癒されますし、そのときどきでメニューが変わる一期一会の小鉢料理の味を求めて、何度でも訪れたくなる名宿だと思います」(植竹さん)
以上、福島・飯坂温泉「青葉旅館」をご紹介しました。貸切風呂でプライベートな湯浴みを堪能しつつ、夜と朝は丁寧に作り込んだ小鉢料理に舌鼓を打つ。そんな充実した旅時間を過ごしたい人は次の行き先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- 青葉旅館
- 住所/福島県福島市飯坂町東堀切7
客室数/全10室
料金/朝夕2食付き 2名1室1名¥17,600(税込)~ - TEL:024-542-3346
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- PHOTO :
- 株式会社リバティー
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)