『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。

今回のテーマは、「冬のワントーンコーデ」。ダークな色調ゆえ重たい印象になってしまったり、無難にまとめてしまうことが多いこの季節のワントーンコーデを垢抜けて見せる極意とは? 定番のグレーと、トレンドカラーのひとつであるブラウン、犬走さんの私物でスタイリングした2パターンのコーディネートから、着こなしのポイントを伝授していただきましょう!

犬走比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)『Precious』本誌をはじめとする数々の女性誌、テレビ、広告など多彩な分野で活躍。女優のスタイリングも手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目されている。

色と素材感のグラデーションで、こなれた雰囲気と立体感を出して

着こなし全体のトーンを揃える「ワントーンコーデ」は、カラーミックスより失敗が少ない一方、「無難」や「単調」と紙一重。とりわけこの季節は重くやぼったい印象になってしまうことも少なくなく、実はセンスが試される着こなしです。

「明度、彩度のトーンのグラデーションを楽しみながら、着こなしに立体感を出し、こなれた印象にまとめ上げるのがワントーンコーデを成功させるコツです。重ね着ができるこの季節なら、素材の組み合わせ方や、ほんの少しだけ“効かせ色”を加えることでグッと洗練度が高まります」(犬走さん)

普段から、無意識のうちにワントーンのスタイリングになっていることが多いという犬走さん。永遠の定番であるグレーと、トレンドカラーのブラウン、それぞれどんな点に留意すれば着こなしが垢抜けるのでしょうか?

■1:顔周りから足元へと濃度を上げていけば、グレーも若々しく!

シーズンやトレンドを超えた定番カラー「グレー」。比較的ワントーンコーデがしやすく、さりげなくリッチ感を演出できるため、犬走さん自身もこの季節はよく取り入れているそう。

大人コーデ_1,コート_1,ニット_1,シャツ_1,パンツ_1,ブーツ_1
ハイゲージのクルーネックニット、アウターはほぼ同じ明るさのグレー。七分丈のパンツは濃度を上げ、シューズのブラックへと繋げて。

「明るいトップグレーからミドル、そしてチャコールまで、色と素材の繊細なグラデーションを楽しめるのがグレーの醍醐味。ただ、例えばこのコーディネートなら、核になるニットの色味が肝心です。これ以上薄いとボケた印象になるし、濃いと一気に重くなってしまうから」(犬走さん)

また、もうひとつのポイントは襟と袖口を出したシャツのホワイト。

「なるべく顔に近いところに、より明るい色を入れたほうが肌もトーンアップできますし、このシャツの白があるだけで着こなしが引き締まります」(犬走さん)

■2:多彩な色味を散りばめて、洒脱さと華やぎが漂うブラウンコーデに

秋冬の定番カラーであり、さらに今シーズンは焦げたような「ベイクドカラー」がトレンドカラーとして注目されているブラウントーン。

「今回はブラウンにスポットを当ててみようということになりましたが、実は私、若い頃は結構好きだったのに、大人になってからはいつの間にか少し敬遠していたみたいで。自分でも意外なほど、ワードローブにブラウン系のアイテムがなかったことに気づきました(笑)」(犬走さん)

その理由は、犬走さんの顔にブラウン、それもダークなブラウンを合わせると老けて映るような気がしたからだそう。そこでピックアップしたのが、別珍のゴールドブラウンのテーラードジャケット。

大人コーデ_2,ジャケット_1,ニット_2,パンツ_2,スカーフ_1
ジャケットはイタリア・ヴェネツィア発のブランド「ゴールデン グース デラックス ブランド」。「スローン」のチョコレートブラウンのニット、久しぶりに購入したという「アニエスベー」のパンツに、「サンローラン」のヴィンテージチーフをポイント使い。

「個人差はあると思いますが、大人世代がダークな色調のブラウンだけでまとめると、どうしても地味になりがち。なのでこんなふうに、マスタードに近いゴールドブラウン、チョコレートブラウン、ライトブラウンと多彩な色味のグラデーションにしてみました。ベルト、チーフ、シューズと小物も効かせることで、洒脱さと、どこか華やぎも漂わせるブラウンの“ワントーンコーデ”に仕上がります」(犬走さん)


これから一段と寒さが厳しくなるこの季節。グラデーションを意識したひとワザで洗練度を高めた「ワントーンコーデ」で、真冬のおしゃれをもっと楽しみませんか?

※私物に関するブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。

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この記事の執筆者
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PHOTO :
田中麻衣(小学館)
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)