『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。

今回のテーマは、犬走さんの永遠のステディアイテムのひとつである「トレンチコート」。犬走さんの審美眼にかない、今シーズンも活躍予定の4着を、コーディネートのポイントと共に公開していただきましょう。

犬走比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)『Precious』本誌をはじめとする数々の女性誌、テレビ、広告など多彩な分野で活躍。女優のスタイリングも手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目されている。

時代のムードに流されにくいのは、タイトすぎないシルエットの膝下丈

1枚だけで知的で凛とした佇まいを演出できるトレンチコートは、Precious世代のワードローブに欠かせないアイテム。犬走さんも、これまでいろいろなトレンチコートを取り入れ、着こなしを楽しんできたそう。

「思えば中学生のときの通学コートもトレンチ型を選んでいましたし、昔から好きなのでしょうね。振り返ってみると、レッドのバーバリーをお気に入りでよく着ていた時代もありました。トレンチコートというとトレンドを超えたベーシックアイテムの代表格というイメージがありますが、実は時代によってちょっとずつ変わっていっていることにお気づきの方も多いでしょう」(犬走)

確かに、若い頃のお気に入りで、それが高価なベーシックアイテムだったとしても、今着てみると「これじゃない! 何かが違う…」と思った経験は誰にでもあるはず。

「実はベーシックアイテムだからこそ、時代のムードにマッチした形や丈を吟味することが重要です。それを踏まえて、私の経験値から出た時代に流されにくいタイプのトレンチコートの結論は、タイトすぎないシルエットの膝下丈。そういうトレンチコートに出合うと、ついつい買い足してしまうんですよね(笑)」(犬走さん)

そんな犬走さんが、今から冬、そして春と3シーズン楽しむ、4着のお気に入りを見せていただきましょう!

■1:イメージ自在に着回せる「シオタ」のコットン素材

まずは犬走さんの最新トレンチコート。2024年の春に購入したMade in Japanブランド「CIOTA(シオタ)」のものです。

「いつもこんなことばかり口にしていますが、実はトレンチコートも『もう買わない』と思っていたアイテムなんです(笑)。でも、このコートを伊勢丹で見つけて、メンズっぽいデザインやシルエットが今っぽいなとひと目惚れしてしまい…、つい購入してしまいました」(犬走さん)

大人コーデ_1,コート_1,シャツ_1,パンツ_1
ベルトの位置がやや下にあるメンズライクなコートの持ち味を生かし、シンプルなシャツ&パンツを合わせて。

素材はコットン100%で薄手なので、メンズライクでいながら、しなやかなフェミニニティも併せ持ちます。

「シャツ&パンツはもちろん、例えばストンとしたシルエットのシックなワンピースを合わせてもいいし、いろいろなスタイルで着こなせそうです」(犬走さん)

■2:まさに“一生もの”の名品トレンチ「アクアスキュータム」

“一生もの”と謳われることが多い「アクアスキュータム」のトレンチコート。深い打ち合わせのダブルブレスト、動きやすいラグランスリーブ、そして肩章など、不朽のデザインコードが息づく名品です。

大人コーデ_2,コート_2
取り外しできるライナーを装着すれば、高い防寒性も確保。スタイリッシュなだけではなく、実用的というのも名品の証。

「ベルトの絞り加減やボタンの留め方によって表情が変わるし、肩の切り替えが斜めなのでとても動きやすいのも魅力。ひと昔前には襟を立てた着こなしが流行ったけれど、ちょっと刑事さんみたいになってしまうから(笑)。私はこのコートは襟を立てずに着ています」(犬走さん)

■3:しなやかなカシミア素材の「ヘリル」はニットと好相性

2019年の秋冬からスタートしたユニセックスブランドの「HERILL(ヘリル)」。たっぷりとしたシルエットのカシミア素材のトレンチは、主にニットを合わせて着こなしているそう。

コート_3,大人コーデ_3
「アクアスキュータム」と同様、ラグランスリーブでメンズライクなシルエットが犬走さん好みの1着は、2020年に購入したもの。

「ニットの上に着ても着ぶくれしない綺麗なシルエットと、カシミアならではの上質な素材感が気に入っています。私はちょっと大きめのタートルネックやフーディーニットを合わせて、カジュアルに着ることが多いですね」(犬走さん)

■4:コートドレス感覚で美シルエットを楽しむ「アスペジ」

この連載の「雨の日コーデ」の回で登場した「アスペジ」のトレンチ。ナイロンタフタならではの艶やかな光沢感と、絶妙なカーキの色合いが、エレガントな雰囲気を醸し出します。

大人コーデ_4,コート_4
バックにもドレープがたっぷりとられているため、後ろ姿もフェミニン&シック!

「これは軽いし、シワにならない素材で着やすく、本当に買ってよかったと思っている1着。何せシルエットが綺麗に出るので、ボタンはすべて留めてベルトをキュッと絞って。コートドレスのように着こなすのが好きです」(犬走さん)


今回は、犬走さんのワードローブから選りすぐった4着のトレンチコートを、ご自身が実践している着こなし方と共にご紹介しました。1枚で装いをドラマティックに演出するトレンチコートを上手に着こなして、秋が深まる街へお出かけしてみませんか?

※私物に関するブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。

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この記事の執筆者
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PHOTO :
田中麻衣(小学館)
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)