連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、ロンドンでインド人女性料理人だけのレストラン「ダージリン・エクスプレス」を営むオーナーシェフ、アスマ・カーンさんにインタビュー!
'19年に「Netflix」のドキュメンタリー番組『シェフのテーブル』シーズン6に登場し、提供する正統派インド料理の素晴らしさだけでなく、インド女性の人権問題にも踏み込んだ内容は世界で反響を呼びました。「いつの日か、女性のためのリーダーシップの学校をつくりたい」と話すアスマさんに詳しくお話しをうかがいました。
【London】インド料理から始まった第二の人生、女性をエンパワメントする存在に
'19年、「Netflix」のドキュメンタリー番組『シェフのテーブル』シーズン6に登場した、ロンドンにあるインド人女性料理人だけのレストラン「ダージリン・エクスプレス」オーナーシェフ、アスマさん。提供する正統派インド料理の素晴らしさだけでなく、インド女性の人権問題にも踏み込んだ内容は世界で反響を呼んだ。'24年には米『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、社会運動家としても注目を集める。
「1991年にインドで結婚後、夫の渡英を機にケンブリッジに移住しましたが、夫は不在がちで、気候は寒々しく、孤独感でいっぱいに。インド料理が恋しくなりました。そこで数か月間帰国し、ケータリング業を営んでいた母に料理を習うことにしたんです。士族の実家では、宮廷料理から家庭料理まで並んでいました。私はゆで卵さえうまくつくれませんでしたが(笑)、最後はストリートフードまで習得してロンドンへ戻りました」
子供を通じて出会ったインド人女性たちを自宅に招いて始まった食事会は、一般向けのサパークラブとなり、ポップアップレストランへ。そして著名な料理評論家のレビューによりアスマさんは一夜で有名シェフに。'17年、ソーホーにレストランをオープンした。
「家族のために毎日黙って食事をつくって、感謝もされない。そのような文化に生きている女性たちを讃えたかった。私にとってレストランは、ビジネスではなく、女性差別への “鬨(とき)の声” なのです。私への賞賛は、すべての女性への賞賛。だからとてもうれしい」
'21年にはチャリティ団体「セカンド・ドーターズ・ファンド」を設立。インドの家庭でふたり目の女子=セカンド・ドーターが経済的負担として忌避される状況への “鬨の声” だ。
「いつの日か、女性のためのリーダーシップの学校をつくりたい。世界の女性が助け合い、それぞれのストーリーをシェアする。そのための種を、あちこちで蒔いていけたら、と」
◇アスマ・カーンさんに質問
Q.朝起きていちばんにやることは?
インドに住む父母に毎日電話をする。英国との時差は5時間、毎朝6時に起きるので、彼らと話すのにちょうどいい時間。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたの話にインスパイアされた。元気をもらった」
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
パジャマのまま誰とも話さず、ひとりで好きな音楽を聴いて、お茶を飲み、考えごとをしたい。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
最近スイミングのレッスンを始めたところ。ちょっと怖い気もしたが、楽しんでいる。
Q.10年後の自分は何をやっている?
レストラン経営はしていないと思うが、世界各国で女性に活力を与える話を語り続けていたい。
Q.自分を動物にたとえると?
群れのリーダー役を担うメスのゾウ。
- PHOTO :
- Shu Tomioka
- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
- 取材 :
- Yuka Hasegawa