「春節」という言葉をご存知ですか? 主に中国や台湾で使われる「旧正月」の別称で、アジア各国ではお正月以上に盛大に祝われる伝統行事です。休暇を取る人も多いため、日本にも毎年、大勢の観光客が押し寄せます。「○買い」なんて言葉が生まれたのも「春節」から。今回は「春節」について、その由来や伝統料理などに関する豆知識をご紹介します。

【目次】

【「春節」とは?「読み方」と「意味」、「由来」】

「読み方」

「春節」は「しゅんせつ」と読みます。簡単ですね!

■「意味」

「春節」とは、旧暦におけるお正月、「旧正月」を意味します。日本では、新暦の1月1日を年明けの正月として祝いますが、中国・台湾・シンガポール・韓国・ベトナム・マレーシアなど、アジア各国では、この「旧正月」が一年で最も重要な祝祭日とされており、新暦のお正月よりも盛大に祝われます。「旧正月」を「春節」と呼ぶのは、主に中国と台湾です。

ちなみに、日本で新暦が採用されたのは1873(明治6)年。それ以前は日本でも、全国的に旧正月のお祝いをしていました。現在でも、沖縄や横浜など一部の地域では、旧正月を祝っています。

■「由来」

「春節」の歴史は古く、古代中国(紀元前1600-22一年)まで遡るといわれています。古代中国では、年末年初に臘祭(ろうさい)と呼ばれる、先祖や衆神への祭祀が行われ、豊作を祈念していました。「春節」の由来は諸説ありますが、これらの行事が由来のひとつとされています。


【春節の食材・行事食は?】

日本の「おせち料理」に相当するものは中国にもあり、「年夜飯(ニエンイエファン)」と呼ばれています。大晦日の夜、家族揃って食べるのが慣例。地域によって多少の違いはありますが、縁起がよく、新年への願いが込められたご馳走が、食べきれないほど用意されるのだとか。代表的な食材や料理をご紹介します。

■魚料理

「年夜飯」の定番と言えば、「魚」を使った料理です。中国語で「魚」は、余裕があることを意味する「余」と、発音が同じ。そのため、魚料理は「ゆとりのある生活ができますように」という願いを込めた縁起物とされているのです。魚は切り身のものではなく、お頭付きのものを使用することが多いそうです。

■年糕

中国でも日本と同じく、新年にはお餅を食べます。名前は「年糕(ニェンガオ)」。由来はいくつかありますが、年糕の発音が「年高」と同じであるため、年を重ねるごとによいことが重なる、ものごとが上向きになるといった願いを込めて、食べられているといわれています。調理法は、炒めたり、蒸したり揚げたりと、地域によって味つけはさまざまです。

■餃子

中国北部の北京などでは、餃子も「年夜飯」料理の定番です。中国で餃子と言えば、水餃子のこと。その形が、中国の昔の貨幣である元宝(銀錠)に似ていることから「富をもたらす縁起のよい食べ物」となった、あるいは「餃子」の発音が子どもを授かるという意味の「交子」に似ているから、ともいわれていますよ。用意した餃子のなかにひとつだけ硬貨を入れておくという風習もあり、この硬貨が当たった人は、その後一年、金運に恵まれるとされています。

■春巻き

中国東部で特に人気のある「年夜飯」料理が、春巻きです。春巻きは春を象徴する食べ物とされ、頭から尾まで食べることから、「終始一貫」という意味でも縁起が良いとされています。春節の時期に旬となる野菜や肉を入れて作られ、一年の幸せを願います。

■長麺(長寿麺)

長麺がなぜ「年夜飯」料理として人気なのか、なんとなく予想できますよね。麺の長さが食べる人の人生の象徴とされ、長寿の願いを象徴しているのだそうです。そのため「年夜飯」には、通常よりも長くした麺を調理します。


【2025年の「春節」はいつからいつまで?】

■2025年の「春節」はいつ?

「春節」は旧暦に基づく祝日のため、新暦と言われる太陽暦(グレゴリオ暦)においては、毎年日付が異なりますが、毎年1月の下旬から2月上旬の、特定の1日が「春節」の日となります。実は中国では、通常、翌年の祝日が前年の11月〜12月ごろに、政府から発表されて決まります。2025年の春節は1月29日です。

■「春節」の期間は?

中国では毎年、「春節」の前後7日間ほどが連休になります。2025年の連休期間は、春節前日の1月28日から2月4日までの8日間です。非常に多くの人々が中国国内はもとより、海外へ旅行に出かけます。コロナ禍以前、2016(平成28)年の春節期間の中国人海外旅行者数は600万人とも言われ、日本では中国人旅行客による「爆買い」という言葉が生まれました。2025年も多くの中国人観光客が来日すると予想されます。


【「旧正月」との違いなど雑学】

■そもそも「旧正月」とは?

現在私達が使っている暦(新暦=グレゴリオ暦)は、太陽の動きをもとにしてつくられているため、「太陽暦」と呼ばれます。一方、旧暦と呼ばれる「太陰太陽暦」は、月の満ち欠けをもとに、季節を表す太陽の動きを加味してつくられています。「旧正月」とは、旧暦(太陰太陽暦)でいうお正月のこと。日本では、1873(明治6)年の改暦以降、新暦が示す「お正月」と区別するために、旧暦のお正月を「旧正月」と呼んでいます。

■中華圏では「春節」のお休みに何をする?

・帰省する
少し前の日本のお正月のように、家族や親戚が集まり、新年の訪れを祝います。そのため、「春運(しゅんうん)」と呼ばれる帰省ラッシュがあります。

・お正月飾りをする
家の玄関には、縁起のよい言葉が書かれた「春聯(しゅんれん)」と呼ばれる赤い紙や、「福」の文字が書かれた「倒福(とうふく)」を飾ります。

・お年玉をあげる
子どもたちのお楽しみの「お年玉」は、中国では「紅包(アンパオ)」と呼ばれる赤い袋にお金を入れて渡します。

・爆竹を鳴らす
動画などで見たことのある人も多いのでは? 中国では、お祝いごとに爆竹は欠かせないため、以前は至るところで爆竹が鳴る光景が見られましたが、近年ではさまざまな配慮から、控え目になっている地域もあるようです。

■2025年「春節」期間の人気観光スポットは?

中国・台湾などの海外プロモーション・インバウンド支援を行うインタセクト・コミュニケーションズ株式会社が、中国在住の方を対象に「2025年 春節期間の日本旅行に関する調査」を実施しています。

・2025年の春節期間中に海外旅行を予定している中国在住者に人気の旅行先1位は日本
・春節期間に訪日予定の中国在住者に人気の都道府県1位は北海道
 関西エリア(大阪、京都、奈良の3府県)も人気

アンケートに対し、海外旅行先として「日本」を挙げた人は、回答者全体の24.3%(!)でした。

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「春節」は主に中国・台湾で使われる、「旧正月」を意味する言葉です。2025年の春節休暇は1月28日から2月4日までの8日間。人気の北海道を筆頭に、今年も多くの中国人観光客が訪れると予想されています。

この記事の執筆者
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参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /<中国インバウンドの最新動向|2025年 第一弾>インタセクト、「2025年 春節期間の日本旅行に関する調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000127.000032118.html :