ひとりの女性を、ふたりの男が奪い合う。映画『ゆきてかへらぬ』では、詩人・中原中也と恋人の泰子、そして中原の才能に魅せられながらも泰子を愛してしまう文芸評論家・小林秀雄の、ドラマティックな人間模様が描かれています。小林を演じた岡田将生さんのインタビュー第2回は、撮影中に湧いた、「特別な感情」について語っていただきました。

【俳優・岡田将生さんインタビューVol.01】これこそ映画だ!という現場を、もう一度体感したかった
「景色も含めて、撮影中は忘れられない時間を過ごせました」
──撮影中、岡田さんがいちばん印象に残ったシーンはどこですか?
「いっぱいありますけど、どこだろうな……。(広瀬すずさんが演じる)泰子と暮らし始めたあとに、小林が、(木戸大聖さん演じる)中原と会って話すところは、ふたりでどこか先を見ている感じがしました。満開の海棠の花に囲まれたロケ地も含めて、あの時間は、自分の中では特別なものになっています。(中原から泰子を奪ったにも関わらず)小林が、中原に泰子の愚痴をいうところも面白いなと思って。これって、僕がまだ20代だったら、ちょっとわからない感覚なんですよ。だけど実際に30代半ばになってきたときに、うまく言葉にできないんですが、愚痴れるっていう感覚が面白く感じて、人間臭いし、よりふたりの関係性がわかるところが、特別なシーンだったかな」

──確かに物語だけでなく、美しい風景も、この作品の魅力ですよね。
「あとは、やっぱりボートに乗っているシーン。撮影は大変だったけれど、ボートに3人で並んで座るあの位置が、ものすごくバランスがよくて。それぞれの位置が違ったら沈むんじゃないかっていうぐらい絶妙で、しっくりきましたね」
──水面に光が反射している様も素敵でしたし、3人の関係性を、ボートの座り位置だけで表しているのも見事だなと。
「そう。それがとてもいいなって、撮影しながら思っていましたね」

──ほかの人には理解できない三角関係は、物語の軸にもなっています。
「でもこの映画の中心は、泰子と中原なので。僕はどこか、ふたりを支えたいなという思いもありました。僕がいちばん年上だったので、役を離れたところでも、柱になれたらいいなぁって」
──先ほどの、広瀬さん、木戸さんの柱になれたら、というのは、たとえばどんなサポートを?
「意識的なことですね。でもそれが、小林らしさにつながるところもありました。なんだか不思議なことに、泰子と中原の喧嘩のシーンを見ていると、『とてもじゃないけど僕は入れない』っていう、年齢の差を感じたんですよ(笑)。35歳の僕は、10ぐらい歳が離れているあのふたりの、ものすごいエネルギーのぶつかり合いには、もう足を踏み入れたくない(笑)。だから肉体的なことより、もっと感情的な部分で、『大丈夫?疲れてない?水飲む?』みたいにサポートしていく感じになりました。ふたりからは『親戚のおじさんに、喧嘩を見られているみたい』って言われたりしたけど(笑)、本当にその通りの感情でしたね」

──それは役柄としても、岡田さんご自身としても、そういう気持ちになったということでしょうか。
「そう、不思議とリンクしていきましたね」
──実際の現場では、あまりお互いにやり取りがなかったという話もお聞きしたのですが。
「3人とも役に集中しないと、いけなかったんだと思います。撮影が終わった後の疲労感がすごいんですよ。根岸監督が自分たちにいい緊張感を与えてくださっていたというのが、少なからずあるので。本当に濃密な撮影期間でしたし、撮影が終わったときは疲れていたけれど、『これが映画の現場だ』って思って帰ったのを、覚えています」
続きはvol.03で! 岡田さんの近況についても、お聞きしてみました。
◾️Information◾️映画『ゆきてかへらぬ』2月21日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

文化や芸術が著しく花開いた大正時代。天才詩人・中原中也と、その恋人・長谷川泰子、岡田さん演じる文芸評論家・小林秀雄の、緊張感あふれる、独特な三角関係を描く。史実に基づいて生まれた脚本が、約40年のときを経て、奇跡の映画化を果たした。
出演:広瀬すず 木戸大聖 岡田将生
監督:根岸吉太郎 脚本:田中陽造
配給:キノフィルムズ
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