『ジュマンジ』も4月9日現在で興行成績、9.5億ドル(約1016億円、1ドル=106.9円)というとんでもない大ヒットの様子。同慶のいたりであります。
ぼくも劇場試写に行ったけど、あれはほんとうに「ゲーム」ですね。ひたすら巨大な。だから小さい男の子がいるパパには息子君とのコミュニケーションの意味で最高じゃないですか。男子萌えしなさい。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
だが、お嬢ちゃん持ちのパパへは、ぼくは同じく現在公開中の『ダンガル』をすすめたい。いや、男ひとりでも良いよ。充分満足できるとクオリティーである。
ところで『ダンガル』はインド映画です。
え? インド映画? いま、あなた躊躇しなかった?
実はぼくもなんです。
アタマのなかではインドは、監督サタジット・レイ(『大地のうた』『チャルラータ』)生んだなかなかの映画国であることは承知しております。そうそう、『きっとうまくいく』(2013年 ラジクマール・ヒラニ監督)もとてもよかった。
『ダンガル きっと、つよくなる』
だがね、やはりボリウッド=『ムトゥ、踊るマハラジャ』の印象が強すぎて、インド映画ファン、関係者の方ごめんなさいね、〈また、歌と踊りか〉とぼくなど思ってしまう。ところがこの『ダンガル』は、ほんの僅か、踊りのシーンが登場するだけで(観ているときは一瞬ヤヤヤであったが)、それは物語のナリユキ上もごく自然なものであったのです。
それよりなにより、この作品は、主人公のアマレス娘たちのがんばりに拍手をおくり、それを助けるガンコオヤジの(制作も手掛けた、インドのトップスター、アーミル・カーン)の猪突猛進にも若干ながら自己投影できる、正統派スポーツ根性映画なのでありますよ。
ふだんはレスリングなどなんの興味もないぼくですが、映像にするとワンオンワンの格闘技ってやっぱり迫力あるんだよな。ボクシングなんかその典型でしょ?『ロッキー』なんて40年間に8作も制作されてるんだから。やっぱり人はハラハラドキドキしたいんですよ。
それに加え、インドという国は女性差別が依然残っているらしい。このアマレス娘もスポーツで身をたてるどころじゃない貧困家庭の出身で(その貧しさもガンコオヤジのガンコさゆえ)、そういうコたちが地方の村から、都市レベル、そして国レベルの大会で勝ち上がっていくストーリーにはスッとするんです。
そういう背景もあるからインド映画の世界興行収入史上ナンバーワンになるほど支持を得たんです。そのあたりのソロバンもしっかりはじいているところは、さすが制作インドディズニーである。
スポ根物語といえば日本ではなんといっても『巨人の星』だが、この『ダンガル』も通じるところあり。それは、競技で活躍する本来のヒーロー、ヒロインよりガンコオヤジのほうがそのガンコぶりで目立つし、読み終わったあと、観終わったあとも残るのはオヤジの顔なのであって、アマレスギャルズはまったく憶えてない(笑)。
まあ、たまには「オヤジというのはここまで子供に入れ込んでるもんなんだ」とお嬢さんさんの意識に注入するのも悪くないですよ!
- TEXT :
- 林 信朗 服飾評論家