俳優・長澤まさみさんと森山未來さんが、14年ぶりに夫婦役として共演することで話題を集めている舞台Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』。映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、映画『モテキ』(2011年)と、共演する作品はいつも話題を呼んだおふたりが、実に14年ぶりの共演となります。
長澤まさみさん&森山未來さんが14年ぶりに共演!|舞台『おどる夫婦』インタビュー【前編】


「ずっと森山さんをダンサーだと思っていたんです」3度目の共演となるふたりが夫婦として作り上げる舞台
――舞台Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』(以下・おどる夫婦)で、長澤さんは舞台衣装デザイナー・キヌを、森山さんはアルバイトで生計を立てるヒロヒコを演じます。不器用な男女が夫婦になってから10年という歳月を描く物語ですね。
長澤まさみさん(以下・長澤)「夫婦の関係は多くの舞台や映像作品で扱われていますが、それぞれに違った呼吸と空気感があると思います。キヌとヒロヒコはどのようにお互いを理解し、10年の歳月を重ねたのか、そこが要点になっていくのかなと」
森山未來さん(以下・森山)「夫婦に限らず、お互いを理解することは時間がかかりますから、その時間の積み重ねを見せつつ、関係性の変化について、空気感で表現していけたら。これから来る台本を待ちつつ、どうアプローチするか考えているところです」

長澤「登場人物の設定を見る限り、私が演じるキヌは、人生を自分で決めるというよりは、流れに乗っかって生きる人なのかな、と感じました。舞台衣装デザイナーとして仕事をしていますが、労働と報酬が見合わない仕事を抱え、さらに母との確執があり、難病の弟がいたりと、現実との戦いをしている女性ですね」
森山「僕が演じるヒロヒコは母を亡くし、『人は何故生きるのか』という問いを抱え、人生との戦いを続けている男性です。キヌとヒロヒコの夫婦の関係性がわかるような手がかりをヒントに、これから作品を練り上げていくことになります」
長澤「夫婦の会話劇で重要なのは、深い関係性でないと発展していかない日常会話をどう表現するか。おそらく稽古場のコミュニケーションがカギ」
森山「夫婦とはいえ、最初は他人同士。ゼロから関係を作っていくものですもんね」
長澤「だから1ヶ月の稽古で、私たちがどこまで結婚10年の夫婦になれるかですよね。私と森山さんは、共演作はありますが、お互いのプライベートをほとんど知らないので、この“あるようでなかった”つながりが、『おどる夫婦』にプラスに作用するのではと思っているんです」

――社会現象にもなった、『世界の中心で、愛をさけぶ』の共演から20年、改めて、その後のお互いの俳優としての印象を教えてください。
長澤「初めて会ったときから、そこにいるだけで存在感がある人だなと思っていました。その後も森山さんは、他の人が日本ではやらないような作品にたくさん携わっていらっしゃいますよね。
そういえば、最初にお会いした時、私は監督の行定勲さんから、『ダンサーの森山未來さんです』と紹介されていたので、ずっと森山さんをダンサーだと思っていたんです。
森山「え?そうなんですか?」
長澤「だから今回のお話が来て、タイトルに“おどる”という単語を発見し、『とうとう森山さんのダンスの現場が見られるのか…』と思ったりして(笑)」
森山「あはは! それでいうと、僕の長澤さんに初めて会ったときの印象は“落ち着いている映画人”です。僕の映画初出演作品は『世界の中心で、愛をさけぶ』なんですが、現場での振る舞い方が分からず、あたふたしていましたんですよね。
長澤さんを見ると、監督はもちろん、スタッフの皆さんと落ち着いて意見を交わしていて。発言も芯が通っているし、信頼できる人だなと感じました。この印象はずっと変わりません」

――先ほど、長澤さんは、演じる舞台衣装デザイナーのキヌについて、「流れに乗って生きる人という印象を持った」と話していました。そう聞くと、森山さんがいう長澤さんの性格とは真逆のようにも感じますが…。
長澤「そうですね、確かに自分の意見はしっかりある方だと思います。ただ、最近は誰かが作った流れに乗ることも増えてきたんですよ。その結果、新しい世界を見たり、気付いたりしたことも多いんです。
直近でいうと、友達に誘われるまま北海道旅行をしました。野生の鶴の大きさにびっくりしたり、どこまでも広がる湿原など素晴らしい景色を見たり。自分自身でプランを立てていたら、できない体験だったと思います」
森山「旅行は予想外のことが起こりがちですが、舞台もそうですよね。生身の人間が演じているから、何が起こるか分からない。そもそも、劇場は観客も含め、そこにいる人が虚構の世界を共有する空間ですから。劇場に流れる時間に身を任せ、想像を共有しながら新しい体験をします。この演劇というシステムそのものが、人間が作った芸術だと思うこともあるんです」
長澤「そうですよね。劇場にいる人全員で世界を作るのは舞台の醍醐味。お互いの集中力が高まっていくのを双方で感じながら、同じ世界に入っていく感覚がある」
森山「劇作品には明快なお話もあれば、難解な作品もありますが、『おどる夫婦』は観た方に喜んでいただけるように仕上げていきたいと思っています。本番を楽しみにしていてください」
――時代を代表する映画で共演したふたりが、初めて舞台で共演。舞台は密なコミュニケーションを重ねて作品が完成していきます。長澤さんと森山さんがどのような世界を見せてくれるのか、劇場に足を運びたいものです。
■『Bunkamura Production 2025おどる夫婦』
キヌとヒロヒコは、お互いの生きづらさを補完するように夫婦になり、粛々と生活することを好んだ。自分たちのことを理解できるのは自分たちだけで、 互いに相手を理解していると思っていた。しかし、世界は向こうから入り込んでくる。共に生活する中で、やがてほころびやズレが生まれてくる。現代社会では非常に生きづらい性質を持つ夫婦の約10年間の軌跡を描いた物語。
■作・演出:蓬莱竜太
出演:長澤まさみ、森山未來
松島聡、皆川猿時、小野花梨、内田慈、岩瀬亮、内田紳一郎、伊藤蘭
企画・製作 Bunkamura
■日程・会場
【東京公演】4月10日(木)~5月4日(日・祝) 東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【大阪公演】5月10日(土)~5月19日(月) 大阪・森ノ宮ピロティホール
【新潟公演】5月24日(土)・5月25日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【長野公演】5月31日(土)・6月1日(日) 長野・サントミューゼ 大ホール(上田市交流文化芸術センター)
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- PHOTO :
- 田形千紘
- STYLIST :
- 吉田 恵(長澤さん)、杉山まゆみ(森山さん)
- HAIR MAKE :
- スズキミナコ(長澤さん)、須賀元子(森山さん)
- WRITING :
- 前川亜紀