【目次】

【「メートル法公布記念日」とは?】

「メートル法公布記念日」は、4月11日です。ご存知でしたか?

■なぜ4月11日?日付の「由来」

1921(大正10)年のこの日、「メートル法」の採用を法制定した、改正「度量衡法(どりょうこうほう)」が公布されました。これにより、日本でメートル法の使用が決定したことから、「メートル法公布記念日」が制定されました。


【「メートル法」とは?】

「メートル法」とは、18世紀の末期、世界で共通して使える「統一された単位制度」の確立を目指し、フランスがつくりあげた計量単位です。「メートル法」という名の通り、長さを[cm(センチメートル)]や[m(メートル)]の単位を使って表すことのほか、質量には[g(グラム)]、体積に[l(リットル)」、面積に[a(アール)」などを用い、十進法を採用しています。1960年以降は国際単位系(SI)に再統一されました。


【ビジネス雑談に役立つ「単位」の雑学】

■「メートル法」がフランスによって確立されたのはなぜ?

18世紀になると、航海技術の向上による国際間の貿易や、科学・工業がめざましい発展を遂げます。こうしたなかで、世界的に「単位」が不統一なために起こる弊害が顕著になってきたのです。ことさら、兵器などの器械の製造や精密測量の分野では、高い精度の計量が要求されるようになりました。こうした状況のなか、ことさら単位の統一に力を入れた国が、革命後のフランスだったというわけです。

■メートル法を考案したのは誰ですか?

フランスでは、1790年にタレーランの提案により、世界中に様々ある長さの単位を統一し、新しい単位を創設することが国民議会で決議・承認され、政令によって「いかなる国でも採用できる新しい単位系」を創設する任務がパリ科学学士院に与えられたのです。そこでパリ科学学士院は、ダンケルク(フランス最北端)からバルセロナ(スペイン)の距離を経線に沿って測定し、その値を元にして計算が行われた、地球の北極点から赤道までの子午線上の距離の「1000万分の1」として定義される、新たな長さの単位「メートル」を決定しました。フランス政府はこの作業を国際的なものにするため、イギリスとアメリカに協力を呼びかけましたが、いずれからも拒否されたため、メートル法の設定作業はフランスが単独で行ったものとなりました。

この単位系は十進法で、長さにメートル、面積にアール、体積にリットル、重量(質量)にグラム(のちにはキログラム)をとり、今日のものの原型になっています。単位の名称は各国の国民感情を考慮して、すべてギリシア語とラテン語が採用されました。これらメートル法は、度量衡の単位の統一に悩むフランス以外の国家でも注目されるようになり、1875年には、「メートル法」を導入するため、各国が協力して努力するという主旨の「メートル条約」が締結されました。

■日本で「メートル法」が取り入れられたのはいつ?

日本では、古くから長さは「尺(しゃく)」、質量は「貫(かん)」を基準とする「尺貫法(しゃっかんほう)」が使用されていましたが、1885(明治18)年に「メートル条約」に加盟1891(明治24)年には、「尺貫法」と「メートル法」を併用する度量衡法が施行され、長さのメートルには「米」、重さのグラムには「瓦」、容積のリットルには「立」の漢字があてはめられ、広く普及が図られました。その後、1921(大正10)年4月11日に、従来の尺貫法が廃止され、メートル法を基本とする「度量衡法」の改正が行われたことから、4月11日は「メートル法公布記念日」となったのです。

しかし、根強い反対運動により、「メートル法」への完全移行は、なかなか実現しませんでした。1952(昭和27)年に「度量衡法」が廃止され、新しい「計量法(けいりょうほう)」の施行によりメートル法の使用義務と尺貫法の使用禁止が法的に制定され、1959(昭和34)年に完全実施されました。

■アメリカでメートル法を使わないのはなぜ?

現在でも「メートル法」を使用していない国は、アメリカ、ミャンマー、リベリアだとされています。問題は、大国アメリカ。アメリカでは、「メートル法」よりも、「ヤード・ポンド法」の単位(マイル、ヤード、バレル、ガロン、ポンド、オンスなど)がむしろ主流であり、両方の単位がごちゃ混ぜに使われているのが現状です。実は「メートル法」が発足した1790年当時、のちのアメリカ大統領トーマス・ジェファーソンは、アメリカ発の単位系を作り、これを世界標準にしようとしていたと言われています。

その理由は、「メートル法」を採用することで、アメリカが単位系の基準を握れなくなり、正確な計量のためにはフランスに依存しなければならなくなること、でした。とはいえ、もはや世界をほぼ統一したといってもいい「メートル法」を、かたくなに採用しない理由は、なんなのでしょうか。

この問題はたびたびアメリカ国内でも取り上げられており、2013年には、アメリカ政府の目安箱(「We the People」)に「ヤードポンド法を廃止してほしい」という投書が5万件近くの署名を集めて提出されています。

そして、これに対する当時の政府の回答は、早い話が「政府としてはどちらでもいいから、好きな単位を使って生活してくれればいいよ」というものだったのです。この背景には、「計測の自由」にまつわる議論があります。これは「『メートル法を使え』と強制するのは、国民の計測の自由を侵害する行為だ」というもの。

このため、「ヤード・ポンド法」が使える現在の状況は維持するべきだというのです。そしてもうひとつ、切り替えコストの議論もあります。たしかにメートル法での表記を義務付ければ、公的機関はもちろん、民間企業にも膨大なコストを強いることになりますね。

とはいえ、実はアメリカでも、科学の分野や産業の大部分においては、既に「メートル法」が採用されています。アメリカ国内では、わざわざ他国の基準には合わせず「ヤード・ポンド法」を、科学やビジネスの分野では「メートル法」を使う、ある意味ダブルスタンダードな対応が、しばらく続くのかもしれません。

■関連する記念日

「世界計量記念日」:5月20日
「メートル条約」の締結125周年を記念して、2000(平成12)年から実施されている記念日です。英語表記は「World Metrology Day」。

・「計量記念日」:11月1日
1993年11月1日、日本で新「計量法」が施行されたことを記念して制定された記念日です。

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「メートル法」の採用を法制定した、改正「度量衡法」公布から100年あまり。日本ではすっかり定着した「メートル法」ですが、従来の尺貫法のなごりは様々なところでみつけられます。

たとえば、畳の大きさは[910mm×1820mm]、1.6562 m²という半端な大きさですが、尺貫法に直すと、3尺×6尺というとてもキリのよい大きさです。着物も、こちらは鯨尺と呼ばれるものですが、「袖丈1尺3寸(49,24㎝)」などとも表現されますね。今回は「メートル」という単位に焦点をあててみました。いつかビジネス雑談で役立つ日がくるかもしれませんよ。

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