ファッション好きならば、「ブライドルレザー」の存在はご存じだろう。英国で1000年以上の前から続く伝統的な手法でつくられた革だ。牛皮=カウハイドに染色を施し、何か月もかけて蜜ロウをしみ込ませた革で、表面に「ブルーム」と呼ばれるロウが白く浮き出るのが特徴だ。使い込むうちにロウが取れ、美しい光沢が生まれ、味わいを増す。堅牢で、耐久性にも優れている特質は、多くの馬具メーカーが鞍をつくるのに、このブライドルレザーを用いていることからもわかる。
ココマイスター『ジョージブライドル』シリーズ
ブライドルレザーを外側にも内側にも贅沢に使用
2011年創業、日本の職人がつくる革製品を標榜するココマイスターが、ブライドルレザーの革小物をつくるにあたって注目したのは、英国で1900年に創業された名タンナー、J&Eセジュウィック社の原皮。
設立当初から馬具業界に革を提供してきたリーディングカンパニーだ。最高品質の革は熟練した職人の手作業でなめされ、仕上げも手で行う、クラフツマンシップあふれる名門タンナーである。伝統的な手法で皮革をなめすタンナーは英国でも希少で、英国王室や有名騎手などもJ&Eセジュウィック社のブライドルレザーを愛用しているという。
ココマイスターの『ジョージブライドル』シリーズは、表はもちろんのこと、裏にもこのブライドルレザーを贅沢に使った財布や革小物がそろう同ブランドの自信作。硬いブライドルレザーは、財布や革小物などの縫製が非常に難しい。この革を表と裏、両面に使って縫うのは、さらに至難の業だ。
難度の高い縫製に、日本の職人の技が大きな役割を果たす。40〜50年のキャリアを持つ熟練の革職人が裁断から縫製まで、すべて手作業でていねいに製品をつくり上げていく。ブライドルレザーの場合、全工程合わせると、延べ60人以上もの職人の手が加わるという。厚いブライドルレザーを部分的に漉すき、精緻なステッチで縫っていくので、全体として薄く仕上がる。堅牢そのもののブライドルレザーにエレガントな雰囲気が宿り、欧米の革製品に負けない唯一無二の存在感を放つのだ。
マイスターのひとりは「機械ではなく手でつくるからこそ生きるのが、革製品です。革は部位によって、質も張力も異なります。機械ではそれは絶対にわかりません」と、手仕事の重要性を語る。
英国の職人の技法でつくられた最高級の革に敬意を払いながら、日本の職人の技を加えていくことで、新たな価値を持った製品を生み出すことが〝ココマイスター〞の目ざす到達点だ。英国と日本の職人技とセンスを、お互いが競い合うように磨き上げることで、紳士の審美眼にかなう、一級のレザーグッズが生み出されるのだ。
※すべて参考価格です。※2014年春号掲載時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2014年春号 職人の技が息づく 〝ココマイスター〞の極上レザーより
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- クレジット :
- 撮影/唐澤光也(パイルドライバー) 文/小暮昌弘(LOST & FOUND) 構成/菅野悦子