日本各地で、美術館の枠を飛び出したさまざまな芸術祭が注目されるようになったのは、2000年に新潟県で第1回が開催されて現在も続く「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の成功が嚆矢といえるだろう。
芸術祭の総合ディレクター・北川フラム氏は、この成功を受け、その後も「にいがた水と土の芸術祭2009」、「瀬戸内国際芸術祭2010」等に関っていく。
アートを、その開催地に根付かせて表現するのは、もちろん北川氏の専売特許というわけではなく、各地で同様の試みが行われてきた。
世界レベルの写真祭が世界有数の文化都市、京都で開催中
蜷川実花氏も登場、注目の写真家達が勢揃い!
2018年5月13日まで京都市内各地で行われている、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2018も、大枠では、日本各地をアートの枠組みで再発見する試みのひとつといえる。1969年にフランス、プロヴァンス地方の都市、アルルで始まった国際フォトフェスティバルをイメージソースに、共同創設者のルシール・レイボーズ氏と仲西祐介氏が、2013年からスタート。年々、知名度を上げながら今年で6回目を迎える。
今回のテーマワードはUP。様々な社会問題に対してポジティブに向き合おう、という趣旨だという。
会期中には、アソシエイテッドプログラムとして蜷川実花氏ほか4つのエキビジションを含み、合計19の写真展が開催されるが、その展示会場がユニークだ。この写真祭の特徴は、特筆すべき世界中の写真家の作品を、京都に固有の空間を使って、土地の記憶と共に見せていくことにあるからだ。
たとえば、京都市中央卸売市場(第一市場)に廃屋となって残る旧貯氷庫では、世界中の洪水災害を撮影したギデオン・メンデルの作品が展示される。
そのほか、京都固有の長屋作りを展示会場として使用するなどは当然として、京都新聞本社ビルの地下にある印刷工場跡地を使った、ローレン・グリーンフィールドの巨大インスタレーションなど、普段は入れない場所をこの写真祭のために解放している。京都の持つ、今昔様々な文化遺産を、有機的に取り込んでいるのが特徴だ。
世界的文化都市・京都の底力
芸術に理解あるパトロンが成否を分ける
こういった大規模な芸術祭は、主催者の強靭な実現への意志が必要なことはもちろん、各方面との綿密な事前調整が重要なことは論を待たないが、ルネサンスを支えたパトロンの例を持ち出すまでもなく、ビッグプロジェクトを支えるスポンサーが死活的に重要だ。
この写真祭のメイン・スポンサーを務めるBMW、ビー・エム・ダブリュー株式会社の代表取締役社長、ペーター・クロンシュナーブル氏はこう語る。
「日本で最大の文化都市は京都です。このスケールで、これだけの内容の写真祭を行えるのは国際的に見ても、素晴らしいこと。1997年にこの都市で開催されたCOP3で採択された京都議定書も、この都市が、持続可能な街作りを目指していることを象徴しています。
BMWは、過去40年にわたり、世界中で文化支援事業を続けており、その数は常時100以上。日本でも、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭に協賛してきました」
京都国際写真祭へは2016年から協賛していたが、2017~19年まで、メイン・スポンサーとして関わり、支援を惜しまぬと言う。
インタビューが行われたのは、写真祭会場のひとつ、京都文化博物館、別館。1965年まで日本銀行京都支店として使用された、辰野金吾・長野宇平治による明治建築(国の重要文化財)で、それ自体が建築アートである。
ここでは、チャンス、エゴイストなど歴代のシャネル・フレグランスの広告イメージを創り上げてきた稀代のクリエイター、ジャン=ポール・グードの作品を一覧できる。この展示こそ本写真祭の白眉といえるだろう。提供するのはもちろん、BMW。
「ここでは、グレース・ジョーンズを始め、ジャン=ポールがクリエイションのミューズとして愛した、歴代のモデル達が紹介されています。また、会場内ではダンサー達が動き回って、ダンスパフォーマンスで刺激を与えてくれます。これこそ、BMWが求める自由な創造活動。自動車メーカーとして革新を続けることと、画期的な芸術作品の創造には共通点があるのです」(クロンシュナーブル氏)。
また、前述した京都市中央卸売市場ではBMWの高級SUV、X3を素材にしたクラフトカーも作品として展示され、多くの注目を集めている。
このクラフトカーを制作したのは、ハンドメイド商品と、伝統工芸技術を用いた車の外装・内装のオーダーメメイドサービスを手がけるA・STORY。BMWの有力ディーラーとしても知られるマツシマホールディングスの関連会社だ。
今回、作品として出展された、X3のクラフトカーでは、画家の吉田翔氏の手になるペインティングで、ラグジュアリーなモノトーンの世界、雅な世界を表現した。
「現在、日本の自動車市場では、年間約500万台の新車が販売されていますが、そのうち、EV車は1万2000台にとどまりますが年々増加しています。BMWには、i3、i8など、魅力的なEV車のラインナップがありますので、今後は街中でもっとBMWのEVを見られると思います」(同前)。
BMWが持つ、芸術への眼差しは本物だ
新緑の季節こそ京都へ行こう!
BMWでは、写真祭の会期中、各会場を結ぶ巡回シャトルカーとして、アーティストの宮崎いず美とジャン=ポール・グードによるラッピングが施されたi3を提供するなど、単なるスポンサードにとどまらない、作品への関与を示している。
資金の提供にとどまらず、アーティストの自発的な取り組みに対して、有機的に自社製品を宛てられるのは、BMWの車が、そもそもアートに対して親和性が高く、工業製品でありながら創造性の高いオブジェクトでもあるからだ、と言ったら、褒めすぎだろうか。
いずれにせよ、今回の会期は5月13日まで。京都の桜、今年は散るのが早くてがっかりした向きもあろうが、若葉の季節の上洛もまた楽しい。
世界中のアーティストから選りすぐられた、斬新な写真の数々に出合うためにも、ぜひ京都に足を運んで頂きたい。
BMWジャパン 公式サイト
京都国際写真祭