インタビュー_1
ジャケット¥101,200 (TOMORROWLAND<CARUSO>)、シャツ\52,800(OVERCOAT)、パンツ¥57,200(TREMEZZO<TAGLIATORE>)、その他/スタイリスト私物
田中 圭さん
俳優
(たなか・けい)1984年、東京都生まれ。2000年にCMで俳優デビュー。2003年のテレビドラマ『ウォーターボーイズ』で注目される。近年の主な出演作に舞台映画『あの人が消えた』、『劇場版ドクターX』、『私にふさわしいホテル』やドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』『わたしの宝物』、『アンサンブル』、舞台『もしも命が描けたら』、『夏の砂の上』、『Medicine メディスン』など。現在、舞台『陽気な幽霊』に主演・チャールズとして出演中。

うれしさ半分、プレッシャー半分。さて、この膨大なセリフをどうやって覚えるか

――三谷幸喜氏が脚本と監督をつとめ、一度もカメラを止めず「完全ワンシーン・ワンカット」で制作する長編ドラマは、挑戦的で難易度の高い試みとして業界内外で知られています。第一弾は2011年放送の『short cut』、第二弾は2013年の『大空港2013』。そして待望の第三弾である『おい、太宰』が6月29日に放送・配信されます(すべてWOWOW)。

12年ぶりのシリーズ復活を、実は誰よりも待ち望んでいたのが、主演の田中 圭さん。特殊な撮影方法、膨大なセリフ、それでいて高い完成度…。その過程はどのようなものだったのでしょうか。

田中(以下敬称略)「三谷監督の作品には、かつて映画と舞台で出演させていただきましたし、もちろんほかの作品も拝見しています。プライベートでも偶然お会いすることもあり、そこでご挨拶をさせていただいたことも。その際、このシリーズが大好きだということを伝えたら、三谷さんから『オファーしてもいいですか?』と。『ぜひ!』と返事してからしばらくたって今回のお話を聞いたときは、うれしさとプレッシャーが半端じゃなかったです。

台本を読んでみれば、とにかく面白い! ただ、この膨大なセリフをどうやって覚えるのか、大きな課題が立ちはだかりました。もし間違えたら全員がイチからやり直しだし、あたふたした様子は映像に残ってしまいますし…」

インタビュー_2
「予想していなかった状況がたくさんありました」(田中さん)

――その課題をどのように乗り越えたのでしょう?

田中「まず、準備稿(最終的な台本<最終稿>の前段階の台本)を受け取ってすぐ、覚え始めました。特別なやり方はなくて、とにかく何回も読んでひたすら覚えるしかありません。

そこから約1か月後、スタジオでのリハーサルを8日間。出演者の皆さんで本読みをし、三谷さんが演出をして、シーンごとに動きを決めて。どの場所でどう動き、どのセリフを発して、そのときの感情は…それを何度も繰り返す。この練習なしに、このドラマは成り立ちません。

で、本番前の3日間、撮影現場でリハーサル。舞台となったのは伊豆の海岸でしたが、これが室内で想定していたのとは全然違って! 予想していなかった状況がたくさんありました」

汗だくのこちらに対して、津軽弁を繰り出してくる松山ケンイチさん、次は何をやってくるんだろう?

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「演じるほうは、必死でしたけどね。見る方にとって、面白いものになっていればいいなと思います」(田中さん)

――撮影本番で予想していなかった状況とは…たとえば?

田中「シチュエーションが海辺ですから、舞台はその日の潮位によって変わります。昨日は浜辺があって歩けたけど、今日は潮が満ちて浜辺のトンネルが通れない、なんてこともありました。雨天で中止になったこともあったし、晴れていい天気だと思ったら、暑すぎて僕が滝汗をかくし(笑)」

――汗だくの田中さん、そして髪の毛も服もストーリー展開と同時に乱れていく田中さん。どれも本作の見どころになりました。

田中「演じるほうは、必死でしたけどね。見る方にとって、面白いものになっていればいいなと思います。もうひとつ見どころといえば、台本では標準語で書かれている太宰 治のセリフが、松山さんのアイディアで津軽弁になっているところ。しかも、やりながら本番で太宰が突然動きを変えてきたり。次は何をやってくるんだろうと、ヒヤヒヤしていました。でも、セリフも動きも三谷さんの演出どおり。間違えやハプニングも、なかったと思います」

インタビュー_4
「演じるほうは、必死でしたけどね。見る方にとって、面白いものになっていればいいなと思います」(田中さん)

と、終わってみればプロフェッショナルな面々の見事な演技で、息つく暇もない100分ドラマの出来上がり! それは、新たな三谷幸喜ワールドであり、田中圭さん“らしさ”の集大成。やり遂げた今、大変だったことは忘れかけているようで…。

田中「やー頑張った、楽しかった! もうすべてが楽しかった。感想はそれに尽きます。だから、見る方にも楽しんでもらえると信じています!」


ドラマW 三谷幸喜『おい、太宰』はWOWOWにて2025年6月29日午後10時放送・配信。 インタビュー後編にもご期待ください。

WOWOW・ドラマW 三谷幸喜『おい、太宰』

WOWOWにて2025年6月29日午後10時放送・配信

三谷幸喜:脚本と監督で、構想に約10年の月日をかけ、昨年秋にオールロケで撮影された。舞台となるのは、小室夫婦(健作<田中 圭>・美代子<宮澤エマ>)が迷いながらたどり着いたある海岸。そこは、かつて太宰治が心中未遂を起こした場所らしい。太宰ゆかりの地に興奮した健作は、暗い洞窟を進んでいく…。その先にいたのは、太宰治にそっくりな男(松山ケンイチ)! これはタイムスリップなのか、なんなのか。

100分間出ずっぱりの田中圭、太宰の恋人でおちゃめな矢部トミ子を演じた小池栄子、リアルな夫婦のやり取りが見事な宮澤エマ、1人で3役を演じた梶原善、津軽弁でユーモアたっぷりの松山ケンイチ。個性際立つ俳優陣にも注目!

WOWOWにて2025年6月29日午後10時放送・配信

公式サイト

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PHOTO :
高木亜麗
STYLIST :
荒木大輔
HAIR MAKE :
岩根あやの
WRITING :
南 ゆかり