連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、エチオピア生まれで、結婚を機にN.Y.へ移住。NPO「ワンラブ・コミュニティ・フリッジ」を主宰し、N.Y.市内の9つの冷蔵庫に食材を補充し、「誰もが特別な目で見られることなくアクセスできる食材スポットを提供」している、アスメレット・ベルへ=ルマックスさんにインタビュー!

「家族全員で同じ志をもち、地域に貢献できていることも大きな喜びになっている」と話すアスメレットさんに、活動のきっかけや思いなどを詳しくうかがいました。

アスメレット・ベルへ=ルマックスさん
「One Love Community Fridge」創立者・CEO
(Asmeret Berhe-Lumax)エチオピア生まれ。スウェーデンに移住、高校卒業後N.Y.へ。金融業界を経てコロンビア大学の都市計画・建築プログラムに参加、都市再開発の仕事に携わる。その後ストックホルムへ戻り、ファッション業界で働きながら化粧品の通信販売会社も設立。結婚を機に再びN.Y.へ。現在はフリーランスでファッション関係の仕事をしつつ、NPO活動も行う。

【New York】誰もが気兼ねなく利用できる「公共冷蔵庫」で地域に貢献

NPO「One Love Community Fridge」創立者・CEOのアスメレット・ベルへ=ルマックスさん
「One Love Community Fridge」創立者・CEOのアスメレット・ベルへ=ルマックスさん

アスメレットさんが主宰するNPO「ワンラブ・コミュニティ・フリッジ」の活動目的は「誰もが特別な目で見られることなくアクセスできる食材スポットを提供する」こと。現在、N.Y.市内に9つの冷蔵庫を設置しており、毎日、ボランティアスタッフが、それぞれの冷蔵庫に新鮮な食べ物を補充する。

「きっかけはコロナ禍の外出禁止令でした。閉店を余儀なくされたレストランやショップが食材を廃棄するしかない一方で、世間には安全で栄養のある食べ物にアクセスできない人たちがたくさんいる。そこに接点をつくりたかった。最初に注目したのは、子供たちが通う学校周辺です。私はひとりの母親として、公立学校のカフェテリアランチのメニューの悲惨さにも胸を痛めていました。食の不安定さと教育の質の低下が密接に結びついているということに気がついていたのです」

大手食品メーカーの協賛や、アスメレットさんの母国であるスウェーデンのボルボ社からの運搬用車輌提供も受け、「ワンラブ〜」プロジェクトは街に浸透していった。ポップでカラフルな冷蔵庫のデザインも注目を集め、街角を彩る様子を「まるでインスタレーションアートのようだ」と表現する人もいるほど。他の地域の公共冷蔵庫とも連携して、むだなく、効率的に食材を調達、提供する。

「私はエチオピアで生まれ育ちましたが、つねに政府が不安定な状況だったため、追われるように家族でストックホルムに移住しました。高校卒業後にN.Y.へ留学し、ビジネスを学んだのは、移民として苦労した両親の強い希望でもあったんです。健康的な食を安定して得られることは、特権ではなく、すべての人がもつべき権利。それは、『ワンラブ〜』のモットーでもあります」

夫とティーンエイジャーのふたりの娘も活動に積極的に参加。家族全員で同じ志をもち、地域に貢献できていることも大きな喜びになっている。街に思いやりが広がっていく。

◇アスメレットさんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
その日のTo doリストを確認し、エクササイズへ。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたに影響されたことで最善の行動を起こすことができた」 
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
1日ゆっくり読書にふける。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
今は「ワンラブ〜」プロジェクトが大好きなので、さらによくするためにはどうしたらよいかを考えたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
今と変わらずファッション関係の仕事をしながら、コミュニティのためにできることを探し、行動し続けていると思う。
Q. 自分を動物にたとえると?
ラクダ。とても辛抱強く、つねに悠然としているところが似ている。

PHOTO :
Hiroshi Abe
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
Junko Takaku