メゾンの真髄が宿る国際馬術競技大会「ソー・エルメス」。パリの中心でライダーと馬が華麗に舞うこのスポーツの祭典をレポートします!

創業以来、馬と共に歩んできた「エルメス」が主催する「Saut Hermès」が今年もパリで開催されました。その熱気溢れる会場から、メゾンのスピリットとイベントの魅力をたっぷりとお届けします!
躍動する春の風物詩「Saut Hermès」へようこそ!最高峰の障害飛越競技と馬具づくりのルーツを体感できる唯一無二の祭典

毎年3月に、パリで行われる、「エルメス」主催の障害馬術競技大会があります。その名も「ソー・エルメス」。フランス語で「ソー」は「飛躍する、ジャンプする」という意味をもち、馬とライダーが一体となり障害物を華麗に飛び越える瞬間を目の前で体感できる、感動に満ちた国際大会です。
2025年で通算15回目を迎えた「ソー・エルメス」は、3月21〜23日の週末にかけて3日間にわたり開催されました。今年は、大規模な改修を経た「グラン・パレ」に戻ってきた、記念すべき節目の大会となりました。パリ8区のシャンゼリゼ通り沿いに位置する「グラン・パレ」で大会を行うのも「ソー・エルメス」ならではの大きな魅力です。郊外ではなく、かつては馬と共に暮らすのが日常だったパリの中心地で競技を開催することにも、「エルメス」の信念が息づいているのです。

「ソー・エルメス」は、障害飛越競技の最高レベル「CSI 5*(ファイブスター)」と称される国際大会。世界のトップライダーたちによって繰り広げられる馬術と、緊張感溢れるハイレベルなコンペティションを間近で楽しむことができます。それだけでなく、遊び心というエスプリも忘れていません。エンターテインメントも充実し、馬具職人によるデモンストレーションや、バーチャル乗馬を楽しめるアトラクション、馬にまつわる書籍を集めたブックショップなど、多彩なブースが広がり、訪れる人を夢中にさせます。
実際に訪れたレポートやパートナーライダーのカレン・ポーリーさんのインタビューを交えながら、1837年の創業以来、馬と馬具製作に情熱を注ぎ続けてきたメゾンの美学とフィロソフィを体感できる「ソー・エルメス」の見どころをご紹介します。
at the Grand Palais「グラン・パレ」の会場で馬とライダーが華麗に競う

自然光が降り注ぐアール・ヌーヴォー様式の会場に、砂などを敷き詰めた馬場が出現。障害飛越競技では、設置された障害物を順番どおりに飛越し、高さやスピードを競います。
ユニークなデザインの障害物


左/本番前のコースウォーク、右/表情豊かな馬が魅了


ジャンパオロ・パニ作『ガルド・ローブ・ポップ』の巨大パネル

Beyond the Competition|障害飛越競技の初心者でも満喫できる!好奇心を刺激する多彩なブースが広がる

会場には、馬と馬具の世界に触れられるブースが並び、メゾンのスピリットを五感で感じられる、特別な体験の場に。
馬具職人の実演



「ソー・エルメス」限定アイテム
心ときめかずにはいられない、エクスクルーシブなアイテムも充実。


乗馬のバーチャル体験

馬の模型にまたがって乗馬を体験するVR(バーチャル・リアリティ)のコーナーも。実際の馬に近いサイズの模型にまたがり、「エルメス」の鞍の乗り心地をリアルに体験。VRの映像は「フォーブル・サントノーレ店」や「グラン・パレ」が舞台となり、没入感たっぷり!
【Programs】


【Special Interview】「エルメス」のパートナーライダー カレン・ポーリーさんに特別インタビュー!「ソー・エルメス」の魅力から、愛する馬との毎日、馬術競技への想いまで…

「エルメス」の馬具を使う、競技選手のカレンさんに「ソー・エルメス」の魅力をうかがいました。
「ソー・エルメス」は唯一無二の国際馬術競技大会です

7歳から乗馬を始め、国際的な障害飛越競技大会で活躍するカレン・ポーリーさん。その実力はもちろん、周囲を明るく照らすチャーミングな人柄も大きな魅力です。そんなカレンさんに、「ソー・エルメス」の楽しみ方や「エルメス」の鞍の乗り心地といったプロフェッショナルな視点から、馬との絆の結び方といったパーソナルな面まで、じっくりお話をうかがいました。
「パリの『グラン・パレ』で開催される、『ソー・エルメス』は舞台設定も美しく、細部まで行き届いた管理体制も見事で、世界で最も素晴らしい障害飛越競技のイベントといえます。競技の基本ルールは、決められた順番で障害を飛び越え、その正確さとタイムを競うというシンプルなもの。
コースデザインは、毎回異なり、競技の15分前にライダーだけが下見を許されます。自分の馬の歩幅やクセを把握したうえで、ターンの位置を頭に描きながら、最適なコース運びの組み立てを。そして、それを言葉ではなく、手や脚の細かな動きで馬に伝え、本番では一体となり、障害を飛び越えていくのです。こうした馬とライダーとの繊細なコミュニケーションに注目すれば、競技観戦がぐっと楽しく感じられるはずです」
愛馬のセリーヌは親友でありかけがえのないチームメイト

特別な存在である愛馬について語るカレンさんの表情は終始にこやかで、そこには深い愛情が感じられます。
「大会を共にするパートナーの馬、セリーヌと出合ったのは6年前。それからの日々は、練習や大会、厩舎でのケアに至るまで、かけがえのない瞬間の積み重ねです。馬は感性が豊かだからこそ、人と強い信頼関係を築くことができます。ただ、言葉でのやりとりができないぶん、なにより大切なのは、共に過ごす時間。毎日寄り添うなかで、馬も少しずつ、人の心を理解してくれるようになるのです。
セリーヌと出合って以来、「エルメス」の『ヴィヴァーチェ』という鞍を使い続けていますが、これもセリーヌとの距離を縮めてくれる大切な存在です。ライダーと馬、それぞれの体に合わせて細やかに寸法を計測し、よけいな厚みを削ぎ落としたミニマルな鞍の構造が、まるでセリーヌと一体になるようなフィット感を叶えてくれます」
目標は「ソー・エルメス」での優勝と「オリンピック」への出場!

2017年に、アジア人初の「エルメス」のパートナーライダーに選ばれたときを「これ以上ないほどの光栄だった」と振り返るカレンさん。つねに前を向いて努力を重ねるカレンさんに次なる夢を尋ねると―。
「セリーヌとは波長が合うので、彼女と一緒なら、どんなに高い目標でも叶えられる気がしています。『ソー・エルメス』の大会で優勝するのも、そのひとつ。そして最大の夢は、『オリンピック』に出場することです。
障害飛越競技は、ミリ単位の微差が勝敗を分ける世界。だからこそ、日々の反復練習や私とセリーヌの健康管理やメンテナンスといった、小さな積み重ねが未来をつくると信じています。成績を残すことはもちろんですが、それ以上に、この競技の魅力でもある、馬と心を通わせながら跳躍する感動を、ひとりでも多くの人に伝えていきたいと思っています」
【Q&A】
Q1:ラッキージンクスは?
「ライディングジャケットやサドルパッド、馬のイヤーネットをブラウンで統一すること!」
Q2:欠かせない持ち物は?
「新潟・彌彦(やひこ)神社のお守りを大切にしています」
Q3:ルーティーン食は?
「験担ぎに食べるのは鮭ご飯で、ときにチョコレートも」
Q4:セリーヌの好物は?
「バナナです。おやつにあげるとうれしそうに食べます」
Q5:大会前のセリーヌへの掛け声は?
「『We can and we will!』というようなポジティブな言葉を投げかけます」
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- PHOTO :
- 篠あゆみ、YOKO TAKAHASHI
- EDIT&WRITING :
- 川口夏希