『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。
前回までは、松田元太さん主演のドラマ『人事の人見』(フジテレビ系・毎週火曜21:00~)に出演する鈴木保奈美さんのキャリアスタイルをチェックしてきましたが、6月17日(火)にいよいよ最終回を迎えます。そこで、撮影現場にお邪魔してお二人にいろいろなお話を伺いました。
「美和プレッピー」の裏テーマは、“JK気分が抜けない年増”…!?

──今日は最終回の1話前、第10話の撮影現場にお邪魔しておりますが、保奈美さんの衣装のジャケットは左の腕に入った4本のラインが印象的ですね!
犬走比佐乃さん(以下、犬走):全話の多くで使用させていただいている「トム ブラウン」のトータルコーディネートです。ジャケットは「4BARのストライプ」と呼ばれる左の腕の4本のラインや、トリコロールの「グログラントリム」といったメゾンのシグネチャーがあしらわれていて、まさに「トム ブラウン」を体現するデザイン。最終回を前に振り返ってみると、ひとつのドラマでこれだけ同じメゾンのアイテムを使うというのは珍しいですよね。
鈴木保奈美さん(以下、鈴木):今回の『人事の人見』で私が演じる美和が登場するのは、基本的にオフィスでのシーン。なのである意味制服のように。全話を通してなるべく同じイメージでいたほうがいいかなということを犬走さんとご相談させていただきました。
犬走:最初に保奈美さんからいただいたお題が──
鈴木:お題(笑)
犬走:保奈美さんがとあるブティックでお見かけした女性の、「プリーツスカートに白シャツ、グレーのカーディガン」というコーディネート。そういうイメージもありだよね! というお話からスタートしたんですよね。

鈴木:いわゆる普通のオフィススタイルとは少し変えたくて、「膝下のプリーツスカート」というスタイルが、なんとなくイメージとしてありました。今回の役どころが、それこそ『Precious』に出てくるような「ラグジュアリーなキャリアウーマン」という感じとは違うけれど、企業の部長という立場で年齢的にも落ち着いているというキャラクターなので。かつ、女性の役員が少ない会社なので、女性性を出しすぎず、だけど男勝りという感じでもなくやってきた人──そういういくつかの要素を満たすにはどういうのがいいだろう? そんなことを考えつつ、ブティックのウインドウ見ながら街を歩いているときに、イメージに近いスタイルの女性をお見かけしたんです。
──それが犬走さんと保奈美さんでつくりあげた「美和プレッピー」の原点に?
鈴木:実は私は、ひとつの役をいただいたときに自分で勝手に「見出し」をつけているのですが(笑)。今回の美和さんには、“JK気分が抜けない年増”という見出しをつけました(笑)
衣装への取り組みに対する「流儀」と「美学」
──『Precious』では保奈美さんが幸村チカ役を演じた『SUITS』(2018年)、『SUITS2』(2020年)もたくさん取り上げさせていただきました。もちろん、チカと美和とではキャラクターもスタイルもまったく異なりますが、衣装を決めるアプローチの仕方も違うのでしょうか?
犬走:ドラマなど何か作品が始まる前は衣装に関して必ず打ち合わせはしますが、『SUITS』のときは結構しっかりと話し合って、確か食事しながら相談しましたよね?
鈴木:そうでしたね。『SUITS』はオリジナルの作品が、ファッションという部分でもかっこよく話題にもなっていたので、いかにオリジナルの世界観の雰囲気を出すか? でも、オリジナル作品のジェシカを演じるジーナ・トーレスさんと私とではあきらかに体型が違うわけで、それでも迫力を出すにはどうしたらいいだろうかというご相談から始まったと思います。
犬走:とにかくファッションがポイントだよね、ということで私なりに色々調べたり考えたりして、シャツやブラウスにタイトスカートでメリハリのある女性らしいシルエットをつくる、チカのスタイルをつくりあげていきました。

鈴木:上半身は華というか、何かディテールがあるブラウスが多かったですよね?
犬走:そう、それに必ずジュエリーもあしらって。そうやって役ごとに、自分なりにコードをつくっているのですが、そうすると選ぶ際にジャッジしやすくなるんですよ。でもそれが逆に自分で自分の首を絞めることになる場合もあるのだけれど(笑)。

──保奈美さんと犬走さんの間で、衣装への取り組みに関する流儀や美学のようなものが共有されているように感じますがいかがでしょうか?
犬走:私は、例えばある作品の衣装がとても好評をいただいたとしても、同じようなことは絶対にしたくないんですね。二番煎じというのは前を超えることはないと思っているので。だから衣装を通して、どんどん違う人物像を、保奈美さんや監督とつくりあげていきたいなって思います。保奈美さんもきっと同じお気持ちですよね?
鈴木:そうですね、毎回違う役をいただき演じる上で、やはり衣装で助けられる部分がかなりあると思います。
初めて手がけたスタイリングは、伝説の「ハマトラ」!
犬走:思えば本当に長いお付き合いになりましたけれど、初めてお仕事をご一緒したのは確か雑誌の『JJ』でしたよね? もう30年以上前、「保奈美さんの好きなアイテム」みたいなテーマで、紺ブレとダブルモンクとか、「ミハマ」の靴などが出てきて、きっとそれが最初だったと思います。
鈴木:「ハマトラ」だー(笑)! 実はあまり記憶にないのですが、そうだったような気がします。

犬走:私は保奈美さんのことは、もちろんテレビで見て知っていて、「あ、この方なら私、スタイリングできるな」と思ったんです。
鈴木:えー! そうなんですね! 初耳です(笑)。
犬走:そのとき、膝が出る丈の短いスカートを履いていらして、「違う!」と思ったんです(笑)。
鈴木:「私ならそれは履かせない!」と(笑)。

犬走:そこからしばらく雑誌のお仕事をご一緒して、やがてドラマなどの映像関係や舞台も担当させていただくようになったのですが、こうして振り返ってみるとさまざまな作品を通して私自身もたくさん勉強させてもらいました。1週間ほどニューヨークへロケに旅立つ前日くらいまで脚本が上がらず衣装も決められなかった『古畑任三郎』(1996年)とか、ヒヤヒヤする思い出もいっぱい(笑)。
鈴木:そうでしたね(笑)。でも初期の頃は、私はそこまで衣装に関しては考えていなかったような気がします。だから犬走さんに頼らせていただく部分がきっと多かったでしょうね。
今回は、ドラマ『人事の人見』最終回を間近に控えたタイミングで、保奈美さんと犬走さんの対談をお届けしました。興味深いお二人のお話しはまだまだ続きます。後編もお楽しみに!
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 高橋 葉
- WRITING :
- 岡村佳代
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)