なんてクリエイティブ!「カクテル」は進化する
マティーニ、マルガリータ、ダイキリ、マンハッタン…etc.プレシャス世代がお酒を覚え始めたあの頃の「カクテル」のイメージを大きく覆す、自由で、クリエイティブで、ラグジュアリーで美しいカクテルたち。今、カクテルが最高におもしろい!
お酒を飲む人も飲まない人も、ひとりでも女友達とでも。今宵はバーで「カクテル」を楽しんでみてはいかが。

『バーは会話を美しくする』文・くどうれいん
バーのカウンターに座るとき、いつも緊張する。身長の低いわたしはハイチェアに座るだけで浮遊しているような心地がしてしまう。目の前に色とりどりのお酒の瓶が並んでいて、カウンターに座れば背後に空間が広がっている。その背後の空間に視線が集まっているような気が、どうしてもしてしまう。背筋が丸まってちっとも凛としていないわたしの後ろ姿が、どうかこの場所を損なうものになりませんようにと祈るように、いつもよりも背筋をしゃんとさせる。カクテルを飲んでうっとりと酔ってしまえば解ける緊張だとわかっていても、せめて飲むまではできるだけかっこよくそこに座っていたい。
バーテンダーの手元はいつ見ても機敏で、マジシャンのように見える日と、侍のように見える日とある。メニューを何度開いても、どの名前で何色のお酒が出てくるのかちっともわからない。知っているのはギムレット、マティーニ、サイドカーくらいで、あとは知らない映画の名作タイトルを読んでいるような気分になる。
カクテルに詳しい人と話すのは、自分の知らない映画をたくさん知っている人と話すのと似ている。知性らしきものに惚れ惚れするか、あるいは妙なうさん臭さに気が付いてしまうか。とにかくその相手がわたしをそこへ連れて行こうと思ってくれたことをできるだけ尊重して、その人の振舞いたいように振舞うところを見たい。
果物が好きなので、黒板に自分の好きな果物の名前があれば大抵それを使ったものを頼む。甘いのがあまり得意でなくて、と伝えるとき、生意気かもしれないなと思うのだけれど、シロップのように甘いのは苦手だ。
目の前でカクテルが出来上がるのを眺めながら、なんの会話をしているだろう。カクテルを待ちながらする会話にあまり意味があったことがない。意味がない会話を美しくするためにバーにいるような気もする。
果物を切ったり、絞ったり、潰したりするときの香りが漂ってくるのが好きだ。いずれすべて朽ちる人間と果物の一瞬の香しさを歓迎したい。
わたしは浮遊する椅子に座りながら、果たしてこの人生でこの椅子に座り慣れる日が来るのだろうかと考える。この椅子に座ると自分の拙さがわかって、それがむず痒くうれしい。横にいるあなたがわたしの拙さにどうか気付きませんように。気付いてもたのしくそれを暴きますように。
東京・麻布台のホテル「ジャヌ東京」5階にあるシグネチャーバー「ジャヌ バー」の最新カクテルにフィーチャー!

シャンパンベースにハニー、パイナップルなどをブレンド。銀座のビル屋上で養蜂した “銀座はちみつ” を使った蜂の巣形クッキーを添えて。

下町・根津は藪蕎麦発祥の地。蕎麦に欠かせない七味を主役にしたカクテルは、メスカルに山椒ジン、黒七味シロップなどをシェイクしたスパイシーな一杯。

伝説的喫茶店の名物メニューをヒントに、ヨーグルトやコニャック、メロンなどをブレンドしシャンパンで仕上げ、バニラアイスを。大人のクリームソーダ。
【詳細情報】シグネチャーバー「ジャヌ バー」
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ジャヌ バー
住所/東京都港区麻布台1-2-2 ジャヌ東京5F
TEL/050-1809-5550(レストラン予約) - 時間/17:00〜24:00
- 無休、チャージ料なし、価格は税・サービス料込み
※掲載の価格は、すべて税込みです。別途、チャージ料金やサービス税などがかかる場合があります。
※メニューは季節によって替わる場合があります。5月15日現在の情報ですので、詳細は公式サイト等でご確認ください。
- PHOTO :
- 篠原宏明
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、 佐藤友貴絵(Precious)