CMも教育番組もゲームもアニメも映画も数学も!佐藤雅彦の作品群から「創作」について考える

数々の名作を生み出してきた稀代の表現者・教育者、佐藤雅彦の創作活動を辿る、世界初の大規模個展が開催中です。サブタイトルは「新しい×(作り方+分かり方)」。それってどういうこと? から始まる、独創的なデザインの世界へ!

展覧会の見どころについて、本連載担当ライターの剣持亜弥がナビゲートします。

Navigator:剣持亜弥
ライター、編集者。美術、本・マンガ、サブカルチャー、ネットまわりを中心に、人の話を聞いては書く仕事をしている。日本美術の名品を楽しくわかりやすく紹介した『ドラえもんと学ぶ日本美術超入門』(小学館)でライティングを担当。

【今月のオススメ】横浜美術館リニューアルオープン記念展『佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)』

横浜美術館リニューアルオープン記念展『佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)』
ピタゴラ装置(NHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供/横浜美術館

記憶に残るテレビ番組やCM、キャラクターから、物理学や認知科学の研究から生まれた知的好奇心を刺激する映像作品、メディアアートまで。「伝える」ためのあらゆる方法論を、さまざまな形で提示する展覧会。会場にはもちろん「ピタゴラ装置」も! 装置に使われている小物のほとんどが佐藤が長年収集していた私物だったことにも驚く。


「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「スコーン」「ポリンキー」「0655/2355」…文字で見ただけで音声や映像が頭に浮かびますよね? 多くの人が一度は見たこと、聞いたことがあるこれらのCMや作品は、すべて佐藤雅彦というひとりの表現者・教育者が生み出したものです。その佐藤の、美術館では初となる大規模個展。これが今めちゃくちゃ話題になっています。

大人も子供も業界人も学生さんも、幅広い年代の多様な人たちが、会場である横浜美術館に足を運んでいるのです。なぜか? それは、単なる「佐藤雅彦全仕事」的な、「時代を象徴する広告作品はどのように作られたか」だけでなく、まさに今を、未来を生きる人々に刺激を与えるんだという、前のめりなアプローチの展覧会だから。

佐藤は開幕にあたって「“もの” を作りたいというよりは、“作り方を作る” がやりたかった。“作り方” が新しければ、自ずとできたものは新しくなる」と言っています。「作る」手前の、「作り方の作り方」を見てほしいんだ、と。

それは、目的地まで最短最速で辿りつくための方法論ばかりが礼賛される現代にあって、更地に手ぶらで立つところから始めてみようよ、という、晴れやかでわくわくするような誘い。佐藤は自身の創作を「コミュニケーションデザイン」と称していますが、それはきっと、「どうしたら伝えることができるか」「どうしたら分かってもらえるか」を考え続けること。たっぷり時間をかけて観た後には、きっと、新しい世界が見えてくるはずです。(文・剣持亜弥)


◇Information:『佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)』

横浜美術館リニューアルオープン記念展として開催。佐藤が40年にわたり表現者・教育者として世に送り出してきたコンテンツを一堂に。体験展示も複数あり、世代を超えて楽しめる。

会場:横浜美術館
会期:開催中〜11月3日まで

問い合わせ先

横浜美術館

TEL:045-221-0300

文 :
剣持亜弥
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