日本における二輪ユーザーの平均年齢は、50歳を超えるという。この世代は、70年代の大型バイクブームや80年代のレーサーレプリカブームを肌で感じながら育っただけに、年齢を重ねても(体力がある限り)、二輪への情熱が冷めることはないだろう。問題はその後に続く30〜40代だが、都会における駐輪場不足や高速道路の通行料金の高さなど、より身近に二輪を楽しめる環境が整わない限り、彼らの心を射とめるのは難しい。そんな厳しい状況でも、メーカーは乗りやすく高効率で、デザインに奥深さを秘めたモデルの開発に余念がない。そこで、今年3月に開催された、年に一度の二輪総合展示会「東京モーターサイクルショー2018」から、所有欲をくすぐるモデルを厳選してご紹介。ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏がナビゲートする。

構造はシンプルだけど新しさもある!

 二輪は男心をくすぐるアイテムだ。バイカーズファッションはメンズ、レディースともに、すたれることはないし、海外ではバイカーズカフェが続々出現している。

 そして二輪といえば、フレームの中央にエンジンとギアとタンクを置き、両端に車輪を配したシンプルきわまりないデザイン。

 それでいながら、新しさもちゃんとある。東京ビッグサイトで開催された「東京モーターサイクルショー2018」には、内外の魅力的なモデルが勢揃いした。

 そのなかから「これはいい!」と感心させられた5台を選び出してみた。

トライアンフ・ボネビル ボバー

 英トライアンフはレーサーから、1950年代を彷彿させるライフスタイルモデルまで、幅広いラインナップを持つ。当時Bobberと呼ばれたネイキッドスタイルを現代に活かしたのが、伝統的なスタンダードモデルのT120をベースにしながら、ファクトリーカスタムふうに仕上げた「ボネビル・ボバー」。シングルシートパン、ワイヤホイール、フラットハンドルバーなどで雰囲気を出したモデルとして注目だ。

 1200cc水冷並列2気筒エンジンはT120に対して出力を落とすいっぽうでトルクを増大。106Nm@4000rpmと力たっぷり。158万5000円。

ドゥカティ・スクランブラー カフェレーサー

 レースでも高成績をおさめるいっぽう、近年「スクランブラー」でライフスタイルプロダクトに力を入れる伊ドゥカティ。このモデルは「60年代ロンドンのロッカースタイルを彷彿させるもの」とメーカー自身が謳っている。

 ティアドロップ型タンク、太い排気管、先端にミラーを装着したハンドルバーなどで、昔風の雰囲気を盛り込んでいる。

 803ccの「Lツイン」2気筒エンジンは54kW(73ps)を発生。よく見るとフレームなどは最新の設計で、本質である「走り」が追究されている。135万4000円。

モトグッツィ・V7 III ミラノ

 イタリアのロンバルディア州で1921年にスタートしたモトグッツィ。第一次大戦時に徴兵され空軍で知り合った3人が創業したメーカーだ。

 90度のバンク角を持つ縦置きV型2気筒エンジンが代名詞。俳優のユワン・マクレガーも、自身のモトグッツィ・V7とともに英国の雑誌によく登場していた。

 最新のモトグッツィ「V7 Ⅲミラノ」は744ccのV7 Ⅲスペシャルがベース。特徴はややレトロスペクティブな感覚を盛り込んだところにある。エグゾーストシステムなどにクロームパーツを多くするとともにデュアルメーターを採用する。114.8万円。

ベスパ・セイジョルニ

 日本で最も有名なイタリア製二輪車といえばベスパだろう。1946年に航空技術を応用した軽量かつ堅牢なモノコックボディでデビューしたスクーター。国民の足ともいえる存在で、「ローマの休日」をはじめ数多くの映画に登場。ベスパを持ったことのないイタリア人はいないとまで言われるほど。

「セイジョルニ」(Sei Giorni)は限定発売されるニューモデル。特徴は、ちょっとクラシックなレーサースタイルにある。イメージのベースは、1951年に「Sei Giorni Internazionale」レースで、ピアッジオ・スクアドラ・コルセが走らせたレーシングモデル。レースで走った車両を思わせるブラックナンバープレートをはじめ、フェンダーマウントのヘッドランプや半円形メーターが魅力的だ。

 21馬力の278cc単気筒エンジンを搭載し、ABSも装備と、じつは走りは現代のスク−ターとしては最先端。79万8000円。

ヤマハ・TY-E

 二輪の世界も脱化石燃料へと向かいつつある(ゆるやかだけれど)。その嚆矢ともいえるヤマハの電動トライアルバイクがこれだ。カーボンファイバーのフレームに電気モーターとリチウムイオン電池搭載(ともに出力は未公表)。電動なのでトルクがたっぷりあり、オフロードとの相性もよさそうだ。

 2018年の2018FIMトライアル世界選手権 TRIAL Eクラスへの参戦も同時に発表された。おとなの趣味として、こんな製品でトライアルを楽しみたくなるではないか。

 現時点で一般向けの販売計画は発表されていない。

 いかがだろう。交通量の少ない時間帯や涼しい季節に走れば、クルマでは到底味わえない爽快感に魅了されるはず。そして若かりし日に、魔墓呂死の仁さん(「狂い咲きサンダーロード」)やマックスターン(「マッドマックス」)に憧れた文化系シニアにも、二輪業界は最新モデルで暖かく迎えてくれるのだ。

問い合わせ先

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
TAGS: