25年前に発表された村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』をベースに、オリジナル設定を加え、現代につながる物語として生まれ変わったのが、映画『アフター・ザ・クエイク』。作中では、岡田将生さんが主演を務める1995年のパートのほかに、時代を超えた3つのストーリーが描かれていきます。

俳優の岡田将生さん
俳優の岡田将生さん
岡田将生さん
俳優
(おかだ まさき)1989 年生まれ、東京都出身。2006 年デビュー。近年の主な映画出演作は、第 94 回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』(21年)、『1秒先の彼』(23年)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(23年)、『ゴールド・ボーイ』(24年)、『ラストマイル』(24年)、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(24年)、『ゆきてかへらぬ』(25年)などがある。また、11月21日に細田守監督最新作『果てしなきスカーレット』が公開。初出演となる韓国製作ドラマ Disney+オリジナル韓国ドラマ『殺し屋たちの店』シーズン2の配信も控える。

もっと社会に関心をもって、俳優としての仕事を全うしたい

──『アフター・ザ・クエイク』は、阪神・淡路大震災、東日本大震災、コロナと、混乱を帯びた時代と現代が、4つの物語として連なっていますが、全編をご覧になった感想を教えてください。

「僕が演じた1995年の部分も、ひとつのテーマとしては成り立っていたけれど、そこは始まりであって。人々が絆を求め、傷つきながら、でも必死に生きていく姿が、こういうふうに現代にまで地続きにつながっていくのかという、新たな気づきがありました。僕には、人々がこれからどう生きていったらいいのかという希望が感じられて、好きな映画になりましたね」

──原作自体は25年前の作品ですが、今にも通ずるテーマというか、未来への不安みたいなものをみんなが抱えている時代に、この映画が世に出る意味はあると思います。

「世の中で起きた大きな出来事を風化させてはいけないですし、50年後、100年後も残していきたい作品に関われるのはうれしいです。ただ、そのぶん、きちんと責任をもってこの仕事を全うしないといけないという気持ちも出てきました。こういった作品に携わると、日本で起きていることにすごく関心をもつようになりますし、自分が社会で生きていくにはどうしたらいいのかを考えます。特に映画はこの先も残っていくものなので、自分の人生を含めて、社会のことをもっと豊かにしていきたいなと感じます」

──この作品を通して、よりその意識は強くなったのでしょうか。

「そうですね、強く思いました。なんだか30代に入ってから、こういう気持ちになってきたというか、ちょっとだけ大人の階段を上ったのかな(笑)」

「ちょっとだけ大人の階段を上ったのかな(笑)」(岡田さん)
「ちょっとだけ大人の階段を上ったのかな(笑)」(岡田さん)

―─ちなみに、岡田さんはどうやって出演する作品を選ばれるんですか?

「今の社会的な問題を扱っている作品には、出たいという気持ちがあります。『アフター・ザ・クエイク』も、作品として世に残しておきたい、出来事を風化させてはいけないという思いで引き受けました。そのほかには、脚本を大切にしています。今回はプロデューサーさんと脚本家さんが、以前出演した映画『ドライブ・マイ・カー』と同じだったこともあり、知っている方とのつながりは大切にしたかったこともあります。人と人のつながりは、またどこかにつながっていくと思うので。」

―─いつも、脚本を読まれて作品を決めているんですか?

「基本的にそうですね」

人生は何が起きるかわからない。だから必死に1分1秒を生きなくては

―─ところで急な質問ですが、この作品の要所要所に「明日何が起こるかは、誰にもわからない」といった表現が出てきます。

「はい、そうですね」

――もしそうなったら、岡田さんは、何をされますか?

「え⁉︎ どういう意味ですか?」

──映画のストーリーになぞらえるなら、もし明日、大地震が起きたり、宇宙人に連れて行かれることがわかっていたら、岡田さんはどうするかという意味で。

「そういうことか。……いや、それは……家に帰ります」

――笑。

「とりあえず、家族といますね」

「とりあえず、家族といます」(岡田さん)
「とりあえず、家族といます」(岡田さん)

──ですよね。インタビューに答えている場合ではないですもんね。

「でも今の質問も、この映画もですけど、それは本当にそうなんですよね。人生、1時間後に何が起きるかわからない。だから面白い部分もありますし、やっぱり必死に、1分1秒生きなければいけないなっていうのは、思いますね」

──そういう強い思いは、常にあるんですか?

「いや、言葉にこそすれど、普段はもっとのんびりしてますよ(笑)。でも1日をどう生きようかというのは、朝起きてから、すごく考えるようにはなりました」

作品を通して、僕たちの映画に対する思いも感じてもらえたら

──先ほど、この映画には希望が感じられるとおっしゃっていましたが、観てくださる方に、どんなことを感じてほしいですか?

「この映画に関しては、さまざまな感じ方があると思います。ものすごいエンターテインメント作品かといわれると、そんなこともありません。だけど、こういう作品は残していかなければいけないし、そこには知ってほしい事実がある。その時代に生きてきた人たちの、当時だからこその悲しみや苦しみが、現代へ紡がれていくように作品は描かれているので、その流れを感じてもらえたら、明日への希望が見出せるのではないでしょうか。こういう作品こそ、映画館で見てほしいですね」

「こういう作品こそ、映画館で見てほしい」(岡田さん)

「劇中に出てくる小村が運ぶ箱も、撮影中に『この箱は映画館のハコなんだ』みたいな話を、よくしていました。そして中には何が詰まっているのかというと、僕たちの映画への気持ちで…って、それはすごく素敵なストーリーだなという思いがあって。こちらの勝手な解釈ですけど。でもあの箱には、そういった気持ちも込められるんじゃないかと思うので、そんなことも感じてもらえたら、うれしいなと思うんです」


映画『アフター・ザ・クエイク』 10月3日全国ロードショー!

(C)2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ

本作は、ギャラクシー賞を受賞したNHKドラマ『地震のあとで』(2025年4月)と物語を共有しつつ、新しいシーンを加えた1本の映画として再構成されたものです。

■出演:岡田将生 鳴海 唯 渡辺大知/佐藤浩市
監督:井上 剛 脚本:大江崇允 音楽:大友良英
原作:村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)より
製作:キアロスクロ、NHK、NHKエンタープライズ 制作会社:キアロスクロ
配給・宣伝:ビターズ・エンド
10月3日(金)より、テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショー。

公式ホームページ公式X

衣装協力:ザ・リラクス

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取材・文 :
湯口かおり