金、銀、鉄、鉛…古代から人間を魅了する「メタル」がもつ多彩な魅力に触れたい
絵画や彫刻といった「手法」ではなく、メタルという「素材」にフォーカス。ガラスブロックに囲まれた美しい空間と作品が響き合う展示には、理屈や理解を超えた、思わぬ感動が待っているかもしれません。
美術ライターの浦島茂世さんに展覧会の見どころを紹介していただきました。
【今月のオススメ】「メタル」展
メタル音楽を記号論的に解釈するエロディ・ルスール、日本古来の朱と水銀を媒介に内的宇宙と外的象徴を創造する映画監督の遠藤麻衣子、鉄球としての地球に人間活動を重ね合わせ、廃材を用いた作品をつくる榎忠。「メタル」をテーマに、音楽、映像、造形の側面から3名のアーティストたちが金属を読み解き、再考する。
現代アートの展覧会というと、たいていは長めのサブタイトルがついているものですが、本展はズバリひとこと「メタル」展。それだけでもう気になります。参加アーティストは3人。そこに榎忠の名を見つけて、ますます興味がひかれます。
榎といえば、1970年代に体毛を半身剃り落として、当時は共産国だったハンガリーに入国するという《ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く》や、女装してバーの店主となった《Bar Rose Chu》といった、前衛的なパフォーマンスアートを展開した伝説的なアーティスト。しかも金型職人との兼業を貫いた、筋金入りのメタルな人です。鋼鉄を加工した作品が、銀座メゾンエルメス ル・フォーラムの、建築家レンゾ・ピアノによるガラスブロックを使った展示空間とどう響き合うのか。想像するだけでもわくわくしました。
加えて、近年注目を集めている映画監督の遠藤麻衣子、そして「他のアーティストによる音楽関連のインスタレーションをモチーフとしたハイパーリアリズム絵画とロック音楽文化特有の記号や符号などを分解、変容、再解釈した作品群という、二つの異なりながらも補完し合う要素によって構成」(リリースより)されているという何やら手強そうなエロディ・ルスールの作品が並ぶというグループ展。こういう場合、私はとにかく足を運んで、空間に身をおき、解説などは見ずに作品を眺め、何周かします。そのうちに「きれいだな」「おもしろいな」「好きだな」という気持ちが立ち上ってくる。その瞬間がとても楽しいのです。(談)
<information>「メタル」展
エルメス財団は自然素材と職人の手業に関するプログラム「スキル・アカデミー」の一環で書籍を出版。本展はその3冊目となる『Savoir & Faire 金属』の刊行記念として開催。
会期/開催中〜2026年1月31日まで
会場/銀座メゾンエルメス ル・フォーラム
問い合わせ先
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- EDIT :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)

















