印象派=屋外の風景、ではなかった!? 19世紀を思いながら鑑賞する斬新な印象派展
印象派=モネの「睡蓮」、移ろう光…など、屋外の風景画が多いイメージですが、実は室内画にも魅力的な作品が。急速に近代化が進む19世紀のパリで、新たな美術の潮流を生み出そうとしていた印象派にとって、「現代的な都市生活」もまた重要なテーマだったのです。ユニークな「印象派展」が好奇心を刺激します!
美術ジャーナリストの藤原えりみさんに展覧会の見どころを教えていただきました。
【今月のオススメ】オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語
「印象派の殿堂」と呼ばれるパリ・オルセー美術館から、日本初公開作品を含む約70点が来日。「室内」をテーマに、「戸外の光」だけではない、印象派のもうひとつの魅力を紹介する。エドゥアール・マネやクロード・モネ、ギュスターヴ・カイユボットらが、クライアントの私邸の室内の壁面装飾のために制作した作品も少なくなく、意外な作品に出合える。国内外の作品も加え約100点が展示される、見応えのある展覧会。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》
当時、アップライトピアノは裕福さと文化的な生活の象徴で、中流階級以上の子女の嗜みだった。温かい色調と柔らかな筆致の傑作で、フランス国家の買い上げに。
エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》
縦2メートルの大画面に描かれているのはドガの叔母一家。喪服姿の叔母と娘たちのコントラストが印象的。旧来の家族像とは異なる家族の肖像画に。日本初公開作品。
1874年。後に「第1回印象派展」と呼ばれることになるグループ展が開催されました。モネの作品『印象、日の出』が話題となり、「印象派」という言葉が誕生したのです。この時代のパリは近代化が急速に進み、都市生活が発展。大きく様変わりを始めていました。
上の2作品では、そんな新しい時代のエッセンスが見てとれます。ルノワールの《ピアノを弾く少女たち》は、見るからに良家のお嬢さん。ふたりの前にあるのは19世紀に発明され、一般家庭に広く普及したアップライトピアノです。ショパンやチャイコフスキーなどの登場により、ピアノで弾ける楽曲が、家庭でも楽しめるようになった。この情景は当時の最先端、ハイクラスな憧れの生活のひとコマなんですね。それを、ルノワールはふたりの少女に焦点を当てて、穏やかな家庭内情景として描いています。
ドガもまた肖像画の名手として、都市生活のなかで人々が見せるさまざまな姿を描きました。この《家族の肖像(ベレッリ家)》は集団肖像画ですね。インテリアや小物、そして家族の関係性がかいま見えるような謎めいた表情も興味深い。近代の新しい家族像を表現しようとしたのでしょう。
一般的に印象派といえば戸外のイメージですし、そうした作品が人気です。しかしそこにとどまることなく、印象派が当時の芸術の最前線で、「都市の生活」や「室内」をテーマとしていたことに焦点を当てるとは、う〜ん、目のつけどころがいい! 時代背景を理解したうえで展覧会へ行くと、絵画鑑賞がもっと楽しくなりますよ。(談)
<information>オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語
オルセーの印象派コレクションの大規模展はおよそ10年ぶり。国立西洋美術館やフランスのジヴェルニー印象派美術館ほか、国内外の美術館が所蔵する印象派の重要作品も並ぶ。開催は東京のみで巡回はなし。
会期/開催中〜2026年2月15日まで
会場/国立西洋美術館
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- EDIT :
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