身長156cmのインテリアエディターが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回お届けするのは、デンマーク王室御用達の100年以上前から続く家族経営の家具メーカー「カール・ハンセン&サン」から復刻された、ハンス J. ウェグナーのデザインとしては大変珍しいキャスター付き回転椅子『CH621 スウィベルチェア』です。

リビング・ダイニングの空間にもなじむ、高機能だけどメカメカしくないデザインのワークチェアを探している人にオススメ! 木製家具とワークチェアのいいとこどりを実現した、名品の魅力をご紹介します。

ピックアップアイテム:『CH621 スウィベルチェア』

リモートワークが働き方の選択肢の1つに加わってから久しいですが、ワークチェアの選択肢の幅がなかなか広がらないように日頃から感じていました。

特にナチュラルな風合い重視で北欧インテリアを考えた場合、ワークチェアに関しては機能を重視してデザインを妥協するか、名作とまではいかないけれど“悪くない”デザインで手を打つかしか選択肢はありません。そんなお悩みを解決してくれるのが、こちらの「カール・ハンセン&サン」から復刻された『CH621 スウィベルチェア』です。

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【ブランド】カール・ハンセン&サン 【商品名】CH621 スウィベルチェア 【写真仕様の価格】¥506,000 【サイズ】本体/幅610×奥行き555×高さ775〜845座面高450〜 540(mm) 【材質】オーク材 オイル仕上げ、 ステンレススチールフレーム、レザー

■魅力その1:ナチュラルな北欧モダンのインテリアにも好相性

座る部分や肘・背中のあたる部分は、FSC認証のオーク材とファブリック(もしくはレザーも選択可能)で構成され、ステンレスフレームにすっきりと収まった美しい佇まい。エレガントで人間工学に基づいたデザインの『CH 621 スウィベルチェア』は、工業的な魅力も兼ね備え、現代のホームオフィスに自然に溶け込む椅子に仕上がっています。

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ナチュラルなインテリアにもしっくりとなじむ素材感で、座面はファブリックもしくはレザーからセレクト可能。

老舗家具メーカーの職人による美しい素材の仕上げが、こだわって選んだリビングやダイニングの家具と響き合い、ステンレススチールの素材感が加わることによって軽やかさやこなれ感もインテリアに演出できます。

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背と座と肘のパーツをひとつなぎにするステンレスフレームの造形美も見事。

■魅力その2:巨匠ウェグナーのデザインと現代の技術がコラボレーション

生涯に500脚を超える椅子をデザインしたハンス J. ウェグナーですが、そのなかで回転椅子はほんの数脚。この『CH 621 スウィベルチェア』と後に名付けられた椅子は、「カール・ハンセン&サン」の製品開発責任者が、オンラインオークションでオフィス家具を探していた際に偶然発見したものだそうです。

この椅子を復刻するにあたり、当初参考にできたのは1枚の写真だけでした。オリジナルの椅子の所在が不明だったため、ウェグナー家族が運営するウェグナーデザインスタジオに協力を依頼し、1949年のオリジナル図面が見つかったのです。

オリジナルは4本脚で、高さ変更の際に座面をクルクルと回す必要がありましたが、現代の強度基準やニーズに沿いつつ、ウェグナーのデザインの特徴を崩さないミニマルで美しい5本のキャスター脚に進化して復刻されました。

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ガス圧式で座ったまま高さ変更でき、現代の安全基準を満たした5本のミニマルなデザインが美しいキャスター脚。
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復刻に際して新たにデザインされたキャスターは、秀逸なデザインもさることながら驚くほどスムーズに360度自在に動きます。

■魅力その3:自由気ままな座り姿勢を受け止めてくれる安心感

実際に座ってみると、ゆったりと作られた座面の広さの効果により、まっすぐだけではなく斜めにも座ることができ、姿勢を変えやすいのがうれしいポイントです。また高さを最大まで上げるとハイスツールのように“ちょいがけ”もできます。

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立っているでもなく座っているでもない姿勢をとって作業したいときにも便利。

このように、角度も高さも好みに応じた座り姿勢を安定してとれるのは、長時間デスクワークをする人には非常にありがたいですよね。身長差のあるパートナーと共用する場合にもオススメです!

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PCを扱う際に肘を自然な角度で置ける高さに調節することで、楽に作業できます。

■ここにも注目!:渋谷・ヒカリエホールにてウェグナーの回顧展が開催中

国内過去最大規模のウェグナーの回顧展「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」が、渋谷のヒカリエホールにて開催されています。

国内外を問わず著名な、世界屈指の質と量を誇るコレクターで研究者の織田憲嗣さんによるウェグナー・コレクションから、体系的に収集された椅子約160 点とそのほかの家具が展示されています。

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会場構成は、織田憲嗣さんの教え子で世界的な建築家、田根剛さんによるもの。

タイムレスな魅力を持つ名作椅子の数々を、ヒカリエホールの大空間で一度に目にすることができる貴重な機会。「カール・ハンセン&サン」は、協力企業として展示内容に関する資料や部材、実際に座れるコーナーの椅子を提供しています。

【イベント概要】


今回は、「カール・ハンセン&サン」により復刻されたハンス J. ウェグナーの名作椅子、『CH621 スウィベルチェア』をご紹介しました。

上質な家具は振る舞いを変え、毎日の暮らしに潤いをもたらしてくれます。飽きのこない洗練されたデザインと機能性を併せもつウェグナーの椅子がある生活を、まずは回顧展やシールームを訪れて想像してみませんか? デザイナーやデザインの背景について知ることで、実際に迎えたときの満足感もより深まるに違いありません。

※掲載商品の価格は、税込みです。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM