連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、韓国の伝統的な手工芸「閨房(キュバン)工芸」を継承するファブリックアーティストのチェ・ヒジュさんにインタビュー。
出版社に就職したあと、夫の仕事の都合で日本へ。異国での子育てに奮闘するなかで仕立てた学用品が評判を呼び、その技を自分の表現へと昇華するべく「ファブリックアーティストという独自の道を歩んでいた」と語るヒジュさんに、今後の夢など詳しくお話をうかがいました。
【Seoul】伝統的な手芸技術を現代作品へと昇華するファブリックアーティスト
チェ・ヒジュさんは「閨房(キュバン)工芸」と呼ばれる、伝統的な手芸技術を継承するファブリックアーティストだ。「閨房工芸」とは昔の女性による手工芸全般を指すもの。ヒジュさんは苧麻(からむし)や亜麻といった伝統天然繊維を用いて、「自然からの癒しと安らぎ」をテーマに作品を生み出している。
柔らかな布で固い石を表現してみたり、形のない空気の入れ物をつくってみたり。そんな逆説的な試みがもち味で、思考を深めてくれるような静かな佇まいが評判を呼んでいる。徹底してこだわっているのは「白」。布がもつ無数の白の階調を自在に操りながら、まるで韓国の白磁のような、静謐な美しさを具現化している。
「創作のルーツは、布、糸、針が暮らしの一部だった家で育ったことが大きいですね。祖母や両親が布の専門家だったので、その手技と感性が自然と体に染み込んでいきました。転機は中学生のとき。スカート製作で先生にほめられたときの高揚感が忘れられず、さまざまなものを布で製作していました」
出版社に就職したあと、夫の仕事の都合で日本へ。異国での子育てに奮闘するなかで仕立てた学用品が評判を呼び、自然と講師役を頼まれるように。帰国後も伝統技法を学び続け、その技を自分の表現へと昇華するべく情熱を傾けるうち、「ファブリックアーティストという独自の道を歩んでいた」と語る。
制作の醍醐味は、頭のなかで描いた自然のイメージを、命を吹き込むように布の上に表現する瞬間。作品には「人生に余白をもつことがいかに大切か」という思いを込めていて、そのメッセージが人々に届いたと感じたとき、極上の喜びが得られるのだそう。
今後の夢は、世界に向けて韓国の手仕事を伝えるべく、創作の幅を広げること。そのために、ある地域に滞在して、文化や環境からインスピレーションを得て創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」への参加も見据えている。「心からつくりたいものだけを、丁寧に制作したい」。笑顔の向こうに、手仕事と芸術を愛する強い意志が見えた。
◇チェ・ヒジュさんに質問
Q 朝起きていちばんにやることは?
心身を整える朝の散策。家の周りを歩いて新鮮な空気を取り込みます。
Q 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「作品を見て癒やされた」「独自の色使いが好き」。作品のメッセージや個性が伝わることが大きな喜び。
Q 急にお休みがとれたらどう過ごす?
列車での日帰り旅。車窓の景色をボーッと眺めて、美味しいものを食べて帰ってくるのが理想。
Q 10年後の自分は何をやっている?
今より仕事量を減らして、本当につくりたい作品だけを制作している。制作と並行して、旅にもっと時間を使いながら視野を広げたい。
Q 自分を動物に例えると?
猫。外では社交的ですが、実際はひとり静かに集中する時間が好きで、自分の世界を深く楽しむ気質かなと思っているから。
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- PHOTO :
- Xiang Zhi
- EDIT&WRITING :
- 本庄真穂、喜多容子・木村 晶(Precious)
- 取材 :
- Rumiko Ose

















