連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、スペイン・マドリードで “伝説のレストラン” と呼ばれる老舗の「HORCHER(ホルチャー)」の4代目オーナーになったエリザベス・ホルチャーさんにインタビュー!

ワインを愛した曽祖父が1904年にベルリンで創業したのち、跡を継いだ祖父が戦禍、戦後をくぐり抜け、1943年、マドリードに移転。のちに跡を継いだエリザベスさんが、経営するうえで大切にしている考えとは?詳しくお話をうかがいました。

エリザベス・ホルチャーさん
「HORCHER」オーナー
(Elisabeth Horcher)1981年にマドリードで生まれる。高校卒業のち、スイスへ留学。飲食業と経営学を学び、在学中に「ル・ブリストル・パリ」ほかで研修を受ける。’07年、伝説のレストランと呼ばれる「ホルチャー」の4代目オーナーに。スペイン王立ガストロノミー学会から最優秀ホール支配人賞を授与されたスタッフも在勤している。3児の母、マドリード在住。

【Madrid】老舗だからこそ「謙虚であれ」。レストランオーナーの本質の見極め方

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「HORCHER」オーナーのエリザベス・ホルチャーさん

マドリード中心部、観光客で賑わうアルカラ門近くに静かに佇むのが、創業122年の老舗レストラン「ホルチャー」。石造りの建物は重厚な趣で、ふと現れるエントランスは派手さがなく落ち着いた雰囲気。店内へ足を踏み入れると、窓の外にはレティロ公園の景色が広がり、自然光が美しく回っている。長年にわたって上質なものを提供してきた場所特有の、優雅なムードが満ち満ちているのだ。

「ワインを愛した曽祖父がベルリンで創業したのが第一次世界大戦前の1904年のこと。跡を継いだ祖父が戦禍、戦後をくぐり抜け、1943年、マドリードに移転しました。私が初めてこの場所で食事をしたのは12歳になってから。祖父からのプレゼントでしたが、ひどく緊張したのを覚えています。私は創設者の親族ではあるけれど、自分よりこの店を熟知している人がたくさんいる。彼らをリスペクトすること、店の基本的スタンスである『謙虚であれ』という姿勢を、実体験した記憶があります。その後、跡を継ぎたいという思いが自然に湧いてきて、スイスで飲食業と経営学を学び、少しずつ家業を手伝うようになりました」

時と共に高級店が増え、有名シェフが登場し、ミシュランの存在もあってグルメブームに沸いた昨今。さらにSNS全盛を迎えている今、どんな立場を保っているのだろう。

「スペインの経済危機やコロナ禍では大変な思いをしましたが、改善こそすれ、コンセプトを変えることはありませんでした。SNSは利用しますが、店のPRのために使うのは諸刃の剣。“ソブレメサ(食後の会話)” を楽しむ文化が残るスペインだからこそ、ゆっくり時を刻むことを大切にしたいのです」

ゲストからの手紙を愛おしそうに眺め、「私たちには愛が溢れすぎているのかもね」とスタッフに笑いかけるエリザベスさん。老舗はなぜ生き残るのか。それは情報に翻弄されることなく、本質を見つめているから。この美しい笑顔が教えてくれた気がした。

◇エリザベス・ホルチャーさんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
何も考えずにスポーツウエアを着て、ピラティスをする。
Q 人から言われてうれしいほめ言葉は?
自分がほめられるのは少し苦手。子供たちやスタッフがほめられるとうれしい気持ちに。
Q 急にお休みがとれたらどう過ごす?
家族や友人とごはんの約束をする。もしくは家にいるのが好きなので、何もしないで過ごす。
Q 仕事以外で新しく始めたいことは?
義母が歴史好きで子供たちにレクチャーしてくれるので、私も歴史を学びたい。
Q 10年後の自分は何をやっている?
「ホルチャー」を続けながら、家族と一緒に過ごしている。結局シンプルなことがいちばん幸せだと思うのです。
Q 自分を動物に例えると?
美しさと強さを備えるライオン。象の知性にも惹かれます。

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PHOTO :
Javier Peñas
取材 :
Yuki Kobayashi