連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、神保町にあるミニシアター「シネマリス」の支配人を務める稲田良子さんにインタビュー!

長年の映画好きだったという稲田さんは、長年、幅広い業務に携わってきた法律事務所の秘書を退職し、一念発起してクラウドファンディングを募ってミニシアターをオープン。多様性を感じられる作品の上映を通じ、「女性である私が運営するからこそ、意義ある娯楽をおおらかな気持ちで提供できたら」と語る稲田さんに、オープンまでの経緯や今後の展望について詳しくお話をうかがいました。

稲田 良子さん
「シネマリス」支配人
(いなだ りょうこ)新潟県生まれ。法律事務所で秘書として働いたのち、「シネマリス」を立ち上げる。今後は、2週間交代で月に4本上映する予定。一日2回ずつ上映される準新作・旧作が見放題になるサブスクリプションシステムも導入。こけら落としはマレーシアの女性監督による『私は何度も私になる』を上映。香港の人気俳優、レスリー・チャンの特集上映も行った。

【Tokyo】異業種からミニシアターの支配人へ。「小さくても善いもの」を届ける人に

キャリア_1,インタビュー_1
「シネマリス」支配人の稲田良子さん

「法律事務所の秘書として、長年幅広い業務に携わってきました。最初は『自分がやらなきゃ』、次は『下の世代を育てなきゃ』。そんな思いを抱えてひた走ってきた気がします。気付くと後輩たちは一人前になっていて、小さな達成感を覚えたことがありました。一方、自分の人生を顧みると、コロナ禍以降、あっという間に一年が過ぎてしまう。これでいいのかと思いを巡らせるようになったんです」

若い頃から映画が好きで、特に20代は熱心に映画館に通っていた稲田さん。昨今の事情を調べると、閉業するシアターもあるが、個人で立ち上げる例もあると知り、一念発起。’23年に場所探しを始め、’24年に退職を決意し、’25年夏にクラウドファンディングをスタート。12月には日本のカルチェ・ラタンと称される神保町に、各60席強を備えた2シアタールームの映画館をオープンさせた。

「私の夫も映画が好きなのですが、受験生で孤独を抱えていたときに、飯田橋にあった映画館『ギンレイホール』とその年間パスポートの存在にすごく救われたようなんです。だから映画好きはもちろん、人生に迷える人やひと息つきたい人の逃げ場にできたら。上映ラインナップは “世界に向けた窓” のような、多様性を感じられる作品を意識しています。女性って “マイノリティの最大手” みたいなものですよね。女性である私が運営するからこそ、その視点と立ち位置は大切にしたい。大きなものに飲まれることなく、個人的趣味に走ることなく、意義ある娯楽をおおらかな気持ちで提供できたらと思っているんです」

クラウドファンディングのページに書かれていたのは、「誰でも気軽に立ち寄れる〈居場所〉から、〈小さくても善いもの〉の提供を目指します」というメッセージだった。

「『小さくても善いもの』。それはかつて神保町にあった『文化学院』が掲げた精神です。小規模でも低予算でも人の心に響くもの。それらを届ける人になりたいと考えています」

◇稲田良子さんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
まずうがいをして、水か白湯を飲む。
Q 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「おもしろいね!」。人に笑ってほしいという気持ちがあるんです。
Q 急にお休みがとれたらどう過ごす?
サクッと近場の温泉に行きたい。熱海あたりのお湯に浸かって、MOA美術館に行くなど。
Q 仕事以外で新しく始めたいことは?
新しい仕事を始めてしまったので、しばらくは支配人の仕事に集中します。
Q 10年後の自分は何をやっている?
後進を育てて、もう少し気楽なマダムになっていたい(笑)。
Q 自分を動物に例えると?
映画館名にも入っているリス。ちなみに「マリス」はフランス語で「茶目っ気」という意味合いがあるらしく、この映画館名に決めました。

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
本庄真穂