【目次】
【第5回のあらすじ】
信長は美濃攻めに専念するため、三河国の松平元康(松下洸平さん/のちの徳川家康)と、世に言う「清須同盟」を組みます。これは、東方の憂いを解消したい信長(小栗旬さん)と、自立したばかりで早く三河(愛知県東部)を納めたい元康との利害の一致により実現したものでした。
国境まで元康を送る道中、藤吉郎(池松壮亮さん)は出世の秘訣を元康に問います。すると、「たやすいことよ。信長殿を信じることじゃ。そして、誰にも出来ぬことをやってのけるのじゃ。恐れず、己を信じて突き進むのじゃ。(胸を叩きながら)大事なのはここじゃ。熱意が人を動かし勝敗を決する」と元康。至極真っ当な――と思いきや、藤吉郎たちと別れたあとの元康は「すべて逆のことを言ってやったわ」と高笑い。すんっとしていて捉えどころがないという印象だった“松下元康”でしたが、底意地の悪さが早くも露呈したシーンでした。そして、「わしの思っていた通りじゃ」「これで大名も夢ではないぞ」と素直に感動する兄の横で、いぶかし気にしていた小一郎(中野大賀さん)の表情に気付きましたか?
劣勢極まりない桶狭間の戦いでの大勝利ののち、信長に足軽組頭として取り立てられた藤吉郎、そして褒美に銭50貫文を拝領した小一郎は、故郷の中村から清須へ家族を呼び寄せ、以前とは比べものにならない程、よい暮らしを送るようになっていました。
母のなか(坂井真紀さん)、姉のとも(宮澤エマさん)と夫の弥助(上川周作さん)、妹のあさひ(倉沢杏菜さん)と夫の甚助(前原瑞樹さん)、そして藤吉郎と小一郎。焼き魚と香の物、汁と白米がのったお膳を前に、藤吉郎の寧々(浜辺美波さん)への本気の想いに沸く家族。今日食べるものにも事欠いていた彼らにも、ようやく平和が訪れたとホッとしたシーンでしたね。
さて、家臣たちの士気を高めようと催された御前大試合で、藤吉郎の宿敵である前田利家(大東駿介さん)が登場。「槍の又左」と呼ばれるほどの武闘派に対し、小一郎は小賢しい手で兄に勝利をと目論みましたが、利家には力負けし、殿にはその手を見破られ…なんとカッコ悪い兄弟なのでしょう。しかし「戦って勝つは上策、戦わずして勝つのは最上の策」と、ずる賢さにかけても信長のほうがずっとずっと上手だったのでした。
ここで信長は、藤吉郎にしくじり挽回の機会をやると、美濃国の鵜沼城主・大沢次郎左衛門(松尾諭さん)を取り込むよう命じます。この次郎左衛門という男は、「美濃のマムシ」と恐れられた戦国大名の斎藤道三(麿赤兒さん)に見出され、一介の浪人から上り詰めた猛将なのですが、妻の篠(映美くららさん)への想いはなかなか熱い! この大仕事をやり遂げて侍大将になり、想い人と祝言を挙げるのだと駄々をこねる藤吉郎に、ころっとほだされてしまうのですから。
ちなみに、この回の回想シーンで斎藤道三は信長のことを「自分に似ていていちいち腹が立つ」と評していましたが、やがて道三と信長は義理の親子になります。敵対していた両家でしたが、道三は15歳(※)の娘・濃姫を信長に嫁がせ後見人に。信長の正妻・濃姫とその父・道三。この政略結婚や濃姫については今回の大河ドラマではあまり描かれないのですが、2020年の『麒麟がくる』で川口春奈さんが演じた濃姫(帰蝶)は印象的でした。
信長に仕えるため小牧山城に参上した大沢次郎左衛門でしたが、従者の荷物から切っ先に毒が塗られた苦無(くない。細長い両刃の暗器)が。「残念の極みじゃ、始末せよ」と冷たく発した信長。さて、次回はいかに!?
※14歳という説もあり
【「戦国三英傑」への道(一)】
同盟を組んだ信長と元康(家康)、そして元康の見送りを命じられた藤吉郎(秀吉)。ほんの40秒ほどでしたが、後に「戦国の三英傑」と呼ばれる彼らが本作で一堂に会した初めてのシーンでした。前々回で彼らの人物像をさくっとおさらいしましたが、今後は世にいわれる名武将へと成長していく彼らを、ときおり追ってみたいと思います。
■織田信長
『豊臣兄弟!』のドスが効いた信長はとてもセクシーだと感想を述べていましたが、第5回の信長は、ちょっぴりコミカルにも見えませんでしたか?
信長の短気な気性の激しさは「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」という句で表わされますが、桶狭間の戦い成功を誇る家臣に「桶狭間など昔話じゃ~」と、飛び蹴りを食らわせる信長は、まさに! …正確に言うと飛び蹴りではありませんが、そう感じてしまうほど、“小栗信長”の条件反射的に部下を足蹴にするという行動は、ドリフターズのコントのように見えたのでした。
■木下藤吉郎秀吉(豊臣秀吉)
この第5回での藤吉郎は、主君・信長への忠誠と、出世して上り詰めるという意志をくり返し固めていました。
元康からの(嘘の)助言に「やっぱり!」と目を輝かせ、褒美に侍大将にしてやるという命に奮起して難儀な調略に挑む。最後はほぼ泣き落としでしたが、信念を曲げるくらいなら命を差し出すというその心意気に、次郎左衛門も賭けてみた、ということでしょうか。
信長に「猿!」と呼ばれることに喜びを感じる藤吉郎。母が漬けた香の物を届けるといったマメな一面も見せました。
■松平元康(徳川家康)
藤吉郎への嘘の助言、今回はこれに尽きるでしょう。
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」と評されるほど忍耐強く、そしてずる賢く人を騙すことに長けていた「たぬきおやじ」こと家康。その片鱗は、今回十分に垣間見ることができました。
第5回のタイトルは「嘘から出た実(まこと)」。「大沢が信長に内通している」という嘘の噂を本当のことにしてしまってはどうかと、小一郎が「嘘から出た実」のことわざを引き合いに出して大沢を説得しました。しかしタイトルの「嘘から出た実」は、元康の嘘の助言が藤吉郎の信念をより固めた、ということにも掛かっていたのです。
【次回 『豊臣兄弟!』第6回「兄弟の絆」あらすじ】
大沢(松尾諭さん)に、信長(小栗旬さん)の暗殺を企てたという疑いがかかった。小一郎(仲野太賀さん)の機転で、その場での手打ちは免れるが、このままでは鵜沼城に残った藤吉郎(池松壮亮さん)の命が危ない。翌日までに大沢の無実を証明することになった小一郎は、調査に奔走しつつ、市(宮崎あおいさん)に信長への口添えを頼む。だが市はそれを断り、信長のある過去を語って聞かせる。翌日、手詰まりの小一郎は信長の前で驚きの行動に出る。
※2月8日(日)は衆議院選挙開票速報番組のため『豊臣兄弟!』はお休み。次回(第6回)は2月15日(日)放送の予定です。
※『豊臣兄弟!』第5回「嘘から出た実」のNHK ONE配信期間は2026年2日8日(日)午後8:44までです。
※宮崎あおいさんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。
- TEXT :
- Precious編集部
- WRITING :
- 小竹智子
- 参考資料:『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 前編』(NHK出版)/『大河ドラマ「豊臣兄弟!」完全読本』(産経新聞出版)/『大河ドラマ 豊臣兄弟! 超おもしろファンブック』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館) :

















